インタビュー

ドライアイや光感受性発作の危険性-安全にデジタル機器を使うためのアドバイス

ドライアイや光感受性発作の危険性-安全にデジタル機器を使うためのアドバイス
原 直人 先生

国際医療福祉大学 保健医療学部 視機能療法学科 教授

原 直人 先生

この記事の最終更新は2016年07月26日です。

スマートフォンやパソコンの長時間使用、3D立体映像の鑑賞により、眼精疲労近視化、片頭痛など、様々な身体症状を訴える方が増えています。チカチカとフラッシュを繰り返す画面を見ることによって起こる「光感受性発作」は、1997年に「ポケモンショック」として大きなニュースになりました。本記事では、デジタルデバイスによる光感受性発作やドライアイのリスクと、エンターテインメント性の高い3D映像や高輝度画面を比較的安全に楽しむために私たち一般生活者が心掛けるべきことについて、国際医療福祉大学病院眼科教授の原直人先生にお話しいただきました。

光感受性発作(PSS)とは、潜在的に素因を持っている方が光刺激を受けることにより、けいれんや意識障害などのてんかん発作を起こすものを指し、日本では1997年に起きた「ポケモンショック」により認知度が大きく広がりました。ポケモンショックとは、アニメ番組内で用いられた赤と青のフラッシュ画面の繰り返しにより約700名の方が搬送された出来事で、現在ではアニメ・ゲーム業界で安全対策がとられるようになったことから報告数も年に1回程度にまで減っています。しかしながら、現在ではテレビ画面もゲーム機器の画面も高解像度でコントラストの強いものに変わっており、新たな視覚刺激を連日曝露する機会が増加していることから、今後さらに光感受性発作に近い症状を起こす方が出てくる可能性は拭いきれません。

ポケモンショックにより搬送された患者さんのうち約8割は、過去に同様の発作を起こした経験がなく、ご自身に素因があることを知らない方々でした。ですから、視覚刺激の強い映像を見たときに疲労や目がチカチカとするような症状を感じた場合は、素因を保有している可能性を考慮して、すぐに画面から離れること、休息をとることが大切です。

デジタルデバイスの見すぎにご自身で気づくためのサインとなる自覚症状には、眼の疲労のほかに「ドライアイ」があります。正常時、私たち人間は1分間に約20回ほどのまばたきをしていて、その際に涙も分泌されます。しかし、何かに集中していると、まばたきの回数は減少しますので、涙液分泌も減ります。VDT作業中には、1分間のまばたきの回数は正常時の3分の1である約6回にまで減少するため、涙の分泌量も比例して減少してしまいます。また、仕事や作業中は交換し径が活発化していますので、涙は出にくくなります。目に疲れを感じた場合はドライアイの可能性も考えてください。

ここまでに述べてきたように、スマートフォンや立体映像の普及により、私たちの目に対する視覚刺激はかつてと比べ物にならないほど強くなりました。デジタルデバイスの利便性を追うだけでなく、視機能や全身への影響を社会全体で考えてかなければいけない時代に入っていると考えます。

最後に、デジタルデバイスによる生体リスクを減らした状態で映像を楽しむために、皆さんに心掛けていただきたい5つのことを「眼科医からのアドバイス」としてお伝えします。

●適切な視聴距離を保つこと:画面の縦幅の3倍の距離を置きましょう。

(例)縦1mの画面で見るときは3m以上離れて視聴する。

●長時間の視聴(作業)を控える。:VDT作業に従事している方であれば、50分作業をしたら10分はコピーをとる・トイレ休憩をとるなど、1時間のうち10分ほどはパソコンから離れる時間を作ることをおすすめします。

●就寝前には視聴を控える。:特にスマートフォンやゲーム機器は、パソコン画面に比べて強いブルーライトを発していることが明らかになっています。

●デジタルデバイスでの作業中(視聴中)、目がチカチカとしたり、疲労を感じたときには休憩をとる:光感受性発作を起こしたことのある方は特に注意が必要です。

●3D映像は6歳(小学校入学)までは視聴させない。:子どもの両眼視機能の発達に対して影響があるからです。

 

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