にょうほうしょう

尿崩症

最終更新日:
2023年03月28日
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2023/03/28
更新しました
2017/04/25
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概要

尿崩症とは、1日に3L以上の尿が排出されるようになる“多尿”を引き起こす病気の1つです。尿崩症は、水を体内に保つ作用を持つ抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が欠乏することによる“中枢性尿崩症”と、ADHの効きが低下することによって尿量が増える“腎性尿崩症”の2つのタイプに分けられます。

いずれのタイプも発症すると、多尿の結果として、脱水となり、強い喉の渇きを感じたり、失った水分を補うために多量の水分摂取につながったりします。また、体内から尿と共に水分がどんどん排出されていくため、十分な水分を補わないと脱水や電解質異常に陥りやすく、血圧低下などを引き起こすこともあります。

尿崩症の原因は遺伝子の異常や自己免疫的な機序、電解質異常、脳の病気・外傷、薬の副作用などさまざまであるため、治療方法も原因によって異なります。

原因

尿崩症は、主に“中枢性尿崩症”と“腎性尿崩症”の2つのタイプに分けられ、それぞれ原因が異なります。また、それ以外に妊娠中にまれに起こる一過性の尿崩症もあります。

中枢性尿崩症

水を体の中に保つ作用を持つ抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が欠乏することによって引き起こされる尿崩症です。

抗利尿ホルモン(ADH)は脳の下垂体と呼ばれる部位から分泌されるホルモンですが、欠乏する原因としては、頭部外傷腫瘍(しゅよう)脳梗塞(のうこうそく)脳出血、脳炎、髄膜炎(ずいまくえん)などによる視床下部~下垂体の損傷が考えられます。一方で、遺伝的要因による発症が疑われるケースや原因がはっきり分からないケース(特発性)もあります。特発性中枢性尿崩症では自己免疫的な機序の関与が想定されています。

腎性尿崩症

抗利尿ホルモン(ADH)は正常に分泌されているものの、尿を生成する腎臓の機能に異常があるため水分が再吸収されず過剰に排出されるタイプの尿崩症です。

主な原因は、遺伝子の異常によるものでX連鎖性潜性遺伝形式を示すタイプが先天性の腎性尿崩症の約90%を占めます。また、電解質異常(高カルシウム血症低カリウム血症)も後天性の腎性尿崩症を引き起こす大きな要素です。

一部の薬剤は抗利尿ホルモン(ADH)の腎臓へのはたらきかけを減弱させる作用を持つものもあり、副作用として腎性尿崩症を発症することがあります。

特に、リチウムは長期内服することで高頻度に腎性尿崩症を引き起こします。リチウムによる腎性尿崩症はリチウムの内服を中止しても腎性尿崩症は治らない(非可逆性)場合があります。

症状

尿崩症を発症するといずれのタイプも多尿(成人の場合1日3L以上)をきたすため、強い喉の渇きを自覚するようになります。体内から水分が失われるため、十分な水分補給を行わないと脱水に陥りやすく、低血圧やショック状態によりめまい、動悸などの症状を引き起こすことがあります。また、多尿が継続することで、水腎症や巨大膀胱など尿の排泄経路の異常を引き起こすことも報告されています。

特に中枢性尿崩症・腎性尿崩症ともに遺伝性のものは、胎児期から母体の羊水の増加など出生前から徴候がみられます。また、新生児期には嘔吐、便秘、発熱、成長の遅れなどがみられ、体から水分が失われることで体内の電解質(ナトリウム)の濃度が高くなり、けいれんを生じることもあります。適切な治療の開始が遅れると知的障害などの後遺症を残すことも少なくありません。

検査・診断

症状から尿崩症が疑われる場合は、以下のような検査が行われます。

血液検査、尿検査

血液や尿中の電解質の量を調べるために行われます。

尿崩症では体内に必要な水分がどんどん排出されていくため、血液中のナトリウムなどの濃度が高くなります。一方で尿は濃縮が起きず、薄くなるのが特徴です。

高張食塩水負荷試験

内分泌負荷試験の1つで、高張食塩水を点滴してそれに反応する抗利尿ホルモン(ADH)の分泌状況を調べる検査です。具体的には5%食塩水を決められた速さで120分ほど点滴し、その間の血漿浸透圧と抗利尿ホルモン(ADH)を測定します。

健康な方では、血漿浸透圧が上昇していくにつれて抗利尿ホルモン(ADH)も上昇しますが、中枢性尿崩症の方の場合、血漿浸透圧が上昇し続けても抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が増加せず、尿の濃縮が起こりません。また腎性尿崩症では抗利尿ホルモン(ADH)が健康な方と同じ反応を示しますが、尿の濃縮が起こりません。

水制限試験

最長で 6時間30分の間、一切の水分摂取をせずに定期的に尿量や体重、血液中の電解質の濃度を測定し、その後に抗利尿ホルモン(ADH)を投与して尿量や尿の濃さの変化などを調べる検査です。

中枢性尿崩症の診断に必要な検査であり、水分制限後に抗利尿ホルモン(ADH)を投与して尿量が減少し、尿が濃くなるなどの変化がみられる場合は中枢性尿崩症と診断されます。

遺伝子検査

遺伝子の変異による腎性尿崩症が疑われる場合は、原因となる遺伝子変異の有無を調べるために遺伝子検査が行われることもあります。

画像検査

中枢性尿崩症は脳腫瘍などの病気によって引き起こされることがあるため、発症原因を調べるためにCTやMRIなどを用いた画像検査が行われることがあります。

また、多尿が長期間継続することで水腎症や巨大膀胱など尿の排泄に関わる臓器に異常が生じることもあるため、状態を評価するためにこれらの画像検査が行われることもあります。

治療

尿崩症の治療法は発症原因によって異なります。

中枢性尿崩症の場合は、欠乏した抗利尿ホルモン(ADH)を補うため、 ADHと同様に水を体の中に保つ作用のあるデスモプレシンと呼ばれる薬の投与が行われます。

一方、遺伝子変異による腎性尿崩症は、厳格な減塩に加えて一部の利尿薬や非ステロイド系抗炎症薬を用いることで水分の排出を抑える治療が行われていますが、十分な有効性は立証されていません。根本的な治療はなく、脱水を予防するための十分な水分補給を継続していく必要があります。

予防

尿崩症の明確な予防法は確立されていません。しかし、腎性尿崩症はリチウムなどの薬の副作用として引き起こされることもあります。副作用として腎性尿崩症が報告されている薬剤を内服する場合は、多尿や喉の渇きなどの症状がみられた場合は速やかに主治医に相談することが大切です。

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