お子さんが転び、頭を打ってしまうことはしばしばあります。子ども、特に乳幼児は大人と違い、症状を自分の言葉で説明することができないため、保護者が注意して見てあげなければいけません。頭を打ってしまい、病院に受診したものの入院にはならずに無事に家に帰宅することができたとき、帰宅後にはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。また、幸いにも軽傷で病院に行かなかったときには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。日々救急の第一線で多くの患者さんに向き合い、アメリカでも活躍された国際医療福祉大学成田病院 救急科部長の志賀隆先生のお話をお伺いしました。
「子ども」という範囲は広いですが、この記事ではおおむね小学生以下を対象とします。また、子どもといっても2歳以上と2歳未満では大きく異なります。特に、まだ自分自身で状況や症状を説明することができない乳幼児は保護者の方が注意深くみてあげる必要があります。(なお、大人の場合については別記事をご参照ください。)
頭を打ったあと12〜24時間までは運動を控え、自宅で過ごしましょう。風呂については実はまだ定まっていません。入ってよいのか、ダメなのかという研究がなく、なんともいえないところです。東京ベイ・浦安市川医療センターの場合、帰宅する患者さんには特に衛生上の制限は設けていません。
また、CTなどの画像検査をした上で、脳に出血などのはっきりとした異常がない場合でも、脳震盪を起こして脳がダメージを受けていることがあります。頭を打ったあとに頭痛・吐き気・集中できない、言葉がなかなか出てこない、情緒不安定、記憶障害などの症状がある場合には、脳神経外科を受診しましょう。症状が残っているときに再度頭を打ってしまうと非常に危険な状態である「セカンド・インパクトシンドローム」(脳震盪後遺症候群)を引き起こすことがあります。これは致死的になります。
帰宅後でも、以下のような症状が出た際には病院を再度受診しましょう。
子ども、特に乳幼児の場合はまれに時間が経ってから頭蓋内出血(頭の中の出血)を起こすこともあります。前項で述べた症状がないか、十分注意してください。その他には、大人と同様に以下の病気に注意が必要です。
特に眉部外側(眉毛の外の部分)を打ったときには、視神経に影響をおよぼしてしまうことがあります。視力の低下や視野に異常が出た際(物の見え方がおかしい場合)にはすぐに眼科を受診してください。
頭部を打った後数週間は症状がないものの、1~3ヶ月してから頭痛や嘔吐、片麻痺、けいれん、しびれ、失語(言葉がうまく話せない)、意欲の低下、認知症症状、歩行障害などが現れることがあり、注意が必要です。年齢によって症状の出方が異なります。
記事1:「怖い」「危険な」頭痛について知っておくべきこと-救急受診の必要性
記事2:「怖い」「危険な」頭痛の原因―原因疾患とその症状の特徴は?
記事3:「頭を打ったとき」どう対処する?―大人の場合
記事4:「頭を打ったあと」時間が経ってから注意すべきこと―大人の場合
記事5:「子どもが頭を打ったとき」どう対処する?
記事6:「子どもが頭を打ったあと」時間が経ってから注意すべきこと