原因
尿崩症は、主に“中枢性尿崩症”と“腎性尿崩症”の2つのタイプに分けられ、それぞれ原因が異なります。また、それ以外に妊娠中にまれに起こる一過性の尿崩症もあります。
中枢性尿崩症
水を体の中に保つ作用を持つ抗利尿ホルモン(ADH)の分泌が欠乏することによって引き起こされる尿崩症です。
抗利尿ホルモン(ADH)は脳の下垂体と呼ばれる部位から分泌されるホルモンですが、欠乏する原因としては、頭部外傷、腫瘍、脳梗塞、脳出血、脳炎、髄膜炎などによる視床下部~下垂体の損傷が考えられます。一方で、遺伝的要因による発症が疑われるケースや原因がはっきり分からないケース(特発性)もあります。特発性中枢性尿崩症では自己免疫的な機序の関与が想定されています。
腎性尿崩症
抗利尿ホルモン(ADH)は正常に分泌されているものの、尿を生成する腎臓の機能に異常があるため水分が再吸収されず過剰に排出されるタイプの尿崩症です。
主な原因は、遺伝子の異常によるものでX連鎖性潜性遺伝形式を示すタイプが先天性の腎性尿崩症の約90%を占めます。また、電解質異常(高カルシウム血症・低カリウム血症)も後天性の腎性尿崩症を引き起こす大きな要素です。
一部の薬剤は抗利尿ホルモン(ADH)の腎臓へのはたらきかけを減弱させる作用を持つものもあり、副作用として腎性尿崩症を発症することがあります。
特に、リチウムは長期内服することで高頻度に腎性尿崩症を引き起こします。リチウムによる腎性尿崩症はリチウムの内服を中止しても腎性尿崩症は治らない(非可逆性)場合があります。
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