
転んだり階段で滑ったりしてしまい、頭を打ってしまうことはしばしばあります。頭を打ってしまったときに注意しなければならないのは、どのような症状なのでしょうか。日々救急の第一線で多くの患者さんに向き合い、アメリカでも活躍された国際医療福祉大学成田病院 救急科部長の志賀隆先生にお話をお伺いしました。(なお、子どもの場合については別記事をご参照ください。)
頭を打ったときに特に怖いのは、頭蓋内出血(頭の中の出血)で、緊急の脳外科的な治療が必要になることもあります。「打ち方」と「症状」に注意しながら頭蓋内出血のリスクを考えていきます。
一般的には、頭を打った時に大きなエネルギーがかかっている場合が危険です。「カナディアンCTルール」という基準などを参考に考えると、受診すべきなのは以下のような場合です。
また、お酒を飲んでいる人には特に注意が必要です。酔っ払って寝ているだけなのか、本当に意識がなくなってしまっているのかの区別がつかないからです。東京ベイ・浦安市川医療センターの場合、お酒を飲んで酔っ払っている人に対しては、ほとんどの場合頭をCTで検査します。
以下のような場合は、危険であると考えてください。
「タンコブがあったら大丈夫」という話がなぜか広まっていますが、都市伝説です。タンコブがあるということは、頭を打ってしまったことに間違いないので、「タンコブがあるから大丈夫」ということには何の根拠もありません。その中でも、特に側頭部のタンコブは気にすべきです。頭の骨の硬さの順番は「1:前頭部、2:後頭部、3:頭頂部、4:側頭部」です。人間は前を向いて歩きますので、きちんとガードできるように、前の骨が一番硬くなっています。
ただし、それでもタンコブによる危険性の上がり方は軽いと考えるべきです。
頭を打ったあとのめまいはほとんどの場合、脳震盪です。つまり、「脳震盪になるぐらい強く打っている」ということですから、めまいがあったら受診を検討するべきです。
危険な可能性があります。頭を打って、さらに「頸椎損傷」をしている可能性もあります。頚椎損傷は頸椎という頸の骨がダメージを受けることで、それにより脊髄の神経が損傷すると全身麻痺になる危険性もあります。頸の強い痛みに加え、麻痺や手足のしびれがあるときには救急車に来てもらいましょう。絶対に頸をむやみに動かしてはいけません。
鼻血自体よりも「血の混じった薄い鼻水のような液体」が出ていると危険です。「髄液性鼻漏」の可能性があります。髄液性鼻漏は「脳や脊髄のまわりの髄液」が頭を打ったことなどにより鼻に出てきてしまっている状況です。
救急外来(救急科)、脳神経外科に受診をしましょう。
頭を打った時の検査は、やはり頭部のCTです。しかし、被曝(特に子ども)に配慮する必要があり、どのようなときにCTをとるべきなのかは議論があり、カナダやアメリカなどで様々な研究があります。
先述した危険な症状である「意識を失う、麻痺、複数回の嘔吐、頭の打ちかた」などのチェックにより、頭蓋内出血(頭の中の出血)などの重篤な状態が起きてしまっているかどうかを概ね見積もることができます。見積もるときには様々なルールがあり、年齢によって異なります。そのルールを参考にしながら身体診察などを合わせて、CTをとるかどうかを決定していきます。
CTなどで異常が発見された場合には入院となります。しかし、CTに異常がないときにも入院することがあります。具体的には、以下のような場合です。
1:開眼2:言語反応3:運動反応
4点:自発的に開眼する5点:見当識の保たれた会話6点:命令に従う
3点:呼びかけで開眼する4点:会話に混乱がある5点:合目的な運動をする
2点:痛み・刺激を与えると開眼する3点:混乱した単語のみ4点:逃避反応としての運動をする
1点:開眼しない2点:理解不能の音声のみ3点:異常な屈曲反応をする
1点:なし2点:伸展運動をする
1点:全く動かない
※3つの反応スコア―の合計点(3~15点)で判断する
CTなどの画像検査では脳にはっきりとした異常がない場合でも、脳がダメージを受けていることがあり、これを脳震盪と言います。頭を打ったあとに頭痛・吐き気がある、または集中できない、言葉がなかなか出てこない、情緒不安定、記憶障害といった症状がある場合には危険です。
特に、ラグビーやサッカーなどコンタクトの激しいスポーツをやっている方が頭を打った後に意識障害を起こしていた場合は、要注意です。プレーには基本的に戻らない方が良いと考えましょう。これは、もう一度頭を打ってしまうと、「セカンドインパクトシンドローム」という非常に危険な病態を引き起こすためです。
セカンドインパクトシンドロームは、頭を打ったあとに全体的に脳が腫れ上がってしまうことを言い、非常に致死率が高いです。そのため、運動選手に最初の脳震盪の症状が残っているとき、例えば頭が痛い、若干ぼーっとしているときにはプレーに戻らせてはいけません。
記事1:「怖い」「危険な」頭痛について知っておくべきこと-救急受診の必要性
記事2:「怖い」「危険な」頭痛の原因―原因疾患とその症状の特徴は?
