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連載「働く心臓」の医学 早期診断と早期治療!

理由なく起こる動悸は心臓からの“緊急通報”!?

公開日

2019年03月25日

更新日

2019年03月25日

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2019年03月25日

掲載しました。
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東邦大学 医学部内科学講座循環器内科学分野 教授

池田 隆徳 先生

甘く見てはいけない 時々起こる動悸の原因「心房細動」【診断編】

「胸が早鐘を打つ」という言い回しは、緊急事態を知らせる鐘を乱打するように、心臓がドキドキすることの例えとして使われます。極度の緊張や驚きなどで心臓の鼓動が速まるのは正常な生体の反応です。しかし、特に理由がないのに心臓が「早鐘を打つ」ようなことがあったら、それは心臓からの“緊急通報”かもしれません。その裏に何らかの病気が隠れている可能性もあります。どのような病気が考えられるでしょうか。そして、どのような医療機関で、どんな検査を受ければいいでしょうか。

定期健診では高血圧以外異常なし、でも時々動悸が

このところ心臓の鼓動が速くなることが増えたという59歳の男性Aさんの訴えです。「最近、何をするでもなく時々動悸(どうき)を感じるようになりました。脈が速くて乱れている感じです。2年くらい前からたまに感じることはあったのですが、最近になって回数が増えてきました。そうはいっても月に1回程度です。1カ月前に会社の定期健康診断を受けました。その時は、血圧が高いとは言われましたが、それ以外は異常がないといわれました。どのように対応したらよいのですか?」

心臓のイメージ

高齢者に多いが基礎疾患で発現も

一般にいう「動悸」は、心拍(脈拍)が速くなることを指します。心臓が強く脈打つことを動悸という方がいますが、Aさんは「脈が速くなる感じ」と訴えていますので、本来の意味です。

結論を先に申し上げると、Aさんは「心房細動」の可能性があります。心房細動とは、よく言う「不整脈」の一種で、心臓上部の「心房」がけいれんするように激しく動き、その影響で血液を肺と全身に送り出す「心室」の拍動も速くなります。通常は50~100/分の心拍(脈拍)が、100/分を超えることが多いのです。心房細動が起こると、動悸のほかに胸の違和感、めまい、脱力感、呼吸のしにくさなどを感じることもありますが、自覚症状がない人も多数いらっしゃいます。

心房細動は、不整脈としては脈が飛ぶ「期外収縮」に次いで頻度が高く、コモンディジーズ(ありふれた病気)として知られています。罹病率(一定期間内に発病した人の割合)は、日本人全体で1~1.5%ですが、80歳以上の高齢者に限ると5~8%に跳ね上がります。加齢によって増えるため「老人病」と言っても過言ではありません。また、女性に比べて男性が多い傾向にあります。

しかし、加齢だけが影響するわけではありません。実は、高血圧心不全、冠動脈疾患、心臓弁膜症、呼吸器疾患、甲状腺機能亢進症など基礎疾患の存在の方が、加齢よりも心房細動の発現に大きく関与しているのです。このうち、影響が大きいのは心不全なのですが、数としては高血圧によるものが最も多くなります。

冒頭でご紹介したAさんは、58歳と比較的若く、1カ月前の定期健康診断で血圧が高いと指摘を受けたとのことですから、高血圧が心房細動の発現に関与した可能性が高いと考えられます。

「循環器内科」受診を

心房細動が疑われる場合、どのような医療機関を受診すればいいでしょうか。

先に述べたように、心房細動はコモンディジーズで、内科医ならば誰でも診られるはずです。ですが、内科医にも得手不得手があります。できれば「循環器内科」を標榜している病院または診療所を受診するのが良いでしょう。

Aさんのように通常の定期健康診断では把握できていないようなケースでは、循環器疾患(不整脈)の検査装置を備えている病院または診療所の方がいいかもしれません。ただし最近では、日常の健康管理や初期の医療は地域の診療所などで行い、専門的な検査や手術、入院治療などを設備が整った大きな病院が担う「病診連携」をしている診療所も増えています。直接大きな病院(特に大学病院など)を受診すると、高額な初診料を請求されることがありますので、まずはかかりつけ医や地域の診療所で紹介状を作成してもらい、専門的な診断や治療を大きな病院で受け、その後は再びかかりつけ医などに診てもらうと、検査から日常の治療までスムーズに進めることができます。

心電図検査で確定診断

医療機関ではどのような検査をするのでしょうか。心房細動は、心電図検査によって確定診断されます。持続性あるいは慢性であれば、心房細動が起こっている頻度が高いので、腕と脚、胸に電極を取り付けて測定する通常の「12誘導心電図」で十分診断できます。

心電図検査

しかし、発作性(一過性)に出現する心房細動は、検査の際に都合よく症状が現れてくれるとは限らず、10~20秒程度の12誘導心電図記録では診断することはできません。このような発作性心房細動を検出するために、最初に行われる検査が「24時間ホルター心電図」です。携帯式の心電図計を24時間装着して記録を取ります。

今回の患者さんは「月に1回程度起こる動悸」と言っていますので、24時間ホルター心電図でも捉えることは難しいでしょう。このような時に考慮されるのが「イベント心電図」と呼ばれる長時間記録可能な携帯型心電図です。携帯型の心電計で、自覚症状があるときに機器を胸にあてたり両手の指を触れたりして、その時の心電図を記録することもできます。医療機関で貸し出しますが、普段から自分の心臓の状態が気になるという人には、家電量販店で購入できるものもあります。

背後にあるかもしれない基礎疾患の検査も必要

心電図で心房細動が確定診断されたら、その次のステップがあります。前述のように、心房細動は基礎疾患、特に心疾患に伴って発現することもよくあります。ですから、その背後に隠れているかもしれない基礎疾患の有無を調べることが必要なのです。

まずは簡便で患者さんへの負担が少ない血液検査、胸部レントゲン、心エコー(超音波)などが行われます。このうち血液検査では、甲状腺機能亢進症や糖尿病といった疾患の関与を知ることができます。また、心疾患の多くは胸部レントゲンと心エコーでほぼ検出することができます。心疾患が疑われるものの検出できない場合には、心臓CTや心臓MRIなどの画像診断検査、さらにはカテーテルという細い管を心臓に血液を供給する冠動脈の入り口まで差し込み造影剤を流し込んで状態を調べる「心臓カテーテル検査」が考慮されることもまれにあります。

そしてもう1つ、個人でもできる検査があります。それは血圧測定です。先にも述べたように、高血圧は心房細動発現の重要な因子なので、家庭用血圧計で毎日の血圧を測ることで早期発見につながることが期待できます。

治療をしなくても大丈夫?

心房細動はほとんどの場合、しばらくすると症状が和らぎ、次第に苦しさも軽減してゆきます。だからといって、治療をせずに放置してもいいわけでもないのです。【治療編】では、なぜ治療が必要か、そしてどのような治療法があるかについて説明します。