きゅうせいこうまくかけっしゅ

急性硬膜下血腫

最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

頭蓋骨のなかにある脳組織は、硬膜と呼ばれる硬い1枚の膜で保護されています。急性硬膜下血腫とは、典型的には頭部に対する非常に強い外力をきっかけに、脳の表面に存在する血管が損傷を受け、硬膜の下に(かつ脳の表面に)急速のうちに血腫(血液の塊)が形成される状態です。

外傷に伴う脳にダメージに加えて、血腫による脳の圧迫も生じています。血腫の原因となる血管損傷は、脳の表面に存在する小動脈や静脈、架橋静脈などが主体となります。

急性硬膜下血腫は高齢者にみられることが多いです。治療技術が進歩した現在においても、死亡率は60%以上と非常に高く、予後不良疾患のひとつです。積極的な治療介入を行ったとしても、社会復帰できる方は発症者のうち2割にも満たないと報告されています。また、社会復帰されても、何かしらの障害を抱えながらの生活を余儀なくされる方も多い疾患です。

原因

典型的な急性硬膜下血腫発生の原因は、頭部に対する外力によるものです。頭部外傷の受傷機転としては、交通事故、高所からの転倒転落、スポーツによる頭部外傷、けんかで殴られるなど、多岐に渡ります。

高齢者にみられることが多い疾患ですが、なかには小児の発生例もあります。その場合は、先の原因に加えて虐待に伴って発症していることがあります。特に乳幼児に対する暴力的な揺さぶりを契機として種々の外傷を生じることがあり、これを「揺さぶられっこ症候群」と呼びます。この揺さぶられっこ症候群の一症状として、急性硬膜下血腫が起こることがあります。

急性硬膜下血腫の発症危険因子としては、そのほかアスピリンやワルファリンと呼ばれる、血液を固まりにくくする薬剤も挙げられます。こうした薬を内服している方が頭部外傷を受けると、軽微なものであっても、出血のリスクが通常よりは高いです。

そのため、急性硬膜下血腫を容易に発症する危険性もあります。また、脳血管奇形や脳腫瘍髄膜腫など)からの出血が、急性硬膜下血腫の原因になることもあります。
 

症状

強い頭部外傷を機転として急性硬膜下血腫は発症することから、典型的には、受傷直後から意識障害が出ます。急性硬膜下血腫に伴う症状として、意識障害以外に、頭痛、吐き気・嘔吐、けいれん、めまい、麻痺、感覚障害などがあります。これら神経系に関連した症状は、すべての症例において出るわけではなく、年齢や受傷機転、患者背景など多くの因子が複雑に関与しています。
 

検査・診断

確定診断は、頭部CTを用いて行われます。典型的な画像所見では、頭蓋骨に接した部位(硬膜下にあたる部位)に三日月状の血腫(画像上は白色の部分として確認されます)を認めます。また、大脳表面における血腫の形成以外にも、大脳縦裂(大脳鎌と後頭・頭頂葉内側面との間)や後頭蓋窩に血腫が形成されることもあります。

血腫が形成されると、血腫により脳組織が圧迫を受けます。脳組織が圧迫を受けている状態を反映して、脳全体が本来ある位置からずれているように見えることもあります(mass effectと呼びます)。
 

治療

重症頭部外傷治療・管理のガイドラインによると、血腫に伴う神経症状や血腫そのものサイズ、脳組織に対しての圧迫所見等を参考にして、手術適応を決定することを推奨しています。手術適応になる急性硬膜下血腫においては、原則的には、緊急に開頭をし、血腫除去術及び止血術を行います。ただし、血腫のサイズがそれほど大きくない場合や、手術までの時間的猶予が少ないと判断される場合などには、開頭するのではなく、カテーテルを挿入して血腫を取り除くこともあります。

また、受診時に意識清明かあるいは、意識障害が軽度でかつCTにて血腫による影響が少ないと判断される場合には、注意深い観察のもと、保存的な経過対応となることもあります。

手術後には、脳浮腫や頭蓋内圧上昇に対する治療介入も必要です。脳の損傷が大きいと判断される場合もあり、これらに対応して術後低体温療法や脳圧降下剤の投与などが考慮されます。また、けいれんや感染症、再出血のリスクなどもあるため、こうした事象が発生しないか注意深く観察します。なお、急性硬膜下血腫を発症した患者さんの多くは、呼吸・循環動態が不安定な状態で受診します。そのため、初期対応として、呼吸や循環をサポートするような初期治療が必要です。

また、強い外傷を契機として発症していることから、頭部以外の部位にも外傷に伴う症状が併発することもあります。たとえば、気胸や腹部臓器の損傷(肝障害など)、骨盤骨折などです。急性硬膜下血腫に伴うもの以外にも、合併症そのものに対しての診断・治療介入を視野に入れた初期対応を行うことが、生命予後の決定において、とても重要です。
 

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