概要
高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が高くなってしまう状態を指します。血液中のカルシウムが多くなると、骨が脆くなったり、腎臓に結石ができたり、心臓や脳、腎臓のはたらきが悪くなる原因となります。
高カルシウム血症は、副甲状腺機能亢進症に伴って生じるもの、がんやビタミンDの過剰摂取、薬剤性なども挙げることができます。
高カルシウム血症に関連した自覚症状は、疲れやすい、食欲がないといったのものから、意識消失といった非常に重いものまで幅広く含まれます。治療方法は、原因や症状の現れ方によって異なります。
原因
高カルシウム血症とは、血液中のカルシウム濃度が高くなる病気ですが、副甲状腺機能亢進症もしくは、がん、薬剤性の3つが原因として頻度が高いです。
副甲状腺機能亢進症とは、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気ですが、副甲状腺ホルモンはカルシウムバランスにとても重要な役割を果たしています。血液中のカルシウムが下がるような場合には、副甲状腺ホルモンが分泌され、骨や小腸、腎臓にはたらきかけることでカルシウム濃度を上昇させるようにしています。副甲状腺機能亢進症では、副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている状態であり、常時カルシウムが高くなるよう方向づけられています。副甲状腺自体の異常からホルモンが大量につくられていることもありますし、それ以外の臓器が原因となって反応性に副甲状腺ホルモンが過剰につくられることもあります。
がんに関連した高カルシウム血症は、さまざまなメカニズムを挙げることができます。たとえば、乳がんや前立腺がん、肺がんなどにおいては骨に転移をしやすいことが知られています。骨に転移をきたす過程で骨が破壊され、骨の中に含まれるカルシウムが血液中に放出される結果、高カルシウム血症が生じます。また、がんの中には副甲状腺ホルモンと同じようなはたらきを示すホルモンをつくるがんが存在します。これらには、肺がんや腎細胞がんなどが代表的なものとして知られています。
また、寝たきりの状態も高カルシウム血症の原因となり得ます。寝たきりになると骨に対しての負荷が減少するため、骨が溶けるようになります。その結果、骨の中に存在するカルシウムが血液中に大量放出されることになります。
そのほかにも、ビタミンDやカルシウムの過剰摂取、薬剤、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、結核など)、遺伝性疾患(たとえば、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症)、ミルクアルカリ症候群なども高カルシウム血症の原因となります。特に高齢者や腎機能が低下していると、整形外科などから処方されるビタミンD
やカルシウム製剤が効きすぎることによる高カルシウム血症の頻度が高いため、定期的な血液検査によるチェックが重要です。
症状
高カルシウム血症の症状は、初期の段階では特徴的なものではなく、高カルシウム血症を想定しないと見過ごしてしまうことがあります。具体的な症状は、疲れやすさ、倦怠感、イライラ感、眠たい、食欲がない、便秘などがあります。高カルシウム血症の程度が強くなると、筋力の低下、多飲・多尿・喉の渇き、吐き気や嘔吐、腹痛などをみるようになります。さらに、情緒不安定からうつ病を疑われることもありますし、妄想、意識消失に至ることもあります。高カルシウム血症に関連して、尿路結石はよくみられる症状のひとつです。
高カルシウム血症と関連して不可逆的な腎機能障害が発症することがありますし、膵炎や胃潰瘍などが生じることもあります。また、不整脈に至ることもあります。
検査・診断
高カルシウム血症の診断は、血液中でカルシウムの濃度が高いことから診断されますが、その後も原因検索を目的して追加の検査が考慮されます。
高カルシウム血症を引き起こすものとして頻度の高いものは、副甲状腺機能亢進症です。類似疾患との鑑別も含めて、血液中のリンの測定、副甲状腺ホルモンや尿中カルシウム排泄量、ビタミンDの検索が必要になります。また副甲状腺の異常を確認するために、超音波検査やCTなどの画像検査が追加されることもあります。
