インタビュー

夜尿症対策はなぜ必要か―夜尿症と子どものQOL(生活の質)

夜尿症対策はなぜ必要か―夜尿症と子どものQOL(生活の質)
大友 義之 先生

順天堂大学医学部附属練馬病院 小児科 教授・診療科長

大友 義之 先生

この記事の最終更新は2015年10月17日です。

夜尿症を克服できないことは子どもたちの自尊心を傷つけ、そのQOL(生活の質)を著しく低下させています。長年にわたり夜尿症の診療・研究に携わっておられる順天堂大学医学部附属練馬病院小児科の大友義之先生(先任准教授)にお話をうかがいました。

夜尿症は小児の慢性疾患の中で、アレルギーに次いで患者さんの数が多い病気です。命にかかわる病気ではありませんし、そもそも治療する必要があるのかどうかという点でも意見の分かれるところがあります。

しかし、子どもの自尊心という点では、夜尿症の問題は非常に重要です。夜尿症の子どもたちは一般の子どもたちに比べると自尊心が低下しているというデータがあります。

また、海外のデータではありますが、8歳〜16歳の夜尿症の子どもにとって、「夜尿症を克服できないこと」は、精神的なトラウマの重症度において「両親の離別」「両親の争い」に次ぐ第3位であり、これは4位のいじめや仲間はずれよりも悪い体験であったことが示されています。

夜尿病患者における精神的トラウマ

それだけに、夜尿症を克服した子どもたちの喜びの大きさには、治療に携わる私たち医師にとっても想像以上のものがあると常々感じています。

夜尿症の治療のゴールは、アラームや薬物治療などの治療なしで夜尿の頻度が月1回未満であれば「卒業」であるとされています。しかし、そこまでいかなくても、漏れる尿の量が少なくなるだけでも実害は小さくなりますし、QOL(生活の質)が向上することは間違いありません。

キャンプや修学旅行など、泊まりがけで行なう学校行事への参加は、夜尿症のお子さんや保護者の方にとって重要な問題です。それまでに治したいというご相談をいただいた場合には、できることはすべてやっていきたいと考えています。しかしながら、どのような治療を行うにせよ、効果が現れるまでには通常1ヶ月半程度はかかるものだということはご理解いただきたいと思います。夜尿症の治療は早く開始するほど、治るのも早くなります。

まずは生活習慣の指導をしっかりと行います。アラーム療法は短期間で効果が期待できるものではありませんので、薬物療法も行なっていくことになります。それでも失敗してしまった時のために、漏れても分からないようなパンツを用意するとか、あるいは担任の先生にあらかじめ相談して起こしてもらうようにするなど、精神的なサポートも同時に行なっていきます。「きみのクラスにも必ず何人か同じような子がいるから」「先生たちは個人情報を守ってくれるよ」と伝えて安心してもらうようにしています。

どんな手を使ってでも、一度乗り切ってしまうとそれが自信につながります。夜尿症が心配だから宿泊行事に参加しないというのは決して好ましいことではありません。夜尿症のお子さんが修学旅行で楽しい思い出をつくれるように、医療の側からお手伝いさせていただくことができると考えています。

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