インタビュー

ドライアイの治療について

ドライアイの治療について
坪田 一男 先生

慶應義塾大学 医学部眼科学教室 教授・眼科診療部長

坪田 一男 先生

この記事の最終更新は2016年01月08日です。

近年の医学の進歩により、ドライアイ治療も進歩してきました。ドライアイの治療にはどのようなものがあるのでしょうか。慶應義塾大学医学部眼科教授の坪田一男先生にお話しをお聞きしました。

ドライアイの治療には、大きく分けてふた通りのパターンがあります。

それは、以下の二種類に分けられます。

1:点眼剤や涙点プラグを用いた対症療法

2:エイジングに特化した根本的なアプローチ

対症療法の治療の基本のベースは以下の5つです。

・人工涙液で濡らす

・涙液の成分を補充する

・涙液の安定性を高める

・炎症をとる薬を使う

・涙液を増やす薬を使う

かつては「水道水で洗えばドライアイは改善する」と言われた時代もありました。しかし現在では、ただ濡らせばいいという問題ではないこともわかっています。基本的には保湿を目的として、ヒアルロン酸を含有した保湿効果の高い点眼薬を用います。

近年、日本で画期的なドライアイ治療薬が開発され、治療に使えるようになりました。ひとつはジクアホソルナトリウムという薬で、涙の成分であるムチンの分泌を促し、また涙そのものの量を増やしてドライアイを改善します。

もうひとつ、レバミピドという薬も注目されてきています。レバミピドは長年胃薬に用いられてきた薬の成分ですが、目の表面の粘膜の傷の修復にも有効なことがわかり、点眼薬として用いられているのです。

なお市販の薬を使用する場合は、できるだけ防腐剤無添加のものを選びましょう。防腐剤は細菌の繁殖を防ぐのですが、目の細胞にも障害となることがわかっています。

涙点プラグとは、目頭にある涙を排出するための穴(涙点)を小さなシリコーン製のプラグ(栓)で塞ぐものです。これにより涙の排出を止め、少ない涙を目の表面に溜めます。この治療は保険が適用されます。

涙点プラグを挿れる際はまず患者さんの涙点の大きさを計測し、それからその人のサイズに合ったプラグを挿入します。痛みもなく、外来で1~2分程度で施術可能です。効果も高く、施術後、すぐに涙がたまるのを実感できます。しかし、排出を止めることで逆に涙があふれてしまうことがあります。

また、不要なものを排出することができなくなるため、アレルゲンや不要な物質がたまりやすくなります。そのため1日に数回は防腐剤無添加の目薬で目を洗い流すケアが必要です。

瞼のふちやまつ毛の根元は意外に汚れやすく、この部分が不衛生であったりその結果ダニが繁殖したりすることでドライアイを引き起こすこともわかってきました。目もとはしみるため、目もとまで洗うのを嫌がる方も多く、洗顔しづらい場所です。そのような方のため、目に刺激の少ない目もと専用の「アイシャンプー」も開発されています。日々丁寧にケアをして、ドライアイを予防しましょう。

日々の予防的ケアや、環境の改善、そして前述したような進歩した点眼薬等の治療により、ドライアイの症状を改善できるケースが増えてきました。記事3で述べた悪循環を断ち切ってドライアイが治る場合もありますが、なかなか完治が難しいドライアイも多いのが事実です。

ドライアイの大きなリスクファクターに「エイジング(加齢)」があります。実はドライアイは高齢者に多く、子どものドライアイは少ないのです。

ドライアイは目の病気ですが、エイジングやストレスから生じるいわば全身疾患という一面も持っています。

点眼等の治療をすることはもちろん大切ですが、エイジング(加齢)によってドライアイが進行しているのであれば、おおもとであるエイジングをコントロールしてみることも大切です。

私はドライアイの治療に「アンチエイジング」を提唱しています。アンチエイジングは、体の一部分に起きている病気だけを診るのではなく、体全体の治癒力や健康度を高めようとするアプローチ法です。

アンチエイジングのために私が提唱している8のヒントをご紹介します。是非日常に取り入れてみてください。

・運動をする

・腹八分目を心がける

・野菜、果物、魚中心の食生活をする

・サプリメントで抗酸化力を高める

・デトックスのために水を飲む

・よい睡眠をしっかりと取り、規則正しい生活を送る

・ときどき深呼吸を行い、リラックスを心がける

・ごきげんに生きる

ドライアイは、前述の通り全身の疾患でもあります。アンチエイジングを意識して日常的に対策を心がけることで、ドライアイを改善することはもちろん、全身の健康と生活の質を向上させることができるでしょう。

 

*本記事は坪田先生の著書「10秒間まばたきせずにいられますか?」を参考にしています。こちらもご参照してみてください。

受診について相談する
  • 慶應義塾大学 医学部眼科学教室 教授・眼科診療部長

    坪田 一男 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

関連記事

  • もっと見る

    関連の医療相談が27件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「ドライアイ」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。