インタビュー

試合中に頭を打ったら―脳振盪の可能性を見逃さない

試合中に頭を打ったら―脳振盪の可能性を見逃さない
前田 剛 先生

日本大学 医学部脳神経外科/麻酔科 准教授、日本大学医学部附属板橋病院 麻酔科 科長

前田 剛 先生

この記事の最終更新は2016年04月26日です。

どんなスポーツにも危険がつきものです。私たちが安全に、できる限りリスクヘッジをしていくために、万が一頭を打ったらどのような対応をすればよいのでしょうか。日本大学医学部脳神経外科准教授前田剛先生にお話をうかがいます。

体が完全な状態でなくバランスも悪いため、本来元気な時であればできるパフォーマンスを同じようにやろうとしてもそれができず、新たな脳振盪につながることになります。これは、明らかな症状があっても軽い症状でも同様です。また、脳振盪が治っていない状態で再び脳振盪を起こすと、治りも遅くなりますし、重症の硬膜下血腫などもっと重症のケガを起こしやすいことがわかっています。

もし症状が軽い場合でも、SCATによるチェックで陽性所見がひとつでもあった場合は病院へ行きましょう。「ぶつけた痛み」と「脳振盪による痛み」を医師でない方が見分けるのも難しいので、「頭が痛い」という訴えがある場合も迷わず受診した方がよいと思います。また、所見がまったくない場合でも、たとえば試合中に誰かと誰かがぶつかった、ということを周りの人間が見ていて「頭を打った」という事実が明確であるならば、念のためその日は出場禁止にすることが望ましいでしょう。急いで病院に行く必要はありませんが、その場合も受診をおすすめします。

どのスポーツのどんな試合にも、常に脳外科の先生が帯同して正しい診断をするのは事実上不可能です。今のところ頭をぶつけた時には、フィールドにいるコーチや監督、保護者が判断しなければなりません。もっとも重要なことは、その場で「正しい診断をする」ということではなく、「脳振盪の可能性を見逃さない」ことです。疑わしい場合を広範囲に拾い上げて、適切な診断は脳神経外科医にしてもらうことにしましょう。

スポーツは、長い時間をかけて努力を重ねて取り組んでいる方が多く、どうしても試合に出場することに固執する気持ちが生まれます。事故が起きなければもちろん思い切りパフォーマンスをすべきですが、もし起きてしまった場合、医師の立場からの意見として「再開しない」「出ない」という決断をすべき時があると考えます。

また、脳振盪が起きたら徐々に復帰することが重要です。国際スポーツ脳振盪会議では、段階的な練習再開や試合復帰のために下記のようなプロトコールを作成しています。脳振盪後症候群の症状が完全に消えてから再開することを絶対原則とし、その後は下記の段階に沿って競技復帰を目指すことが望ましいと考えます。

段階的競技復帰のプロトコール

GRTP: Graduated return to play protocol

1 休息・活動なし(症状が消失し24時間経ってから始める)

2 軽度の有酸素運的運動:散歩やエルゴメーター

3 スポーツに関連した運動:ランニングなど

4 接触プレーの無い運動・練習、メディカルチェック(我が国では医師の受診)

5 接触プレーを含む運動・練習

6 競技復帰

各段階には24時間の間隔を入れ、脳振盪症状が出現しなければ次の段階へすすむ。症状が出現したら前段階に戻る。

スポーツ頭部外傷によって頭蓋内出血などが発見された場合、原則そのスポーツへの復帰は難しいと考えたほうがよいでしょう。現在のところ、競技復帰は可能か否か、また可能であればいつから可能かなどに関する明確な指針を示す研究は存在しませんが、急性硬膜下血腫の既往を持つ選手が、再度の頭部打撲で致命的な重症の急性硬膜下血腫を起こしたという報告があります。

しかし、先天性病変や脳出血などさまざまな頭蓋内病変に関しては、スポーツの種類や怪我の経緯もさまざまであり、禁止すべきかどうかを簡単に決定することは困難です。その場合、個々の症例で競技者と指導者、医療者が情報を精査し、その後の方針をどうするかよく話し合うことが重要です。

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