インタビュー

子どもがやけどをしてしまったとき すぐに見るべきポイントは何か

子どもがやけどをしてしまったとき すぐに見るべきポイントは何か
池山 由紀 先生

あいち小児保健医療総合センター 救急科医長

池山 由紀 先生

この記事の最終更新は2016年05月25日です。

子どものやけど(熱傷)は0~1歳児に比較的多く見られる事故(傷害)で、ほとんどの原因が味噌汁やスープなどの熱湯だといわれています。子どもがやけどをしてしまった場合、最も大事なことは迅速に処置を施すことだといいます。また、やけどの範囲や部位によっては医療機関で特別な治療が必要なこともあります。子どもがやけどをしたとき、まずどこを見てどう対応すればよいのか、あいち小児保健医療総合センター救急科医長の池山由紀先生にお話しいただきました。

やけどは、受傷した深さによって大きく4段階に分類されます(下表参照)。実際の場面では、救急車が到着する時間までには「やけどの深さ」がある程度決まるため、これに伴い重症度も決まってしまいます。ですので、それまでに「すぐに」冷やすことが大事です。

子どもがやけどで苦しんでいるのを見たとき、気が動転してしまうのも無理はありません。しかし、重要なのはできる限り早くやけどしてしまった部位(患部)を流水でしっかりと冷やすことです。救急車を呼ぶべきかなどを考える前に、まず患部を冷やしましょう。子どもが衣服を着ていれば、その上から冷やして構いません。

子どものやけどの原因で最も多いのは、液体(熱湯や味噌汁、スープなど)によるやけどです。患部を冷やすときは、冷やしすぎて低体温にならないように注意しましょう。軽症のやけどの場合は冷やすだけで治まることもあります。ただし、外陰部のやけど、関節のやけど、気道(空気の通り道)のやけどなどの場合は特別な治療が必要となるため、必ず病院を受診します。

外陰部は尿や便などが付着しやすいため、感染症にかかる可能性が他の部位より高まります。関節のやけどでは、関節拘縮(かんせつこうしゅく:関節が曲がったままで治ってしまうこと)の可能性が高まります。

また、火事で熱気を吸ったり、熱い液体を口に入れたことで気道にやけどを負った場合は、呼吸機能に影響が及ぶ可能性や、火事で有毒なガスを吸っている可能性があります。以上の理由から、外陰部・関節・気道のやけどの場合は必ず病院で処置を受けましょう。特に火事の際熱気や煙を吸った可能性のあるときや、顔をやけどしているとき、息苦しそうにしているときは急いで受診してください。

やけどの深さは、受傷した皮膚の症状により以下の4段階に分類されます。やけどの直後では受傷の深さを判断しかねることが多く、しばらく経って初めて、深さが確定できることもあります。

臨床症状による深度分類

分類

臨床症状

I度熱傷

表皮熱傷ともいい、やけどした部分の皮膚が赤くなる。

痛みを伴うが瘢痕は残らず、数日で治る。

浅達性II度熱傷(SDB)

水疱(水ぶくれ)ができ、真皮(皮膚の表面よりさらに下)は赤くなって痛い。
通常1~2週間で上皮化し、瘢痕が残ることはまれ

深達性II度熱傷(DDB)

水疱(水ぶくれ)ができて底の部分の真皮は白くなる。

3~4週間程度で上皮化するが、瘢痕やケロイドを残す可能性が高い。

III度熱傷

皮膚全層が壊死しており、皮膚の色は黒色、褐色または白色。

完全に皮膚が炭化したやけどもここに分類される。

受傷部位の周りから上皮化が開始されるが、治癒に至るまでは3か月以上かかることもあり、瘢痕が残る。範囲によっては皮膚移植が必要なこともある。

水疱(水ぶくれ)はできず、痛くない。

子どものやけどの重症度を判断する際、前述したやけどの深さだけでなく、やけどの面積が体の表面積の何%にいたるかも考慮します。表1のⅡ度熱傷の面積が体表の10%以上の場合は基本的に入院が必要です。子どもをご自身で病院に連れていくことが困難ならば救急車を呼びましょう。

では、体表の10%とはどの程度の面積でしょうか。これを説明すると、体幹(頭・首・手足を除いた部分)をお腹側と背中側に分けた場合、片面のおよそ半分程度の範囲です。たとえば、背中の半分以上をやけどしてしまったときは10%以上と判断でき、幼小児の場合は救急車を要請する必要があります。

とはいえ年齢によって基準は変わりますし、緊急時に子どもが何%の面積にやけどを負ったか判断するのは困難でしょう。

ご自身では対応できない・やけどがどの程度の範囲に及んだかわからない・子どもが苦しんでいるなどの場合や、前述した火事による顔、気道のやけどの場合は、範囲に関わらず救急車を呼んでかまいません。

熱傷面積算定法より
熱傷面積算定法より

やけどの重症度は、前述した「深さ」と「面積」を合わせて判定します。子どもでは、Ⅱ度熱傷とⅢ度熱傷の面積が10%以上、もしくはⅢ度熱傷の面積が2%以上であれば中等症以上として扱います。中等症、重症のやけどは入院治療を基本とします。もっと少ない面積でもやけどの場所によっては入院治療となります。同じ面積割合でも、大人の基準より子どもの重症度は高く評価します。

やけどした箇所をしっかりと冷やして、痛みや赤みが落ち着くまで様子をみます。

また、受傷した場の状況を詳しく教えていただくことも、長期的な目で見ると重要です。たとえば、蒸気がたくさん出る炊飯器に手をかざしてやけどをした場合、医師がその事実を報告することで「このような事例が再発しないためにも蒸気の出る炊飯器の製造を減らしていこう」という方向に社会が動く可能性があるのです。社会全体でやけどという事故(傷害)を予防するために、やけどをした状況もぜひ教えていただきたいと思います。

また、子どもの持病、飲んでいるお薬、(3又は4種混合の)予防接種の状況なども伝えてください。

 

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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