たはつがいしょう

多発外傷

最終更新日:
2020年08月31日
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2020/08/31
更新しました
2017/04/25
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概要

多発外傷とは、外傷によって体の複数の領域に重い損傷が生じている状態です。体の領域は、頭部・頚部(けいぶ)(首)・胸部・腹部・骨盤・四肢などに分けられます。このうち2つ以上の領域に損傷が起こる多発外傷は、交通事故などによって起こることが多いです。

複数の臓器に重い損傷を受けていることから、多発外傷は生命に危機がおよぶ状態といえます。外傷が発生する場所は病院の外であることが大半であり、一般の方々が素早く救急車を呼ぶことも重要です。

病院到着後は、損傷部位の確認だけではなく、意識状態や呼吸状態を保つための処置が行われます。多発外傷に対する治療には、複数の診療科の医師やスタッフが連携することが欠かせません。たとえば、救急科、整形外科、脳神経外科、消化器外科、麻酔科などの医療従事者が治療にあたります。緊急性を要する時期を乗り越えた後も、リハビリテーションや栄養管理、感染症対策などを徹底することが重要です。

 

原因

多発外傷は多くの場合、交通事故や転落などをきっかけとして起こります。外傷のときに体に加わる力は、多臓器に対して損傷を来すほどの大きなものであることが多いです。

症状

多発外傷では、意識状態や呼吸状態、血圧など、生命を維持するための機能に異常が生じることが多いです。

  • 意識がはっきりとしなくなる
  • 呼吸回数が増える
  • 血圧が低下する など

また、以下のように外傷が生じた臓器に関連した損傷がみられます

頭部の場合

頸部(首)の場合

  • 頸椎(けいつい)骨折
  • 脊髄(せきずい)損傷 など

胸部の場合

腹部の場合

肋骨損傷が多発すると、フレイルチェストと呼ばれる病態を示すこともあります。

  • 肝臓や脾臓、腎臓の損傷をきっかけとした大量出血
  • 腸間膜の損傷

胸部から腹部にわたる大動脈損傷や、四肢・骨盤部の骨折を来すこともあります。この場合、大量出血や機能障害を来すことがあります。
 

検査・診断

救急外来に運び込まれることが多く、第一にバイタルサイン(意識、血圧、呼吸)の確認が行われます。また体を頭部・頚部・胸部・腹部・骨盤・四肢などに分類して、各領域の状態の確認、内臓の出血の有無の確認も並行して行われます。救急外来で診療するときには、超音波検査を行い、心タンポナーデ血胸、腹腔内出血を素早く調べます。意識や呼吸、血圧の安定が図れている場合は、骨折や頭蓋内病変、胸部や腹部の臓器損傷程度を評価するために全身のCTが行われます。

臓器障害の程度を評価するときには、「Association for the Advancement of Automotive Medicine」と呼ばれるグループが作成している「Abbreviated Injury Scale;AIS」が用いられます。

AISでは、各臓器の損傷具合を、軽症である1から最重度の6までに点数付けします。AISで3以上のスコアとなった部位が複数箇所ある場合に、多発外傷と考えます。AISを用いることで、生命予後(生命が維持できるかどうかの見通し)を予測することもできます。生命予後を評価する方法は「Injury Severity Score; ISS」と呼ばれています。AISに加えて、血圧、意識状態、呼吸状態などの「バイタルサイン」、年齢、外傷機転などの情報をもとにして、生命予後をパーセントで評価します。

治療

バイタルサインを安定させるための処置が重要です。必要に応じて気管挿管を行い、人工呼吸管理を行います。また、血圧を安定させるために、輸液に加えて血液製剤の輸血も行うことがあります。

気胸血胸心タンポナーデなどが血行動態(血液の量と流れ方)や呼吸状態に悪影響を及ぼしていると判断される場合には、針を刺し空気や血液の排出を促します。
複数の臓器に損傷が及ぶ多発外傷では、どの部位に対してアプローチをすることで生命を救えるかを確認しつつ、治療方針を決定します。腹腔内出血が多い場合には、血管内治療で動脈閉塞術を行ったり、手術を行うことで出血部位をコントロールしたりします。頭蓋内で急性硬膜外血腫や急性硬膜下出血、外傷性くも膜下出血を来しているときには、手術を考えます。骨盤出血も大量出血につながることがあるため、早期の治療が求められます。

多発外傷は、損傷部位の状態を確認するだけでなく、どの程度その損傷が緊急性を要するかを判断することが重要です。この観点から、多発外傷では救急科、整形外科科、脳神経外科、消化器外科、麻酔科の医師など、複数科が関わる集学的な治療が必須であるといえます。
 

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