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やけどで水ぶくれができた時は破っちゃダメなの?市販薬を使ってもよいの?

やけどで水ぶくれができた時は破っちゃダメなの?市販薬を使ってもよいの?
志賀 隆 先生

国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生

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やけどは熱によって皮膚や粘膜が傷ついた状態を指し、医学的には“熱傷(ねっしょう)”といわれます。軽いやけどの場合は放置されることもありますが、損傷した皮膚の深さによっては手術が検討されるなど、適切な治療を行う必要があります。

主な症状には痛みや赤み、水ぶくれなどが知られていますが、なかでも水ぶくれが生じた場合はどのような対処が必要なのでしょうか。本記事では、水ぶくれが生じたやけどをテーマに、その深度や対処法、病院で行われる治療までを詳しく解説します。

やけどで水ぶくれが生じた際は自己判断で破いたりせず、まずは病院を受診することを検討しましょう。

なぜなら、水ぶくれの液体の中には傷を修復するはたらきを保つ成分が入っているほか、水ぶくれがあることによって傷に細菌などが入ることを防ぐ効果が期待できるためです。仮に勝手に潰れてしまった場合も、蓋となる皮膚は剥がさずにガーゼなどで保護をして速やかに病院の受診を検討するようにしましょう。

病院では水ぶくれの中にが溜まっている場合や、水ぶくれの中の水分が多すぎて圧力が高い(パンパンになっている)場合などに、水ぶくれを潰し中身を出す処置を行うことがあります。ただし、この処置は自分で行うと細菌が入りやすく、傷が悪化することもありますので自分で行うことは控えましょう。

市販薬を使用すると、診断時にやけどの評価が難しくなり、その後の治療の妨げになる可能性もあります。そのため、自己判断で市販薬を使用するのはやめましょう。また、アロエの葉を患部に当てるなどの民間療法やネット上の誤った情報もありますが、これによって傷が悪化するという事例も実際にあるため、まずは冷やして皮膚科を受診することを念頭において行動しましょう。

やけどをした場合は水ぶくれの有無や、傷の深さ、原因(熱湯・油など)に限らず、まず冷やすことが非常に重要です。冷やすことでやけどの進行や痛みを抑えることができるため、必ず冷やすようにしましょう。やけどの進行や傷あとを最低限にするためには、冷やした後はできるだけ早く皮膚科を受診することが重要となります。

具体的な冷やし方のポイントと注意点は以下のとおりです。

冷やす際に使うものは水道水でも問題ありません。やけどした部分や年齢によっても異なりますが、基本的には15〜30分程度、指先や脚などの場合は1時間程度冷やすとよいといわれています。

冷やす際の注意点は、家庭や職場では衣服を脱がずにそのまま冷やすことです。慌てて衣服を脱ぐと傷ついた皮膚が剥がれたり、すでに水ぶくれができている場合は破れて痛みが強くなったりすることがあるので注意しましょう。

また、やけどの範囲がある程度広い場合は、衣服の外のやけどに気を取られて、衣服の下のやけどを見逃さないようにしてください。そのほか、やけどした部位は腫れることがあるため、身に着けているものを後々外せなくなる可能性もあります。そのため、指輪や時計などのアクセサリーは早めに取っておくようにしましょう。

やけど(熱傷)は損傷した皮膚の深さによってI度熱傷〜III度熱傷に分類され、状態ごとに適切な治療も異なります。

水ぶくれが生じている場合は浅達性II度熱傷〜深達性II度熱傷に該当し、できるだけ早く皮膚科を受診して適切な治療を受ける必要があります。また、水ぶくれは生じていないものの皮膚が白や黒に変色するIII度熱傷の場合も同様です。一般的にII度もしくはIII度熱傷の範囲の合計が10〜20%を超えるようになると入院が検討されます。一方、やけどで水ぶくれが生じていないI度熱傷の場合は、治療をしないでも治るとされています。

I度熱傷:皮膚表面(表皮)に生じたやけど

赤みやむくみが生じ、強い痛みも伴うものの治療を受けないでも数日で治り、傷あとも残らないとされています。なお、日焼けもI度熱傷に含まれます。

浅達性II度熱傷:表皮の下の真皮の浅い部分にまで達しているやけど

赤み、むくみのほか、水ぶくれも生じ鋭い痛みを伴います。しかし、治療を受けることで1〜2週間程度で治り、傷あとも残らないことが一般的です。

深達性II度熱傷:真皮の深い部分にまで達しているやけど

患部が白っぽくなり、赤み、むくみ、水ぶくれが生じるほか、体毛や汗腺(かんせん)、神経も障害されるため知覚が麻痺し、浅達性II度熱傷よりも痛みを感じにくいとされています。治療を受けることで3〜4週間程度で治るものの傷あとが残ることもあり、手術が検討される場合もあります。

III度熱傷:真皮の下の皮下組織まで達しているやけど

知覚神経が障害されているため痛みがなく、水ぶくれも生じません。この場合の皮膚は、白色または黒色に変化することが特徴です。治療を受けても治るまでに1か月以上かかり、手術が必要となるケースが一般的です。

水ぶくれが生じたやけど(浅達性II度〜深達性II度)の場合、病院で行う治療では治癒を目的に傷口が湿った状態を保つ必要があり、ワセリン軟膏を塗るのが基本となります。さらに、“創傷被覆材(そうしょうひふくざい)*で傷口を覆うこともあります。また、やけどの広さや深さによっては傷を保護する目的で抗生物質を外用することもあります。

浅達性II度の場合はこのような治療を行えば1〜2週間程度で治り、傷あとも残らないことが一般的です。一方、深達性II度の場合は治療が適切であっても治るまでには1か月以上かかり、傷あとや皮膚のひきつれが残ることがあるとされています。

*創傷被覆材:傷口を覆う材料のことで、治癒するための環境を整える 

やけどは放置するとより深いところまで進むことがあり、進行すればするほど治療内容が複雑になったり、治っても傷あとが残ったりしやすくなります。特に水ぶくれができている場合は浅達性II度〜深達性II度に分類される状態です。浅達性II度であれば治療によって1〜2週間程度で治り傷あとも残らないことが一般的ですが、深達性II度に達していれば治療を受けても傷あとが残る可能性が高いといわれています。さらに進行するともっとも重度であるIII度熱傷に達する可能性もあるため注意が必要です。

やけどの深度の判断は難しく、治療が遅れてしまったり、傷口からの感染リスクが高まったりするため、軽いやけどであっても気になる症状がある場合は放置せずに皮膚科や形成外科(時間外なら救急外来)の受診を検討しましょう。

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