インタビュー

脊椎損傷の検査と診断-情報を集め、多角的な視点で損傷部位を見極める

脊椎損傷の検査と診断-情報を集め、多角的な視点で損傷部位を見極める
朝本 俊司 先生

国際医療福祉大学三田病院・脊椎脊髄センター副センター長

朝本 俊司 先生

脊椎損傷の原因のほとんどは、交通事故を含めた転倒・転落などの「偶発的事故」です。これらの事故による脊椎の骨折や脱臼などが強く疑われる場合は、搬送時に二次的障害を起こさないよう注意すること、また、患者さんの声だけでなくあらゆる情報をもとに検査を行うことが大切であると国際医療福祉大学三田病院・脊椎脊髄センター副センター長の朝本俊司先生はおっしゃいます。この記事では、脊椎損傷の診断のためにどのような検査が行われているのか、引き続き朝本先生にお話しいただきました。

脊椎損傷を疑ったときは?

「安静」にすることが最重要

脊椎の骨折や脱臼は、適切な診断と治療を行うことで、大きな後遺症なく治すことができるものです。しかし、脊椎(骨)の内部を通る脊髄神経を損傷してしまうと、完全な回復は難しくなり、多くの場合何らかの障害がのこります。脊椎を損傷しているときには、続いて二次災害的に脊髄損傷が起こることも高率にありますから、脊椎損傷と明らかに診断できる場合や強く疑う場合には、医師は患者さんを可能な限り動かさないよう安静にしたうえで検査を組んでいく必要があります。

救急医の方もこういったことは熟知されており、搬送時には十分に固定の処置を行っておられますので、救急車が患者さんのもとに到着したあとの二次障害(二次災害的に起こる何らかの障害)はほとんどありません。

二次障害を防ぐために-救急車が来るまで、来たときに周りの人ができることは?

患者さんを強くゆする・動かすなどせず、救急車を待つことが大切

また、患者さんご本人もなるべく患部を動かさないよう意識していただくのがよいでしょう。

救急車が到着したら、事故を目撃した方も同乗して共に病院まで来ていただくことが理想的です。というのも、たとえば転落事故の場合、「どのような落ち方をしたか」はご本人にはわかりません。ですから、正しい診断のためには患者さんのお話以上に目撃証言が重要な情報になるのです。受傷時の状況を聞くことで、脊椎の中でも首や腰など、どの部位を損傷している可能性が高いかを推測することができ、迅速に検査すべき部位を見極めることに繋がります。

情報収集と同時に検査を行う-レントゲン検査とCTスキャン

目撃情報の収集と精密検査で損傷の可能性を徹底的に調べる

目撃情報を集めるのと同時に、患者さんご本人が痛いと訴えられている部位(首や胸椎など)を聞き、損傷の可能性がある部分を全て徹底的に検査します。

脊椎損傷の検査は、基本的にレントゲン検査とCTスキャンにより行っていきます。CT検査によりレントゲン検査では鮮明に写し出されない骨折線もみることができるため、この2つはワンセットで行われることがほとんどです。

※脊髄神経の損傷の有無はMRI検査で調べます。そのため、脊椎・脊髄損傷の疑いが強い場合には3つの検査を行います。尚、本記事は脊椎損傷に焦点を当てたものですので、骨折・脱臼の評価に使用されないMRI検査については割愛します。

患者さんの声だけにとらわれず、あらゆる可能性を考慮すること

脊椎を損傷している患者さんの多くは、全身に強い衝撃を受けたことにより他の部位も同時多発的に損傷しています(多発外傷・多発臓器損傷)。ですから、医師は患者さんが痛いと訴えている部位だけにとらわれず、あらゆる部位の骨や臓器の損傷も考慮に入れて検査し、正しい診断をして治療に臨む必要があります。そのためにも、周囲の方からの情報は重視すべきであり、また、医師側から患者さんに「この部位は痛くないですか」と問いかける姿勢も大切です。

このほか、血圧などのバイタルサインも診断の一助となります。たとえば、「首が痛い」と強く訴えられている患者さんの血圧が低下している場合には、頚椎の骨折だけでなく、血圧低下を招く腹腔内臓器損傷も併発していると考えるべきです。脊椎損傷に伴いやすい左記のような合併損傷については、記事5「脊椎損傷に伴う合併症-脊髄損傷や慢性疼痛」で詳しく解説します。