膝の裏が痛い:医師が考える原因と対処法|症状辞典

膝の裏が痛い

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 転倒したなど、きっかけがはっきりしていて痛みが強い
  • 歩くことができないほど痛む

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 歩行に支障が出ている
  • しびれがある
  • 痛めた覚えはないが、走ったりジャンプしたりするスポーツの習慣がある
  • 日常生活に支障はないが、痛みが慢性化している

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 痛みが短期間で、その後繰り返さない

筑波大学 医学医療系整形外科 准教授

國府田 正雄 先生【監修】

歩くために大切な役割を果たしている膝ですが、時に膝の裏が痛いという症状が現れる場合があります。

  • 膝の裏が痛くて腫れなどもある
  • 膝の裏が痛いだけではなく、ぐらぐらと安定しない
  • 膝が動かしづらい

このような症状が現れた場合、どのような原因が考えられるでしょうか。

膝の裏が痛いとき、その原因のほとんどは骨や関節、靱帯(じんたい)が何らかの原因で損傷したことによるものと考えられます。また、時には重大な病気が原因であることもあります。

骨や関節、靱帯の病気やケガが原因で膝の裏が痛いとき、主に考えられる病気には以下のようなものがあります。

変形性膝関節症

変形性膝関節症とは、加齢による軟骨の劣化や肥満による負荷などの原因で、膝の軟骨がすり減り炎症が起こる病気です。初期は動き始めが痛いですが、進行すると安静時にも痛むこともあります。

変形性膝関節症の場合、痛みのほかに見られる症状は、炎症によって腫れたり水が溜まったり、関節が変形したりといったものです。

変形性膝関節症
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膝関節捻挫(ねんざ)

膝関節捻挫は、膝を捻るなどして強い力が加わったとき、関節周辺の筋肉や皮下組織が損傷するものです。

強い痛みを伴うことが多いですが、損傷箇所によってはあまり痛く感じないこともあります。膝関節捻挫で痛みと合わせて起きやすいのは、腫れや内出血などです。

膝関節捻挫
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靭帯損傷

スポーツや事故などで強い力が加わり、膝にある4つの靱帯のいずれか、また複数が損傷した状態が靱帯損傷です。特に膝の裏が痛いときは、後十字靭帯の損傷である場合が考えられます。

痛み以外の症状では腫れが起きたり、膝の動きが制限されたりといったものが見られます。また適切な治療を受けていない状態では膝が安定せずグラグラした状態になることもあります。早めの治療が大切です。

関節リウマチ

関節リウマチは体内の免疫系が異常を起こし、関節に存在する滑膜にリンパ球などが集まって慢性的な炎症が起こる病気です。

膝などに起こるときは、ほぼ左右同時に痛みなどの症状が現れます。関節リウマチの場合、痛みのほかに腫れやこわばり、発熱などの症状も見られます。また進行すると関節が変形してしまい、歩行に支障が出ます。

関節リウマチ
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ベーカー嚢腫(のうしゅ)

膝の関節包の裏側に本来ないはずの袋状の構造物ができ、中に液体(滑液)がたまることがあります。これをベーカー嚢腫といい、膝の裏が腫れたり、曲げづらい、膝を伸ばすと痛むなどの症状が現れることがあります。

中高年の大人によくできることがあるといわれていますが、時には子どもにできることもあります。

上記では、骨や関節、靱帯の異常による症状を説明しましたが、それ以外に場合によっては危険な状態になる病気も存在します。

深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)

エコノミークラス症候群といわれることもある病気で、同じ姿勢が続くなどで足の血流が悪くなり、静脈に血栓(血の塊)ができることがあります。ふくらはぎに痛みが出ることが多いのですが、血栓ができた部位によっては膝や膝の裏に痛みが生じることがあります。

片足が腫れる、痛むなどの症状の他、血栓が血流に乗って肺などの大きな血管につまることがあります。この場合では一刻も早い治療が必要なため、もし乗り物に長時間乗ったあとなどに急激な息苦しさなどを感じた場合には、すぐに受診しましょう。

深部静脈血栓症
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骨や関節、靱帯の損傷などの問題がある場合は、放っておくことや早期に適切な治療を受けないことで、膝がグラグラするなどの症状が残ってしまう場合もあります。膝の裏が急に痛み始めたなど、症状に気づいた時点で受診するのがよいでしょう。また、慢性的な痛みが続いている場合にも一度受診しておきましょう。

一部専門科目が分かれる病気もありますが、基本的にまずは整形外科への受診がよいでしょう。

受診時には、いつから痛むか・どんな痛みか、特に痛む動作があるかといった情報を詳しく伝えましょう。また、以前に膝などをケガした事があれば伝えるようにしましょう。

日常生活で起こりやすい膝の裏の痛みもあります。

立ちっぱなしの仕事や頻回の曲げ伸ばしなどで膝に負担をかけたり、スポーツで膝を酷使したりしたとき、膝の裏に痛みが出ることがあります。

膝を守るためには

まずは日常生活の中でもなるべく膝に負担をかけないようにしましょう。立ち仕事をするときには適度に休憩を挟む、スポーツなどをする前にはよく準備運動をするなどしましょう。膝の調子が悪いときには正座やしゃがむなど、膝を強く曲げる動作は避けたほうがよいでしょう。痛みの程度によっては畳の生活から椅子を使う生活に変えたほうがよいこともあります。

痛みが出たときには無理をせず休む、日常的に立ち仕事や頻回の曲げ伸ばしが避けられない場合には医師の指導のもとサポーターなどを使う方法もあります。また、スポーツ中に痛みが出た場合にはすぐに中止し、必要に応じて受診しましょう。

肥満によって体重が増えすぎてしまうと、その重みで膝に負担がかかり、骨や関節を傷める原因となります。

太りすぎが原因かなと思ったら

まずは適正体重を目指しましょう。肥満を解消するためには、栄養バランスのよい食事を3食摂ったうえで、膝に過度な負担をかけない程度の運動を毎日続けるなど、健康的なダイエットが大切です。

ただし痛みがあるときに運動をするのは実際難しいことが多いですので、病院で痛みを減らしてもらいながら並行して徐々に運動するのがよいでしょう。

また、膝の状況によってはしてはいけない運動もあります。痛みがあるときには一度受診し、医師の指示のもと行いましょう。

自分でできる対処法を行っても症状がよくならない場合には、思いもよらぬ原因が潜んでいる場合もあります。一度整形外科で相談してみましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。