DOCTOR’S
STORIES
根治性と見た目の美しさの両立を目指す三好 哲太郎先生のストーリー
子どもの頃から父の医師としての姿を見てきた私にとって医療は身近な存在でした。高校生になり将来を考える時期になったとき、やはり父の影響や人の役に立ちたいとの強い思いから医師になることを決めました。
医学生としてさまざまな病気について学びを重ねる中でがん治療に興味を持ち、もともと手を動かすことが得意だったこともあり、手術とがん治療の両方ができる外科を選択しました。外科医となり消化器がんを中心にさまざまな手術を行う中で、5年目に千葉県がんセンターの乳腺外科で半年間のローテーションを経験しました。
それまで診察していた消化器科のがんの患者さんは比較的高齢の方が多かったのですが、乳腺外科では若い患者さんがとても多いことに気が付きました。若いがん患者さんの中には、小さいお子さんを抱えて治療で大変な苦労をされている方がたくさんいらっしゃいました。中には残念ながらがんの再発により急激に病気が進行し、小さいお子さんを残し若くして亡くなる方もいらっしゃいました。
そのような患者さんたちのために何か自分にできることはないだろうか、どうにかして無念な思いをする患者さんを減らせないだろうか、という気持ちから乳腺外科を選択しました。また、乳腺外科を専門とする医師の数がとても少なく患者さんの人数に対して不足している現状を目の当たりにし、自分が役に立てればという気持ちもありました。
私が診療しているのは、ほとんどが乳がんの患者さんです。若い方から高齢の方まで患者さんの年齢はさまざまで、どの年齢層の患者さんでもがんと診断されるとやはり最初はとても落ち込まれるようです。それでも少しずつ気持ちを立て直して前向きに治療に向き合う患者さんの姿に、診ている私のほうが力をもらっていると感じることがよくあります。
また、当院の乳腺外科では緩和ケアサポートチームや地域連携室と連携しながら患者さんのサポートを行っています。再発後の治療が長く続き日常生活が難しくなっていく患者さんのために、早い段階から緩和ケアサポートチームや地域連携室とコミュニケーションを取り、自宅周辺で訪問介護や介護サービスなどのサポートを受けることができるよう意識しています。病院だけではなく地域社会のサポートも積極的に活用し、患者さんが安心して治療や生活ができるようお手伝いできることにも医師としてのやりがいを感じています。
乳がん治療は薬物療法に関する考え方が進んでおり、乳がんのタイプによって治療薬の選択肢が増えてきていることもあり、治療の効果性を実感しやすい分野だと思います。治療を受けている患者さんに薬が効いていることが成果として分かると手応えを感じます。
乳がんの手術においては、やはり外科医として特に乳房の温存術に力を入れています。いかに患者さんご自身の乳房を残すか、いかに根治性を保ちつつ見た目の美しさを損なわないよう形をきれいに仕上げるかを意識して行っています。
しこりが大きい場合は、術前の抗がん剤の使用によってしこりを小さくできる可能性があり、それにより手術で切除する部分の体積を小さくすることが期待できます。これにより今まで乳房を温存できなかった方が温存できるようになったり、温存が可能な方でも切除する範囲をさらに小さくできたりと、術後の乳房の形を美しく保つことに配慮した手術が可能になります。
ただし、術前化学療法により乳房の中にあったしこりが消えてしまった場合、しこりがあった場所を正確に過不足なく切除することが困難な場合があります。そこで、当院では放射線治療科の医学物理士認定機構認定 医学物理士と共に二人三脚で研究に取り組み、術前化学療法前と後の2つの画像を融合させる画像処理を行うことにより部分切除手術の際に乳房のしこりがあった位置を正確に再現する方法を考案しました。この方法により切除範囲をmm単位で決定することができるため、根治性と整容性の両面において手応えを感じられるようになりました。2人で協力して術前化学療法後の乳房の部分切除術に関する論文を発表することもでき、とてもよい経験になったと感じています。
長年治療を続けた患者さんから感謝の言葉をいただくことほどうれしいことはありません。患者さんのQOL(Quality of life:生活の質)を上げるため、また患者さんの満足度を高めるため、自分には何ができるだろうかといつも考えています。そのためにも、患者さんが治療に求めるものを正しく理解できるよう患者さんお一人おひとりの言葉に耳を傾け、患者さんの目をしっかりと見てコミュニケーションを取ることが大切であると常々感じています。
乳がんの診断を受けたばかりの患者さんの中には「乳房をとにかく残してほしい」とおっしゃる方もいらっしゃいますし、「とにかく安心したいので全切除してほしい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。また、最初はそう思っていても診断から治療に至る時間の流れの中で考えが変化していく患者さんもいらっしゃいます。患者さんの考えや気持ちの変化に寄り添いつつ、適切な治療にどのように導けばよいかを考えながら診療にあたっています。
再発した患者さんもやはり最初は不安な気持ちが強く「少しでも寿命を延ばすことができる治療をしてほしい」とおっしゃる方が多いのですが、そのための治療を続けていくなかで少しずつ患者さんの思いが変わってくることがあります。その時々に患者さんが求めているものを引き出しつつ、患者さんの思いに臨機応変に対応していくことも大事だと思います。寿命を延ばすことができても治療のために体調が優れず思うように動けないのでは、あまり意味がないのかもしれません。たとえ短い時間でもあっても患者さんがやりたいことを実現できるようにサポートしていくことも大切だと考えています。
当院は3年後に新病院に移転することが決まっています(2023年3月現在)。移転後は、よりたくさんの患者さんに来院いただき乳腺外科を発展させていきたい、これが当面の目標です。
乳腺外科での治療は全身療法のため、他の科との連携がとても重要です。今後は、さらに院内が一丸となって患者さんの治療にあたることができる病院にしていけるよう力を入れていきたいと考えています。
指導においては、若手の医師にこれまでの診療で得られた経験をフィードバックできればうれしいです。当院の乳腺外科を共に盛り上げていきたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。
この記事を見て受診される場合、
是非メディカルノートを見たとお伝えください!
千葉市立海浜病院
うさぴょんこどもクリニック 院長、千葉市立海浜病院 小児科 非常勤医師
橋本 祐至 先生
千葉市立海浜病院 小児科 、千葉市病院 前事業管理者
寺井 勝 先生
千葉市立海浜病院 循環器内科
丹羽 公一郎 先生
千葉市立海浜病院 副院長、救急科統括部長
織田 成人 先生
千葉市立海浜病院 診療局長(外科)
吉岡 茂 先生
千葉大学医学部 臨床教授、千葉市立海浜病院 診療局長
齋藤 博文 先生
千葉市立海浜病院 小児科 成人先天性心疾患診療部 部長
立野 滋 先生
千葉市立海浜病院 産科・婦人科 統括部長
飯塚 美徳 先生
千葉市立海浜病院 小児外科 統括部長
光永 哲也 先生
千葉市立海浜病院 循環器内科 統括部長
宮原 啓史 先生
千葉市立海浜病院 耳鼻いんこう科 統括部長
大塚 雄一郎 先生
千葉市立海浜病院 脳神経外科 科長
吉田 陽一 先生
千葉市立海浜病院 小児科 部長
小野 真 先生
千葉市立海浜病院 新生児科 統括部長
岩松 利至 先生
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現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。