近年の医学の進歩により、ドライアイ治療も進歩してきました。ドライアイの治療にはどのようなものがあるのでしょうか。慶應義塾大学医学部眼科教授の坪田一男先生にお話しをお聞きしました。
ドライアイの治療には、大きく分けてふた通りのパターンがあります。
それは、以下の二種類に分けられます。
1:点眼剤や涙点プラグを用いた対症療法
2:エイジングに特化した根本的なアプローチ
対症療法の治療の基本のベースは以下の5つです。
・人工涙液で濡らす
・涙液の成分を補充する
・涙液の安定性を高める
・炎症をとる薬を使う
・涙液を増やす薬を使う
かつては「水道水で洗えばドライアイは改善する」と言われた時代もありました。しかし現在では、ただ濡らせばいいという問題ではないこともわかっています。基本的には保湿を目的として、ヒアルロン酸を含有した保湿効果の高い点眼薬を用います。
近年、日本で画期的なドライアイ治療薬が開発され、治療に使えるようになりました。ひとつはジクアホソルナトリウムという薬で、涙の成分であるムチンの分泌を促し、また涙そのものの量を増やしてドライアイを改善します。
もうひとつ、レバミピドという薬も注目されてきています。レバミピドは長年胃薬に用いられてきた薬の成分ですが、目の表面の粘膜の傷の修復にも有効なことがわかり、点眼薬として用いられているのです。
なお市販の薬を使用する場合は、できるだけ防腐剤無添加のものを選びましょう。防腐剤は細菌の繁殖を防ぐのですが、目の細胞にも障害となることがわかっています。
涙点プラグとは、目頭にある涙を排出するための穴(涙点)を小さなシリコーン製のプラグ(栓)で塞ぐものです。これにより涙の排出を止め、少ない涙を目の表面に溜めます。この治療は保険が適用されます。
涙点プラグを挿れる際はまず患者さんの涙点の大きさを計測し、それからその人のサイズに合ったプラグを挿入します。痛みもなく、外来で1~2分程度で施術可能です。効果も高く、施術後、すぐに涙がたまるのを実感できます。しかし、排出を止めることで逆に涙があふれてしまうことがあります。
また、不要なものを排出することができなくなるため、アレルゲンや不要な物質がたまりやすくなります。そのため1日に数回は防腐剤無添加の目薬で目を洗い流すケアが必要です。
瞼のふちやまつ毛の根元は意外に汚れやすく、この部分が不衛生であったりその結果ダニが繁殖したりすることでドライアイを引き起こすこともわかってきました。目もとはしみるため、目もとまで洗うのを嫌がる方も多く、洗顔しづらい場所です。そのような方のため、目に刺激の少ない目もと専用の「アイシャンプー」も開発されています。日々丁寧にケアをして、ドライアイを予防しましょう。
日々の予防的ケアや、環境の改善、そして前述したような進歩した点眼薬等の治療により、ドライアイの症状を改善できるケースが増えてきました。記事3で述べた悪循環を断ち切ってドライアイが治る場合もありますが、なかなか完治が難しいドライアイも多いのが事実です。
ドライアイの大きなリスクファクターに「エイジング(加齢)」があります。実はドライアイは高齢者に多く、子どものドライアイは少ないのです。
ドライアイは目の病気ですが、エイジングやストレスから生じるいわば全身疾患という一面も持っています。
点眼等の治療をすることはもちろん大切ですが、エイジング(加齢)によってドライアイが進行しているのであれば、おおもとであるエイジングをコントロールしてみることも大切です。
私はドライアイの治療に「アンチエイジング」を提唱しています。アンチエイジングは、体の一部分に起きている病気だけを診るのではなく、体全体の治癒力や健康度を高めようとするアプローチ法です。
アンチエイジングのために私が提唱している8のヒントをご紹介します。是非日常に取り入れてみてください。
・運動をする
・腹八分目を心がける
・野菜、果物、魚中心の食生活をする
・サプリメントで抗酸化力を高める
・デトックスのために水を飲む
・よい睡眠をしっかりと取り、規則正しい生活を送る
・ときどき深呼吸を行い、リラックスを心がける
・ごきげんに生きる
ドライアイは、前述の通り全身の疾患でもあります。アンチエイジングを意識して日常的に対策を心がけることで、ドライアイを改善することはもちろん、全身の健康と生活の質を向上させることができるでしょう。
*本記事は坪田先生の著書「10秒間まばたきせずにいられますか?」を参考にしています。こちらもご参照してみてください。
慶應義塾大学 医学部眼科学教室 教授・眼科診療部長
坪田 一男 先生の所属医療機関
関連の医療相談が27件あります
目の充血の継続
目の充血が、治りません。眼科を受診し、ドライアイとの診断で、目薬、目のシャンプーも使用しています。寝る前に目を温めることもしています。起床時、仕事でのパソコン使用後は特に充血が酷く、目がゴロゴロする感じもします。今まで2件病院には通いましたが、どちらもドライアイとの診断でした。充血を治したいのですが、また別の病院に行った方がいいのでしょうか?
目が痛い。
2週間ほど前からよく運転するようになったのですが、右目の表面がチクチクしたり明るい所に行くとズキっと痛みが走ったり、目全体がぎゅーっと締め付けられ重くだるく感じたりするようになりました。たまに両目なります。肩をほぐしたりお風呂に入ったりすると多少良くなります。普段はコンタクトレンズを使っているのですが、ここ3週間ほどはメガネでした。 辛かったので眼科に行ったところ角膜に傷はなくドライアイではないかと言われ、角膜を保護する目薬とドライアイ専用の目薬をもらいました。1日に何度も差しているのですが、なかなか良くなりません。関係あるのか分かりませんが、小鼻のすぐ右側や頬骨のあたりも重く感じるようになってきました。副鼻腔炎はもっていないです。 ドライアイにこういう症状はありますか?似た症状の他の病気があるのでしょうか。 もう一度眼科で見てもらった方が良いでしょうか?
1年前から瞼がピクピクしてして開けずらいです。
1年前から瞼がピクピク勝手に動きはじめ 最初に行った眼科では疲れからくるものといわれ 薬を付けたりしましたが一時的にしかよくなりませんでした。 違う眼科に見てもらうとドライアイといわれました。 ドライアイの治療をして 少し治まってきていたので効いたのかと思ったら 2週間後にピクピクがまたなり目があけにくくなりました。 他の眼科に行っても回復は一時的でした。 次に脳神経外科に行きましたが 脳には異常がないと ストレスからくるものと言われてました それ以来目を休めたりしたりしてますが 何度かこの症状を繰り返してます ストレスが原因ですと治るのも時間かかりますか?
瞳孔について
8月のはじめにベーチェット病の検査として眼底検査を行いました。その日から右目にだけ異常に違和感があります。 瞳孔が閉じるのにも1週間かかりました。 1ヶ月経っても違和感が収まらなかった為、近くの眼科を受診したのですが、ドライアイと何かのアレルギー反応による援助を起こしていると言われました。 他にいろいろ診てもらいましたが異常はないとのこと。 しかし、やはり右目だけ異物感だったり目の奥の鈍痛だったりが治りません。 また、眼底検査を行ってから右目の瞳孔が左目よりも開いているのが気になります。 いつ見ても常に左目よりも開いています。 視力も右目だけ落ちすぎてて怖いです。 これもドライアイの症状ですか? 本当に異常はないんでしょうか…?
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