インタビュー

夜尿症とは―おねしょと夜尿症の違いは?

夜尿症とは―おねしょと夜尿症の違いは?
大友 義之 先生

順天堂大学医学部附属練馬病院 小児科 教授・診療科長

大友 義之 先生

この記事の最終更新は2015年10月14日です。

夜尿症は泌尿器の病気なのか、おねしょと何が違うのか―長年にわたり夜尿症の診療・研究に携わっておられる順天堂大学医学部附属練馬病院小児科の大友義之先生(先任准教授)にうかがいました。

「おねしょ」と「夜尿症」は、夜寝ている間に無意識に排尿してしまうということでは同じですが、その違いのポイントは年齢です。つまり、幼児期の夜尿は発達の過程で解消するものと考えて「おねしょ」といい、5~6歳(小学校入学前後)以後まで続く夜尿では、疾患ととらえて「夜尿症」というのが一般的です。

日本夜尿症学会のガイドラインに示されているところでは、夜間の尿漏れだけのものを夜尿症といい、昼間の尿漏れだけのものを(昼間)尿失禁症、夜間・昼間とも尿漏れのあるものを遺尿症(尿失禁症)としています。

一般的には夜尿のある子どもは、2~3歳児で40~50%、5~6歳児で10~20%、10歳児で5~7%といわれており、成人まで続くこともあります。1年間あたり自然経過でおねしょを卒業できるのは10~15%ほどと言われています。つまり5~6歳で夜尿が続いている子どもの約半数は小学校高学年(10歳前後)になっても夜尿が続いたままの可能性が高いことになります。

夜尿症の原因はひとつではなく、大きく分けて3つの要因があると考えられます。

これは全体の7割程度の方が当てはまります。脳内の下垂体から分泌される抗利尿ホルモン(関連記事:「夜尿症の薬とその注意点」参照)は通常、4歳くらいになると分泌量の日内変動に一定のサイクルができてくるとされています。このため、成長にともなって夜間の尿量が落ちてくるのですが、夜尿症のお子さんではこの日内サイクルが達成できておらず、夜間の尿量が多くなっていると考えられます。

通常は起きている時と眠っている時を比べると、眠っているときのほうがリラックスして膀胱に尿を多く貯められるのですが、眠っている間も緊張状態が解けず、貯められる尿の量が少ないという方が5割程度いるとされています。1つめの「夜間の尿量が多い」ことと両方に当てはまる方もいらっしゃいます。

しかし、これだけでは夜尿症の原因を説明することはできません。なぜなら、夜間の尿量が多い、あるいは貯めておける尿量が少ないといった要因があったとしても、起きてトイレに行くことができれば夜尿にはつながらないからです。

眠っている間に尿意に気づくことができず、漏れてもまだ起きないという状況があるからこそ、夜尿症であるのだといえます。したがって、夜尿症の根底には睡眠と覚醒の発達障害があると考えられます。

かつては夜尿症の患者さんは尿意で起きられないのだから、眠りが非常に深いのではないか(Deep Sleeper)と考えられていました。しかし、ここ数年来、夜尿症の患者さんの眠りの質についてよく調べてみたところ、むしろ眠りが浅く、質の悪い睡眠が長時間続いている場合が多いということが分かってきました。

もしそうであれば、夜尿症の患者さんにはよく眠ってもらったほうがいい、ということになります。夜尿症の薬物治療で用いられる薬剤のひとつである三環系抗うつ薬は、眠りを浅くすることによって尿意に気づかせることができるのではないかと考えられていますが、たしかにその点で効果はあるにせよ、睡眠の質という観点からは決してよいことではないのかもしれません。

眠っている時間のうち、前半に深い眠りがあって、その後で浅い眠りがあるといったフェーズ(周期)がきちんとしていれば、後半の眠りが浅いときに尿意を感じて起きるということができるのでしょうが、夜尿症の患者さんの場合は浅い眠りがだらだらと続いているので、常に尿意の刺激があって麻痺してしまうために起きられないのではないかと考えられます。まだ仮説ではあるのですが、このような見方はかなり受け入れられつつあります。

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