インタビュー

夜尿症の薬とその注意点

夜尿症の薬とその注意点
大友 義之 先生

順天堂大学医学部附属練馬病院 小児科 教授・診療科長

大友 義之 先生

この記事の最終更新は2015年10月16日です。

夜尿症の薬物治療に使われている薬剤とその注意点について、長年にわたり夜尿症の診療・研究に携わっておられる順天堂大学医学部附属練馬病院小児科の大友義之先生(先任准教授)にうかがいました。

脳の下垂体から分泌されて尿量を調節する、バソプレシンという抗利尿ホルモンと同じようなはたらきがあります。腎臓の尿細管における水の再吸収を促して尿を濃縮し、バソプレシン分泌不足が原因で大量の尿が出ることを防ぎます。

本来は中枢性尿崩症で下垂体からの抗利尿ホルモンの分泌が少なくなっている患者さんに対して、これを補充するために使われる薬です。夜尿症の患者さんの場合、抗利尿ホルモンは正常に分泌されているものの、夜間の尿量が多くなっているため、その尿量を減らす目的で就寝直前に使われます。

薬剤の位置づけとしては第一選択薬になっていますが、夜尿症の患者さんがすべて夜間の尿量が多いというわけではありません。尿量が特に多いわけではないのに夜尿があるという患者さんに対しては、別の治療を検討する必要があります。

また、薬を使っている間は尿量が減っても、やめればまた再発するという問題があります。薬の量や服用の頻度を減らしていくとまた尿量が増えますので、それをどう持ちこたえていくかというトレーニングをしながら、薬をやめていくことになります。

もうひとつ注意すべきことは服用の仕方です。この薬剤は消化管での吸収効率があまりよくないため、まずは鼻腔内へのスプレーで鼻腔粘膜から吸収され効果を得ていました。後になって出てきた水なしで飲める錠剤は、口の中で崩壊して口腔粘膜から吸収されるため、水分の摂取を控えるうえでも好都合ですが、もしも一般的な錠剤のように水で飲んで消化管から吸収されると、血中濃度が十分に上がらないばかりか、水分のとり過ぎにもつながります。錠剤を処方されていて尿量が減らない場合には、薬の用量が少なすぎるのか、服用の仕方が間違っているのかをよく確かめる必要があります。

抗コリン薬は本来、過活動膀胱(OAB: Over Active Bladder)の治療に使われる薬です。過活動膀胱の主な症状は尿意切迫感・頻尿・切迫性尿失禁などですので、抗コリン作用で膀胱をリラックスさせて、ためることのできる尿の量を増やします。薬剤の適応からいえば、夜尿症の根本治療というよりは、過活動膀胱がベースにあって、それが夜尿症につながっているかもしれないという形での処方になります。

ただし、過活動膀胱といっても大人の場合と子どもの場合は原因が異なるので、一括りにはできない部分があります。子どもの過活動膀胱は発達の過程で膀胱の機能が成熟しきっていないことが原因です。抗コリン薬を使うことでそれがある程度是正されて排尿の問題が解決するのであれば、薬をやめることもできますし、抗利尿ホルモン薬をやめた時のような再燃(リバウンド)も多くありません。

夜尿症に対する薬理作用としては、尿意覚醒を促進する作用・抗コリン作用・尿量減少作用などが知られており1960年代から使用されていますが,実際どの作用により有効性がもたらされているのかははっきりしていません。効果のひとつとして、眠りを浅い状態にすることで尿意に気づきやすくさせるということがあるのではないかと考えられます。

主な副作用は食欲不振・悪心・嘔吐・不眠・眠気などですが、重い血液・肝障害を引き起こすことがあります。米国では不整脈での死亡例の報告があり、FDA(アメリカ食品医薬品局)から注意喚起のメッセージが出ていますし、国際学会でも使用は推奨されていません。このような背景から、欧米では現在は最終手段として使われている状況です。

日本では、すぐに効果が現れて、実際によく効く患者さんも一定数いるため、選択肢から外すべきではないが、第一選択薬として選ぶべき薬剤ではないとして、少々難しい位置づけになっています。

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