そのほか、シンチグラムを用いて、実際に副甲状腺が過剰に活動しているかどうかを確認することもあります。そのほかの原因として、がんに関連した高カルシウム血症も重要になります。副甲状腺ホルモンと類似したホルモンががんからつくられていることもあるため、これを血液検査で確認することもあります。
また、がんの種類に応じて適宜画像検査や腫瘍マーカー、病理検査などが検索されます。そのほか、肉芽腫性病変では胸部に異常をきたすことも多いため、スクリーニング的な意味合いで胸部単純レントゲン写真を撮影することもあります。
治療
高カルシウム血症の治療は、カルシウムを下げるための対症療法、原因に応じた根本療法の2つに分類することができます。
対症療法としては、腎臓からのカルシウム排泄を促すために輸液や利尿剤の投与を行います。高カルシウム血症の程度が強い場合や腎機能が低下している場合には、迅速に対応することが必要になるため、透析が行われることもあります。
血液中のカルシウムは、骨から溶け出してきている部分に由来するものもあるため、この作用を抑制する薬が投与されることがあります。そのほか、ステロイドが使用されることもあります。
根本療法としては、高カルシウム血症を引き起こしている病気に対しての治療になります。副甲状腺機能亢進症であれば、副甲状腺に対しての手術が適応になることがあります。がんであれば、がんに応じて手術や化学療法、放射線療法が適宜選択されることになります。
「高カルシウム血症」を登録すると、新着の情報をお知らせします
関連の医療相談が10件あります
血液検査のカリウムの値が高い
先日の健康診断での血液検査のカリウムの値が、6.8でした。 血液検査をして頂いた病院で、結果を聞いた時、先生は全体的に特に異常はありません。と言う事でした。 しかし、家に帰って血液検査の用紙を見ると、チェックが入っており、また、Na、K、Ciの数値の横に、再検済みですと記入がありました。Na、Ciの数値は基準値内でした。 でも、カリウムの数値が異常に高いのが気になって、自分でネットで調べた所、カリウム値が5.0を超えると要治療と書いてあり、緊急性があり、心臓に関わる事のようで心配になりました。 もう一度受診して、説明を受けた方がいいのでしょうか。 一度、先生に結果で気になるところはありませんでした、大丈夫です。と言われているのに、また、聞きにいくのも失礼かと思い迷っています。 特に今のところ、体に気になる症状等はでてません。 カリウム値が高いとは、どういう状態ですか。 カリウム値が高い時に出る症状、気をつける事などありましたら合わせてお願いします。
多発性内分泌腫瘍症について
昨年の9月に尿管結石になり内視鏡で手術を受けました。その際に受けた血液検査で甲状腺に関する数値が異常なため詳しく調べるようにと内分泌科を紹介され受診していました。その後検査にて副甲状腺機能亢進症の診断を受けましたが。下垂体に関する数値?も調べることになりできもの(腫瘍)があるとのことで、多発性内分泌腫瘍症と診断を受けました。初めて聞いた病名です。 まずは副甲状腺を全て摘出する手術を受けるようにすすめられています。副甲状腺を切除しても、この病気は治らないのでしょうか?手術をしても良くならないのに手術を受けたほうがいいのでしょうか?身体に傷をつけるのが怖いというのが本音です。手術しなければどうなってしまうのかもわからず不安です。
爪の周囲左半身のチクチクする痛み
海外の途上国在住です。2ヶ月ほど前から両手の関節、手首に痛みを感じました。スマホ使いすぎかと思いましたが段々爪の周囲がチクチク痛みます。病院で血液尿検査をしたところビタミンDのあるべき数値が40に対して私がは5でした。注射と週一回の飲み薬で治療して行くことになりました。受診から4日たった今日は眉周辺、胸、お尻すべて左側が関節ではない場所もチクチクします。爪の変形変色はありません。何かアドバイスいただければ幸いです。
ピアノの練習をしていたら急に右の首筋がピクピクし出した
少し前にピアノの練習をしようと思い、以前から腱鞘炎なので、少しでも楽なようにと思い、左右小指をテーピングして、テープが残り少なかったので右手首上から肘までの間にもテーピングして練習していたら、急に右の前側の首の筋がピクピクし始めました。 もしかして適当にテーピングしたからかな?と思い、それを外しましたが、定期的に首の筋がピクピクします。 放っておいて大丈夫なのでしょうか? ピアノは割と難易度の高いものを弾いています。 よろしくお願いします。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。