海外ではスポーツ頭部外傷に対する意識が高く、教育システムが確立されています。また、学校や各団体から独立したアドバイザーが存在するため、日本よりも選手の試合への参加が厳しく制限されています。日本大学医学部脳神経外科准教授前田剛先生にお話をうかがいます。
日本ではスポーツ指導のライセンスもありませんしアドバイザーなどもいませんが、たとえば、アメリカンフットボールの場合、学校や特定の機関から独立したアドバイザーが必ずいます。シーズン開始前に、そういったアドバイザーによるレクチャーが開催され、競技に参加する本人とその親御さんは必ず受講しなければなりません。そこで競技中に脳振盪を起こす危険性や正しい対処法などを学び、危険性や対処法を十分理解したうえで「了承した」というサインをしなければそのスポーツに参加できないという仕組みです。
また、このアドバイザーは試合にも帯同し、脳振盪が起こった場合、「試合に出てはいけない」というジャッジをする権限を持っています。学校や特定の機関に属していないため、試合の勝敗を考慮することなく、ただちに選手の安全を守る判断をすることが可能なのです。
アメリカで、アメリカンフットボールにおける1シーズンの脳振盪の回数を調査した実験があります。ヘルメットにセンサーをつけ、衝撃を受けた回数を調査する実験です。大学生で1000~1200回、中・高校生で600~700回、小学生で200回未満という結果が出ています。アメリカンフットボールは9月~2月までの約5ヶ月間のみ開催されますが、17週で16試合と決められています。前述した回数は1シーズンの回数、つまり大学生の場合16試合で最高1200回となるので短期間にかなりの回数頭を打つことになります。
日本で一番脳振盪に対する対策が進んでいる競技はラグビーとアメリカンフットボールです。アメリカンフットボールの試合では、細かい禁止事項や退場ルールが設けられています。また、サッカーのFIFAや馬術連盟なども非常に厳しい規制があり、主審の権限も大きく認められています。こういった流れがもっと多くの方に認知されれば、無理なく事故なくスポーツを楽しみ、重大な事故も防げるのではないかと感じています。
日本大学 医学部脳神経外科/麻酔科 准教授、日本大学医学部附属板橋病院 麻酔科 科長
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