インタビュー

医療従事者と患者さんの医療リテラシーの差を埋める―医療従事者がメディカルノートに期待すること

医療従事者と患者さんの医療リテラシーの差を埋める―医療従事者がメディカルノートに期待すること
武藤 真祐 先生

医療法人社団鉄祐会 理事長

武藤 真祐 先生

この記事の最終更新は2015年05月21日です。

医療従事者と一般の方の間では、医療リテラシー(医療に関する知識)に大きな差があります。

一般の方にとっても、自分自身やご家族が病気になった時、もしくはそもそも病気にならないようにするために、正しい医療情報にアクセスをして、医療リテラシーの差を埋めることが必要です。

ところが、医療従事者と一般の方の医療リテラシーの差を埋めるようなメディアは、残念ながら、今まで存在しませんでした。

医療情報を掲載するWebサイトは世の中にたくさんあります。しかし医療従事者でなければ、その中でどの情報を信用してよいのかがわかりません。Googleで検索して上位に出てくるサイトや、Wikipediaに代表されるようなサイトから知識を得ている方は多いでしょう。しかしそれらのサイトは、医療従事者によって発信されている情報とは限りません。

また、医療従事者が関与しているサイトであっても、エビデンス(医療的に確かな根拠)に基づいた情報発信なのか、一人の医師の個人的な経験に基づいた情報発信なのかは、一般の人には判断が難しいものです。医師が発信する情報であっても、最新の知見ではなかったり、医療的な根拠のある情報ではなかったりするので注意が必要です。

医療ニュースにも注意が必要です。ニュースは視聴者や読者から注目を集める必要があるため、どうしてもセンセーショナルな記事になってしまう傾向があります。そして、ごく稀に起こった出来事でも、ひとたび大きく報道されてしまうと、患者さんや一般の方は、それが一般的な出来事であると勘違いしてしまいがちです。

医療従事者と一般の方の間で医療リテラシーの差を埋めること。これは今、社会的に強く求められている役割です。医療従事者にとっても、医学的に正しい情報を発信できる場が必要ですし、患者さんにとっても、センセーショナルなニュースに惑わされることなく、正しい医療情報にアクセス出来る場が必要です。

医療従事者と患者さんをつなぎ、医療リテラシーのギャップを埋める場としてのメディカルノートに期待しています。

医者は、自分自身が患者になったとき、はじめて患者さんの気持ちがよく分かると言われます。医療従事者は専門職なので、技術や知識といった自分の提供する価値を極めようとするあまり、患者さんの視点から離れてしまう傾向があるのです。このため、医療従事者による情報発信は、どうしても一般の方には難しすぎるものになりがちでした。

一方で、ビジネス的な視点で医療メディアを作ろうとすると、とにかく読まれれば良いという発想に陥って、医療的な妥当性が担保できなくなりがちです。

今までの医療情報サイトは、ビジネス的な視点ばかりが強いチームで作っていたり、医療従事者だけで作っていたりすることが多かったので、医療従事者と患者さんの双方にとって満足いくものがなかなか生まれませんでした。

今回のメディカルノートは、医者、患者さん、ITやメディアの専門家などによる混成チームで情報発信をしていこうとしています。異なる専門、異なるバックグラウンドを持つもの同士が意見をぶつけ合うことで「メディチ効果」(異分野の人が交流することでイノベーションが生まれる効果のこと。ルネッサンス時代にメディチ家が彫刻家、科学者、詩人、画家など様々な専門家を呼び集めたことにより、新たな創造を生み出したことによる)が期待できるのではないでしょうか。

メディカルノートは、患者さんにとっての分かりやすさを担保しながら、医療従事者の倫理観に基づいた、真に有益な情報発信ができるのではないかと期待しています。