記事3:「頭を打ったとき」どう対処する?―大人の場合
記事4:「頭を打ったあと」時間が経ってから注意すべきこと―大人の場合
記事5:「子どもが頭を打ったとき」どう対処する?
記事6:「子どもが頭を打ったあと」時間が経ってから注意すべきこと
関連の医療相談が13件あります
後頭部のドクドクとした違和感。
7月の初旬に学校の体育でサッカーをしていて、転倒してしまい、頭の側部から後頭部にかけてを地面(人工芝)に打ってしまいました。意識障害はなく、すぐに立ち上がりプレーも再開できたのですが、少し時間経ってから、頭が一日中揺れている、少しの倦怠感、勉強しようと集中しようとしても、あまり手につかず、なので近くの病院でMRIを撮ってもらい軽い脳震盪と診断されました。それから2週間して症状はなくなりました。ですが11月1日、おなじく、授業でバスケをしていた時、相手ともつれて、相手の膝が僕の後頭部に当たりました。その時も意識障害はなかったですが1分から2分程度床に倒れ込んでいました。 またMRIを撮ってもらい脳震盪(脳自体異常なし)と診断されたのですが、2日、3日経ってから明らかに前の脳震盪とは違う、後頭部の違和感が出始めました。朝起きてから夜寝るまでのドクドクという血管が出てしまうような違和感(痛みではないです)仰向けになり後頭部を触ると明らかに何かがドクドクと振動していて怖いです。そして前の脳震盪よりも倦怠感が非常に強く、まるで後ろに引っ張れているような感じもあります。 もう三週間以上頭を打ってから経っていますし、来年2月には大学受験も控えているので、勉強したいのにできない、倦怠感で精神的にも参ってしまっています。
右の側頭部の脳震盪
1週間ほど前に野球でブルペンから飛んできた硬球ボールが右の側頭部に当たってしまって救急車で運ばれました。ですがCTとかには異常はなく脳震盪と診断されました。ですが2,3日後に急に吐き気と低体温になってしまってもう一度受診してCTを撮ってもらったのですが異常はなく大丈夫だろうと思ってしまいその2日後に練習に行きました。復活してから2日後の練習終了と同時に体調が悪くなり低体温や吐き気が起きてしまいました。これはどこかおかしいですか?病院にもう一度行った方がいいんですか?
右首を打ち付けた
寝ようと横になった時に、自分の体の位置がずれていたようで、ベッドのヘリに、右首の後ろをぶつけてしまいました。20分くらい前の1140くらいのことで、患部が痛いのは仕方が無いのですが、頭がガンガンします。頭の痛みは、おでこの辺りだったり右だったり左だったり、位置が動きます。 眠いのは時間のせいでしょう。吐き気や手足のしびれ等もないので、このまま寝ようと思いますが、翌朝以降、どのような状態であったら病院に行ったらいいとか、気をつけることがあったら教えてください。
検査の内容から可能性のある病名を知りたい
MRIで、脳に異常があり、安静時脳血流定量(IMP非採血)をします。その結果によっては、造影CT頭部CTA.CTPをすることになるそうです。これらの検査をするというのは、どういう病気が予想されるのでしょうか?宜しくお願い致します。
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