概要
脳しんとうとは、頭部に激しい衝撃が加わることで起こる、意識消失、混乱、記憶障害などの一時的な脳機能障害のことです。意識消失がないことも多く、頭痛、めまい、ふらつき、力が出ない、集中力の低下などが症状の中心となることがあります。
脳しんとうは一時的な症状ですが、繰り返すと習慣化することがあり、脳しんとう癖と呼ばれます。特に、接触を伴うスポーツでは脳しんとうから完全に回復する前にプレーを再開して再び頭部に衝撃を受けることも多く、脳しんとう盪を繰り返すケースが多くなります。脳しんとうを繰り返すと重い障害が残ったり、頭蓋内出血を起こしたりして、最悪の場合には死に至ることがあります。そのため、脳しんとうが疑われる症状が出たら競技を続けず、十分な回復期間をおくことが重要です。
原因
脳しんとうは頭部に激しい衝撃が加わることで起こります。特にスポーツが原因で起こることが多いです。
脳しんとうのきっかけとなりやすいスポーツにはラグビーやアメリカンフットボールなどの体の激しい接触や衝突が起こるスポーツのほか、サッカーのように接触して転倒することがあるスポーツ、バレーボールのように飛び込むプレーがあるスポーツなどがあります。
競技の種類にかかわらず、夏の暑い時期には脳しんとうのリスクが高くなるといわれています。
症状
脳しんとう発生時にみられる症状と、発生後数日から数週間にかけてみられる症状があります。
また、とても重要な点として脳しんとうから完全に回復する前に頭部に衝撃を受けることで、まれにセカンドインパクト症候群と呼ばれる合併症を生じることがあります。
脳しんとう発生時の症状
主な症状は頭痛、めまい、ふらつき、力が出ない、集中力の低下などです。意識消失がみられることもありますが、頻度は高くなく脳しんとう全体の1割ほどだといわれています。
そのほかに、混乱、記憶障害、視覚障害、頭痛、悪心・嘔吐、耳鳴り、嗅覚障害、味覚障害などが起こることもあります。
脳しんとう発生後の症状
脳しんとうの発生後数日から数週間にかけて慢性的な頭痛、短期的な記憶障害(同じ質問を何度も繰り返すなど)、集中力の低下、疲労、睡眠障害、怒りっぽくなる、悲しくなるなどの気分障害、光や音などの刺激に過敏になるなどの症状がみられることがあります。
これらの症状は通常数か月以内に消失します。
重大な合併症
脳しんとうから完全に回復する前に再び脳に衝撃が加わることで、致死的な脳の障害(急性脳腫脹)や急性硬膜下血腫など)が生じることがあります。このような合併症をセカンドインパクト症候群と呼びます。
検査・診断
通常は症状や発症時の状況をもとに医師が評価し、診断されます。脳しんとうの診断自体には特別な検査は必須ではありませんが、脳と頭蓋骨の間の血だまり(頭蓋内血腫)や脳の打撲(脳挫傷)などのより重篤な脳の損害が疑われる場合は、CTやMRIなどの画像検査が行われることがあります。
治療
脳しんとうの治療は、現場での応急処置と体と脳の安静が中心になります。
応急処置
何らかのスポーツがきっかけで脳しんとうが疑われる症状が現れた場合は、競技を直ちに中断し、安静にします。
意識障害や手足の麻痺、言語障害などの明らかな神経症状がみられた場合には、直ちに救急車で搬送する必要があります。
軽症に見える場合は脳しんとうの発生現場で自覚症状、記憶障害の有無、バランス感覚のテストを行ったうえで医療機関の受診が必要かどうかを判断します。
自覚症状
意識消失、けいれん、物忘れ、頭痛、頭部の違和感、吐き気、嘔吐、めまい、集中力の低下などがみられる場合は異常と判断します。
記憶障害
今いる場所、試合中であれば試合の状況(前半戦か後半戦かなど)、最近の試合の結果などの質問を行い、正しく答えられない場合は異常と判断します。
バランステスト
利き足を前に出し、利き足のかかとにもう一方の足のつま先をつけた状態で立ちます。両手を腰に置いて目を閉じた状態で姿勢を保たせたときに、姿勢を保持できなかったり、目を開けたりよろけたりするような動作が頻繁にみられる場合は異常と判断します。
安静
受傷後1〜2日間はテレビ、コンピュータ、スマートフォンなどの使用を控え、脳と体を休めます。
また、受傷後すぐには分からない脳の障害が生じている場合、突然症状が悪化することもあるため1人にならないようにします。
安静中は飲酒や運転を控えます。また、薬の中には症状を悪化させるものや、脳しんとうの合併症の発見の妨げとなるものがあるため、医師の処方以外の薬を使用しないようにします。
回復後の注意点
脳しんとうの症状が完全に消失したら競技・練習を再開することもできますが、症状は数週間以上持続することがあります。
少しでも脳しんとうの症状が残っているとセカンドインパクト症候群の危険性が高くなるため、特にラグビーやサッカーなどの接触機会の多いスポーツでは医師の診察を受けたうえで再開することが大切です。脳しんとうを過去に経験したことのある選手のほうが再度脳しんとうを経験するリスクが上がるため注意が必要です。
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