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インタビュー

スポーツ脳振盪―スポーツから脳を守る

スポーツ脳振盪―スポーツから脳を守る
前田 剛 先生

日本大学 医学部脳神経外科/麻酔科 准教授、日本大学医学部附属板橋病院 麻酔科 科長

前田 剛 先生

近年、スポーツによる頭部外傷の事故が後を絶ちません。スポーツによる脳振盪や重症な頭部外傷はどのようにして起こるのでしょうか。日本大学学部脳神経外科准教授の前田剛先生に危険性をうかがいます。

一見、軽症とも見える症状が、診断や本来の危険性の判断を難しくさせており、このスポーツ脳振盪に対する教育が急務であると考えます。

たとえば、スポーツで起こる脳振盪の場合、その場で意識を失って起き上がらないという症状はほとんどなく、意識があって会話ができる状態が約90パーセントです。脳振盪を起こした本人は会話ができるため、コーチなどに「試合に出られるか?」と問われると、「出られる」と答えます。しかしその時、「試合に出られないか?」と問えば「出られない」と答えていた可能性もあり、スポーツ脳振盪の本当の危険性は、「正確な健康状態が判断されず見逃されやすい」というところにあるのです。

急性硬膜下血腫は、頭への強い衝撃により脳を覆う硬膜と脳の間に在存する架橋静脈から出血を起こし、出血した血液が脳と硬膜との間に血液がたまる状態です。多くの柔道の死亡事故は、この急性硬膜下血腫によって起きています。また、柔道の事故のほとんどは4月~5月が多いという調査結果があり、初心者が受け身をとれずにいきなり後ろから倒れて頭を打つことが要因と考えられています。

スポーツによる頭部外傷に対しての教育がなされていない日本では、衝突事故などが起きてもすぐに試合を再開させたり、本人をそのまま試合に出場させ続ける傾向が少なくありません。このような現状から、日本脳神経外科学会では、医師が知る脳振盪の定義や正しい対処法をスポーツの現場や一般の方に啓蒙するため、下記のような提言を出しています。

スポーツ脳振盪の提言

1 スポーツによる脳振盪は、意識障害や健忘がなく、頭痛や気分不良などだけのこともある。

2 スポーツによる脳振盪の症状は、短時間で消失することが多いが、数週間以上継続することもある。

3 スポーツによる脳振盪は、そのまま競技・練習を続けると、これを何度も繰り返し、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫など、致命的な脳損傷を起こすことがある。

4 スポーツによる脳振盪を起こしたら、原則として、ただちに競技・練習への参加を停止する。競技・練習への復帰は、脳振盪の症状が完全に消失してから徐々 に行なう。

5 脳損傷や硬膜下血腫を生じたときには、原則として、競技・練習に復帰するべきではない。

ある年のサッカーワールドカップの試合で、ドイツの選手が接触して脳振盪を起こしました。選手は立ち上がって主審のところへ行き、「これは決勝戦か?」と尋ねたといいます。サッカーの主審には、脳振盪による退場を命じる権限がないため、すぐに試合を止めて選手をベンチに連れていき、脳振盪を指摘しました。ドクターが診察をしたところやはり脳振盪と診断されたため、ドイツの選手はそのままベンチに下がることになりました。

アメリカでは、プロフットボーラ―やボクサーなどにCTE(慢性外傷性脳症)が起こりやすいという調査結果があります。CTEは、慢性的に脳に障害を受けることで脳が萎縮する症状ですが、脳が委縮すると高次機能障害やアルツハイマーなどを発症するリスクが高くなるとされています。

 

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