夜尿症から卒業するための生活指導やアラーム療法など、薬物治療以外の治療方法について、長年にわたり夜尿症の診療・研究に携わっておられる順天堂大学医学部附属練馬病院小児科の大友義之先生(先任准教授)にうかがいました。
生活習慣の指導は、アラーム療法や薬物治療などの積極的な治療を開始する場合でもそれらと並行して最後まで継続的に行なっていく必要があり、大変重要なものです。生活習慣の見直しをしっかりと行なうだけでも、約1割の患者さんは夜尿が解消しています。
生活習慣の見直しや指導のポイントは、およそ下記のようなものです。
しかしながら、現代の子どもたちの生活は昔とは大きく変わっています。夜遅くまで塾通いやスポーツの練習をした後、遅い時間に帰宅して夕食をかき込み、水分補給をしてバタンと倒れこむように眠ってしまう子どもたちもいます。そのような子どもたちに寝る前の水分を控えるような指導をすることはできません。
単なる夜更かしであれば是正することに躊躇する必要はありません。しかし、その子ども自身にとって、たとえばサッカーの練習がとても大切なことだとしたら、そのプライオリティ(優先順位)を考慮したうえで治療方針を決定し、当事者が納得したうえで治療に臨む必要があります。
前述の例のように、運動をするため一律に水分制限ができないとしたら、抗利尿ホルモン薬ではなく別の薬剤を使ったり、アラーム療法を併用していくなどの治療戦略が考えられます。
現在のところ、このようなトレーニングの効果は疑問視されています。ちょうど今、2016年の6月を目指して日本夜尿症学会の診療ガイドライン改訂作業を進めているところなのですが、エビデンスを集めている中で、がまん訓練(がまん尿)をすることはむしろ逆効果であるとする研究論文もあり、一定の見解は得られていません。
アラーム療法では、パンツにセンサーを付けることで夜尿後にアラームで本人がそのことを認識するようにします。これを繰り返すことで夜間の蓄尿量が増え、朝方まで持つようになることを期待して行なう治療法です。
現在の夜尿症治療における世界的な流れをリードしている欧米、特にヨーロッパのオピニオンリーダー的な医師たちの治療を見てみると、アラーム療法は薬物療法とほぼ並列に、第一選択肢として行われるものとなっています。日本においてもこの点は同様です。現在、社会的にコンセンサスを得られている治療の流れは以下のフローのようになっています。
実際のところ欧米での現状を見てみますと、薬物治療の費用負担が大きいというような社会制度上の背景もありますが、夜尿アラームの使用が民間レベルまで浸透しているという違いがあります。たとえば幼稚園や小学校の先生たち、あるいはそれに準ずるスタッフなどが夜尿アラーム機器の使用を勧めるということが行われています。使用方法についても、ただ漫然と行なっているだけでは効果がありませんので、フォローアップするようなシステムもある程度できています。
欧米ではこのような形で、医療機関に関わらなくてもアラーム療法にトライすることができる土壌があります。しかし、アラーム療法で夜尿が治るお子さんもいれば、そうでないお子さんもいます。アラーム療法で効果がなかったお子さんに対しては薬物療法が必要かもしれませんので、病院の受診がすすめられます。
順天堂大学医学部附属練馬病院 小児科 教授・診療科長
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