どんな病気でも診られる循環器内科医になりたい

北里大学医学部循環器内科学 診療講師 医局長
深谷 英平 先生

どんな病気でも診られる循環器内科医になりたい

専門医である前にひとりの医師でありたいと願う深谷英平先生のストーリー

公開日 : 2017 年 06 月 19 日
更新日 : 2017 年 10 月 11 日

祖父の車椅子を押していた原点に帰って

物心ついた頃、祖父が脳出血により半身不随になりました。そんな祖父の車椅子を押すことが幼少時の私の役目でした。手にかかる祖父の重み。車椅子のハンドルの感触。そのような原体験を通し、私は自然と医師を志すようになりました。

家族にも親戚にも医師がいなかった私が抱いていた医師のイメージといえば、町のクリニックのお医者さん。近隣の方々が健康に悩んだとき、何でも診てくれるお医者さんです。

「医師になるなら、何でも診られるようになりたい」

そう考えて、医学部に入学しました。しかし、いろいろな診療科の講義を受けてみると、外科も面白そうだ、と心動いてしまいます。そして、どの診療科に行こうかいよいよ悩んだとき、思い出したのは車椅子の祖父の背中でした。そうだ、私は何でも診られる医師になりたかったのだと。

こうして私は北里大学の内科を選び、初期研修医として医師のキャリアをスタートさせました。

「夜中に呼ばれても、自分が行けば患者さんが助かると思えば頑張れるだろう?」

当時の北里大学は、今のように全診療科を回るスーパーローテートではありませんでした。しかし、内科を志望した医師だけは初期研修のあいだ、すべての内科系診療科を回ることができたのです。

いろいろな内科系診療科を回り、循環器内科で研修していたある日のことです。40代前半の男性が心筋梗塞で運ばれてきました。

男性は心肺停止の状態。正直、「これは助からないだろう」と思った私の隣で、循環器内科の上司たちはてきぱきと処置を進めます。すると患者さんは一命をとりとめただけでなく、一切の後遺症を残さず元気に退院されていったのです。

それはまるで魔法をみているかのようでした。

当時の病棟主治医で私の上司でもあった勝沼英太先生が、「夜中に呼ばれることもよくあるし、循環器内科医は確かに大変。でも、私たちが頑張れば助けられることが多いんだ。たとえ夜中に呼ばれても、自分が患者さんのところに一刻も早く駆けつけたら助けられるって思ったら頑張れるだろう?」

勝沼先生は、当時研修医だった私にそういいました。夜中に呼ばれ、寝癖を直す間も惜しんですぐに駆けつければひとつの命を救うことができる。一分一秒を争う中、自分の処置の質で、患者さんの将来が決まる―。

内科でありながら外科のようなダイナミックさのある循環器内科の治療に、私はすぐに魅了されました。心臓など生命の維持にかかわる大切な臓器を扱いつつも、医師の技量次第で患者さんの人生が決まる。自分が医師として生きる道はここだ、と思った私は循環器内科医になることを決めたのです。

患者さんのために、丁寧に説明して寄り添う

志高く循環器内科医としての道を歩み始めましたが、その道は決して順風満帆ではありませんでした。循環器内科が扱う疾患は、劇的に改善することが多い一方で、突然病状が悪化し帰らぬ人となることも少なくありません。私の力が及ばず、患者さんを助けられない場面に数多く直面し、その度に身を削られる思いをしました。

まだ若い患者さんを助けられなかったとき、患者さんの祖母に白衣をつかまれ、懇願されたこともあります。

「どうか、どうかあの子を助けてやってください」

それは、今から死亡宣告をするという、まさにその瞬間のできごとでした。そのときに抱いた無力感は、今でも忘れられません。

がんとは異なり、昨日まで元気だった患者さんが突然悪化し、ときに亡くなるケースがあるのが循環器の疾患です。患者さんのご家族も事実を受け入れられず、呆然となることが多くあります。

そんな場面では、患者さんやそのご家族が納得できるまで繰り返し丁寧に説明して寄り添うことを大切にしています。よくなったり悪くなったり、循環器疾患の患者さんには病状に大きな波が生じます。カテーテルを挿入して心臓の治療を行う冠動脈形成術やカテーテルアブレーションなど、外科のような侵襲的手術も行うため、合併症のリスクにも対処する必要があります。患者さんやそのご家族は、私たちに命を預けてくれているのですから、私たちもその期待に応えるべく最大限のことをする必要があるのです。

そうした心がけもあってか、私を慕い、感謝してくれる患者さんも何人もいました。患者さんからいただいたお礼の手紙は、今でも私の宝物です。

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北里大学医学部循環器内科学 診療講師 医局長

深谷 英平 先生

北里大学医学部循環器内科学の不整脈班の責任者として日々カテーテルアブレーションやデバイス治療を行っている傍ら、医局長として医局の運営に関わる多忙な日々を過ごしている。循環器専門医、不整脈専門医でありながら、内科医であるという初心を忘れない、ということをモットーとしている。その一環として、大学病院でありながら内科全体の合同勉強会を主催するなど、学生教育・研修医教育にも力を入れている。

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