概要
高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が高くなる病気のことです。通常、私たちの血液中のカルシウム濃度(正確にはアルブミンで補正したカルシウム濃度)は8.5~10.2mg/dLが基準値とされていますが、それを上回る場合に高カルシウム血症と診断されます。
高カルシウム血症の原因は、副甲状腺機能亢進症、ビタミンD過剰、がん(多発性骨髄腫など血液疾患も含む)、寝たきりなど多岐にわたります。また、サルコイドーシスや結核など肉芽腫をつくる病気、そのほかのまれな病気でも認められることがあります。症状は倦怠感、食欲不振、吐き気、便秘、腹痛、喉の渇き、多尿などがみられますが、重症な場合では意識障害を起こすこともあり、適切な治療を行わないと命を落とすケースもあります。
血液中のカルシウム濃度が12mg/dL以上で、中等度以上の症状がある場合には薬物療法が行われます。
原因
高カルシウム血症は、血液中のカルシウム濃度が高くなる病気です。カルシウムは私たちの体に必要な電解質の1つですが、血液中の濃度が高くなる原因には以下のようなものが挙げられます。
副甲状腺機能亢進症
副甲状腺からは、腎臓や腸でのカルシウムの吸収を促進し、同時に骨からのカルシウムの放出を促進する作用を持つ副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌されています。副甲状腺機能亢進症は、通常は厳密に調節されているこのホルモンが過剰に分泌されることで血液中のカルシウム濃度が高くなる病気です。
がん
高カルシウム血症はがんによって引き起こされることがあります。
発症メカニズムには2つのタイプがあり、がんの細胞がPTHと似た作用を引き起こすタンパク質を過剰に産生することによって引き起こされるもの、骨転移によって骨が破壊されることでカルシウムが血液中に漏れ出すものがあります。前者は肺がん、乳がん、泌尿器・生殖器のがん、成人T細胞白血病などで起こりやすく、後者は肺がんや乳がんなどの骨転移、多発性骨髄腫などで起こりやすいとされています。
肉芽腫形成性疾患
サルコイドーシス、結核、クローン病など肉芽腫と呼ばれる特殊な組織を形成しながら進行する病気は高カルシウム血症をきたすことが知られています。
薬物
過剰なビタミンDの摂取、一部の利尿薬(サイアザイド系)、リチウムなどの薬の副作用として高カルシウム血症が生じることがあります。
寝たきりなど長期間の安静状態
長期間にわたって臥床した状態が続くと、骨吸収といって骨が溶けやすくなることで高カルシウム血症を引き起こすことがあります。通常の生活に戻れば骨の形成が促されるため高カルシウム血症は改善していくとされていますが、高カルシウム血症の原因として見逃されることが多いため、注意が必要です。
症状
高カルシウム血症は軽度な場合は無症状であることがほとんどです。
血液中のカルシウム濃度(補正カルシウム濃度)が12mg/dLを超えると倦怠感、易疲労感、食欲不振、集中力低下などの症状が出現し、さらに上昇すると吐き気、腹痛、便秘などの症状も出現します。また嘔吐や多尿などの症状が現れると、脱水が進行して悪循環となり、さらに血中カルシウム濃度が上昇することになります。血中カルシウム濃度が14mg/dLを超えると情緒不安定、錯乱、眠気など精神的な症状を引き起こし、意識を失うこともあります。また、血中カルシウム濃度が高くなると昏睡や不整脈、急性腎障害などを引き起こしたりして死に至るケースもあります。
検査・診断
高カルシウム血症が疑われるときは以下のような検査が行われます。
血液検査
高カルシウム血症の診断には必須の検査です。血清カルシウム濃度を測定するだけでなく、血液で結合しているアルブミン濃度、同時に調節を受けるリン濃度、血中カルシウム濃度を制御しているPTHなどのホルモン濃度や腫瘍マーカー、腎機能(尿素窒素やクレアチニン)、血球異常などを調べて高カルシウム血症の原因を検索します。
画像検査
高カルシウム血症は上述したようにさまざまな病気が原因となることが多いため、必要に応じて原因の鑑別のためにX線、CT、MRIなどの検査を行う場合があります。
治療
高カルシウム血症は症状もなく、腎機能障害なども伴わない場合は特別な治療をする必要はありません。高カルシウム血症を悪化させる要因(薬剤など)が分かっていれば取り除きます。
血清カルシウム濃度が12mg/dLを超えている場合や軽度の自覚症状がある場合は、等張食塩水やループ利尿剤の投与が検討されます。また、14mg/dLを超える場合や意識障害などがある場合は早急に血清カルシウム濃度を下げる必要があるため、上記の等張食塩水とループ利尿剤に加えて骨からのカルシウムの放出を抑えるビスホスホネート剤やカルシトニン、ビタミンDの作用を減弱するステロイドなどの投与が行われることもあります。
さらに緊急性がある場合や、腎臓や心臓の機能が悪く、大量の点滴が行えない場合などでは血液透析が検討されることもあります。
一方で、高カルシウム血症は上述したような病気によって引き起こされることが多いため、それぞれの病気の治療も同時に行われます。
予防
高カルシウム血症はさまざまな原因で発症するため、予防方法もそれぞれ異なります。高カルシウム血症を発症し得る病気がある場合は、定期的に血液検査を受けて血清カルシウム濃度の値が上昇していないかチェックし、それぞれの病気に対して適切な治療を進めていくことが大切です。
また、高カルシウム血症は長期間体を動かさずに安静状態で過ごすことで引き起こされることもあります。病気やけがなどで長期間の安静が必要な場合は、適度なリハビリを行って発症を予防する必要があります。
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