概要
ハンセン病とは、らい菌と呼ばれる細菌に感染することによって皮疹や末梢神経障害を引き起こす病気のことです。現在は開発途上国を中心に発症者はいるものの、日本では年間数人程度しか新たな発症者はいません。結核などと同じく“過去の病気”と考えられがちですが、日本ではかつてハンセン病患者に対する強制隔離など不当な偏見・差別や人権侵害が横行しており、いまだに社会的な問題を抱える患者や家族も多いと考えられています。
ハンセン病の特徴は、症状の現れ方に大きな個人差があることです。多くはさまざまなタイプの皮疹が現れ、皮疹部やその周囲の感覚が麻痺していきます。また、進行すると末梢神経に強いダメージが生じて運動麻痺などを引き起こすこともあり、治療をしても改善しないことが知られています。
原因
ハンセン病は、“らい菌”に感染することによって引き起こされる病気です。
らい菌は飛沫感染(らい菌が含まれる感染者の唾液のしぶきを吸い込むことによって体内に取り込んでしまう感染経路)によってヒトからヒトへ感染すると考えられています。ですが、らい菌は非常に感染・発病力が弱い細菌であるため、多くは免疫力が低い乳幼児期に家族内の感染者などと濃厚な接触を繰り返すことで感染します。一方、通常の免疫力を持っていれば、学童期以降に感染するケースは少ないとされています。
また、らい菌に感染したとしても症状が現れないことがほとんどです。しかし、免疫力の低下や栄養状態の悪化などが重なるとらい菌が体内で活動するようになってハンセン病を発症すると考えられています。
症状
ハンセン病を発症すると、第一に見られる症状は皮疹です。皮疹は痛みやかゆみなどを伴わず、むしろ皮疹やその周囲の知覚が麻痺するため皮疹に触れても何らかの感覚を覚えることはありません。また、ハンセン病で見られる皮疹は白や赤の斑紋状の皮疹、しこりなどさまざまであり、人によって現れ方が大きく異なるのも特徴の1つです。
そして治療をしないまま放置すると、末梢神経へのダメージがさらに大きくなって感覚・運動麻痺を引き起こしたり、皮疹が広がって皮膚や四肢に変形が残ったりすることも少なくありません。
このようにハンセン病は整容的に目立ちやすい症状が現れますが、感染したらい菌が内臓にダメージを与えることはなく、ハンセン病が原因で命を落とすことはまずないと考えられています。
検査・診断
皮膚の症状などからハンセン病が疑われるときは、診断をするために次のような検査が行われます。
病理検査
皮疹の組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる検査です。ハンセン病では特徴的な組織の変化が見られるため、らい菌の存在を確認し染色するのに有用な検査です。
らい菌の検出検査
病理組織を染色する検査、皮膚組織かららい菌特異的なDNAを検出するPCR検査、皮膚のある部位にメスを入れて、得られた組織液をスライドグラスに塗って顕微鏡で調べる皮膚スメア検査の3つの方法があり、全てを行うことがすすめられています。
神経学的検査
末梢神経のダメージの有無を調べるため、神経伝達速度検査や知覚(触覚・痛覚・温度覚)検査などの神経学的検査を行うことがあります。また、この病気では末梢神経が太く固くなるため、触診なども重要な検査となります。
治療
ハンセン病と診断された場合は、らい菌を殺菌し、体内から排除するため、リファンピシン、サルファ剤(DDS)、クロファジミンといった複数の抗菌薬による薬物療法が行われます。服用を続ける期間は症状の現れ方によって異なり、最短でも半年、長い場合には数年にわたって飲み続けることが必要です。
一方、ハンセン病によって引き起こされる末梢神経のダメージは放置すると元の状態に戻らなくなるため、炎症を鎮めるためのステロイド薬の服用が必要になるケースも少なくありません。
予防
ハンセン病の予防はらい菌に感染しないことに尽きます。しかし、上で述べたとおり、通常の免疫力があれば乳幼児以外はらい菌に感染・発病することはまずありません。また、今現在日本国内ではハンセン症患者が激減しているため、日常の中でハンセン病の予防対策を講じる必要がある場面はほとんどないと考えてよいでしょう。
一方で、開発途上国では今でもハンセン病が流行している地域もありますので、該当する地域に渡航する際は一般的な感染症対策をするようにしましょう。
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