レディースドックは、一般的な人間ドックの検診内容に婦人科検診を組み合わせたものです。
人間ドックでは、通常の健康診断(一般健康診断)よりも多くの臓器を対象とした検査を行い、病気の早期発見・早期治療につなげます。レディースドックではそれらに加えて、乳がん・子宮がん(主に子宮頸がん)などを含んだ女性特有の病気の有無を検査する内容が盛り込まれています。
日本国内では、子宮頸がん検診は20歳以上、乳がん検診は40歳以上に対してそれぞれ2年に1回受けることが推奨されています。そうした理由から、レディースドックについても、20歳以降の方に適しているといえるでしょう。
一般的な人間ドックでは、内科健診(問診・視診・触診・聴診)のほか、血液検査、循環器系検査(心電図検査・心臓超音波検査)、消化器系検査(消化管X線検査・内視鏡検査)、呼吸器系(肺)検査(胸部X線・呼吸機能検査)、目の検査(視力検査・眼圧検査・眼底検査)、尿検査、腹部超音波検査などが実施されます。
以下では、レディースドック特有の検査内容である、マンモグラフィ検査や乳腺超音波検査、子宮頸部細胞診、経腟超音波検査について簡単に説明します。なお、不妊の原因にもなるクラミジアなどの性感染症の検査を行っているところもあります。
乳房を板で挟み、薄く伸ばした状態でX線撮影を行います。しこりの有無や大きさ、乳腺のゆがみ、石灰化の有無などから乳がんがないかを検査します。
胸部に超音波を当てて画像化することで、乳がんの有無を検査します。マンモグラフィ検査と違ってX線を使用しないため、妊娠中や妊娠の可能性のある方も検査が可能です。
子宮頸部を専用のヘラやブラシ、綿棒などで軽くこすって細胞を取り、顕微鏡でがん細胞あるいはがん化しそうな細胞がないかを調べます。
細い超音波器具(プローブ)を腟内に挿入して、子宮内部の状態を調べます。子宮頸がんのほか、子宮体がんや卵巣がん、子宮筋腫、子宮ポリープ、子宮内膜症、卵巣のう腫などの兆候がないかも検査します。また、子宮奇形が見つかることもあります。
生理中の方でもレディースドックを受けることはできますが、子宮頸部細胞診は血液が混入すると正しい判定ができなくなる可能性があります。
また、マンモグラフィ検査については、生理中で乳房が張っていると検査時に強い痛みを感じたり、診断が難しくなったりする恐れがあります。そのため、生理中の検査は避けたほうがよいでしょう。
豊胸手術をされた方は、マンモグラフィ検査が受けられない場合があります。ただし、乳腺超音波(乳腺エコー)検査は可能なため、あらかじめ申告しましょう。
検査にかかる時間は医療機関や検査内容によって幅がありますが、2~3時間程度とされます。
一般的なレディースドックの費用は40,000~80,000円程度、より綿密に調べたい場合は100,000円以上が目安となります。費用に関しても医療機関や検診プランによって異なるため、あらかじめ医療機関に確認しておきましょう。
前述のとおり、マンモグラフィ検査では乳房を板で挟むため、痛みを感じることがあります。痛みの程度は個人差があり、乳房が張る生理前や生理中、授乳中は特に痛みが強くなる傾向があります。
子宮頸部細胞診や経腟超音波検査については、検査器具を腟に挿入する際にまれに痛みや出血を伴う場合があります。なお、性交未経験者では経腟超音波検査が困難な場合があり、事前申告に基づき経直腸超音波検査に変更となることもあります。
レディースドック特有の検査では、基本的に食事制限はありません。しかし、並行して受ける人間ドックの検査内容によっては前日・当日の食事について注意が必要なケースもあります。そのため、事前に検診を受ける医療機関に確認しておきましょう。
また、子宮頸部細胞診は検査前の腟内洗浄や性交渉によって正しい結果を得られない場合があるため、検査3日前からは腟内洗浄や性交渉を控えましょう。
乳がん検査では上半身の服を、子宮がん検査では下着を脱ぐ必要があるため、ゆったりとしたスカートなどの着脱しやすい服装で臨みましょう。細胞診では細胞を採取する際に、微量な出血が起こることがあるため、おりものシートや生理用ナプキンを持参しておくと安心です。
レディースドックの検査結果の詳細は、数週間後に郵送されるのが一般的です。医療機関によっては、当日結果が出ている検査についてのみ、その場で担当医から説明を受けるケースもあります。
乳がん検診のマンモグラフィ検査では米国放射線専門医会(ACR)の作成したガイドライン(BI―RADS)におけるカテゴリー分類が用いられ、1~5のカテゴリーに分類されます。
一般的にカテゴリー1が“異常なし”、カテゴリー2が“良性の病変”、カテゴリー3が“良性であるが悪性を否定できない”、カテゴリー4が“悪性の疑いあり”、カテゴリー5が“悪性の病変”となります。このうち、カテゴリー3~5の場合は精密検査の対象となります。
子宮頸部細胞診ではベセスダシステム2001準拠子宮頸部細胞診という分類が広く用いられ、NILM、ASC-US、ASC-H、LSIL、HSILのようにアルファベットで結果が判定されます。
NILMは異常なし、それ以外は何らかの異常所見があったことを示すため、NILM以外の判定結果となった場合には精密検査が必要です。
一方で、検診で見つかる異常の多くは前がん状態*です。そのため、異常ありと判定された場合は精密検査が必要ですが、がんと診断されたとは思い込まないでください。
*前がん状態:正常な組織と比べ、がんになりやすく変化した組織の状態
乳腺エコー検査や経腟エコー検査の場合、異常が見つからなければ“異常なし”“所見なし”などと記載されることが一般的です。
一方で、良性・悪性疾患の疑いがあると判断された場合は、精密検査の対象となる場合もあります。
要精密検査の結果が出た場合は、速やかに乳腺外科や婦人科を受診しましょう。ただし、レディースドックを受けた医療機関では精密検査を実施していないこともあるため、事前の確認が必要です。
マンモグラフィ検査や乳房超音波検査の追加検査のほか、専用の針で病変の一部を採取する針生検などが検討されます。
腟拡大鏡(コルポスコープ)を使って子宮頸部を詳しく診るコルポスコープ診や子宮頸部から細胞を採取してHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染の有無を調べるHPV検査などが検討されます。
また、子宮体がんや卵巣がんの疑いがある場合は、子宮内膜の組織を採取して調べる組織診や追加の経腟エコー検査、CT・MRI検査、腫瘍マーカー検査などが実施されます。
レディースドックは、20歳以上で性交渉の経験がある方、30歳以上の方、生理痛が重い、不正出血があるなどのお悩みを持つ方に特に推奨されます。また、血縁者に子宮頸がん、乳がんになった方がいる場合も積極的に検討しましょう。
なお、各自治体が実施する子宮頸がん検診は20歳以上、乳がん検診は40歳以上の女性に対してそれぞれ2年に1回受けることが推奨されています。レディースドックの結果に問題がなくても、定期的に検診を受けるようにしましょう。
本記事で採用している検査名称はより一般的な表現を採用しておりますが、医療機関や検査機関によって異なる場合があります。また名称が異なる場合、検査内容も一部異なっている場合があります。