
子どものやけどは大人のやけどよりも重症化する可能性が高く、受傷部位や面積によっては集中治療も含めた医学的処置が必要なケースもあります。一方で、程度が軽ければ、医師の指導をしっかりと受けつつ自宅でのケアも可能です。子どものやけどの治療の流れを、あいち小児保健医療総合センター救急科医長の池山由紀先生にお話しいただきました。
やけどの治り方は、記事1『子どもがやけどをしてしまったとき すぐに見るべきポイントは何か』で述べたやけどの深さによって異なります。
Ⅰ度熱傷は表皮熱傷ともいい、やけどした部分の皮膚が赤くなり痛みがあります。水疱(水ぶくれ)はできず、数日で治ります。
浅達性Ⅱ度熱傷は、水疱(水ぶくれ)ができ、水疱の底の皮膚(真皮)が赤くなって痛みを伴うものです。この場合は、適切な治療を行えば1~2週間で上皮化(じょうひか)し、ほとんどのケースで瘢痕(はんこん:傷跡)も残りません。
深達性Ⅱ度熱傷は、水疱(水ぶくれ)ができて底の部分の真皮がさらに下の方まで損傷し白くなっているものです。ここまで深いやけどの場合は、医師のもとで治療を受けても上皮化まで3~4週間程度を要します。また、のちに受傷部分が瘢痕や瘢痕拘縮(ひきつれること)になる可能性も高くなります。
Ⅲ度熱傷は、皮膚全層が壊死してしまい、皮膚の色は黒色や褐色、または白色となるものです。この場合に水疱はできず、知覚神経まで侵されているので痛みはほとんどありません。Ⅲ度熱傷は通常治癒するまで1ヶ月以上かかりますが、面積が広いと入院して皮膚移植を行う必要があることもあります。治癒後も長期的なケアが欠かせません。
また、治療中に患部が感染(細菌によって化膿する)が起こると治癒までに時間がかかるだけでなく、瘢痕を残す可能性も高くなってしまいます。
先ほど述べた上皮化とは、やけどした部位から滲出液(炎症が起こったときに分泌される液体で、傷が治癒するための成分を多数含む)が出なくなり、皮膚の再生が完了した状態です。上皮化すると、受傷部位が他の皮膚と同じく外からの侵入をブロックできる状態となるため、被覆材で患部を覆う必要がなくなります。
受傷部位が明らかに狭く浅かったり、明らかに広範囲で重症であるなど、確実に重症度が判断できる場合もあります。しかし、最初の時点ではっきりと範囲や深さが判断できない場合も多くあります。特に、Ⅱ度のやけどでも浅達性なのか深達性なのかといった詳細の分類は、治療しながら経過観察が必要であり、回復速度に応じて確定診断をします。
先ほど、浅達性Ⅱ度熱傷はおよそ1~2週間で上皮化することを述べましたが、治療を進めながら2週間程度経って上皮化するか否かで最終的な判断を行います。つまり、2週間で上皮化しなければ、このやけどは深達性Ⅱ度熱傷以上であると判断するのです。
深達性Ⅱ度熱傷以上ならば瘢痕が残る可能性がありますが、特に小児の場合、想定していたより綺麗に治るケースもよく見受けられます。なるべく目立たないようにするためにも、後述する紫外線対策は重要です。
また、関節にやけどを負うと拘縮(こうしゅく:関節が曲がったままで傷が治ってしまい戻らなくなる)してしまうことがあります。関節が拘縮すると、指が伸ばせなくなるなど日常生活に支障をきたし得るため、手や肘、膝といった関節をやけどした場合は、軽症であっても病院への受診が必要です。
記事4『重症のやけどに対する治療の流れ 専門施設との連携を行い迅速な治療を行う』で述べるような重症のやけどでなければ、医療機関での治療と、家庭でのケアとの差は大きくありません。医療機関の処置でも、まずやけどした部位を洗浄して清潔にします。その後、一般的には湿潤療法(しつじゅんりょうほう)という治療法を開始し、感染に注意しながら皮膚の治りをみていきます。ただし、治療の細かい部分は医療機関によって異なることもあるため、担当の先生から説明を受けてください。
やけどの具体的な治療法は様々なものがあります。症状や部位によって細かな処置方法は変わりますが、現在は前述した「湿潤療法」(しつじゅんりょうほう)という、患部を乾かさないように保った状態で治していく方法が主流です。湿潤療法は痛みも少なく、治り方も綺麗だといわれています。ただし、具体的な治療の流れは部位、重症度、感染の有無にもよるため、受診した医療機関の方針に従ってください。
基本的な湿潤療法では、患部が乾かないためのケアをしていきます。具体的には、被覆材(ひふくざい:覆いとなるもの)としてハイドロコロイド材などを貼るだけの場合もあれば、軟膏を塗布し、乾燥を防ぎ浸出液を吸うための被覆材で患部を覆うこともあります。
入院治療が必要なほど重症なやけどでなければ、自宅で治療を行うこともできます。
その際は、やけどが治癒するまで、保護者の方がご自宅で処置を行うことになります。又、毎日病院で処置をする場合でも、処置のポイントを担当の先生から聞いておきましょう。例えば、やけどの受傷部位は治療中に多量の滲出液が出ますが、この滲出液が溢れてきた場合や、当てていた被覆材がずれた場合はどう対処するべきかなどという点です。
滲出液が溢れ出た場合は被覆材の交換や追加が必要となりますが、このようなことが起こる度に医療機関を受診するのは大変です。
また、医師から指示された薬品や被覆材、テープなどは一通りそろえておきましょう。保護者の方には、しっかりと自宅で行うやけどの処置の仕方について聞いて、実践して頂きたいと思います。
なおやけどした部位の痛みは、その部分が空気に触れると生じます。つまり、患部を被覆材などで覆ってしまえば痛みは軽減されます。
※ただし子どもは治療を怖がったり、処置の際に動いたりするため、なかなかご自宅での処置が難しい場合もあります。こういった場合や感染が心配な場合など、最初はこまめに病院に通っていただき、病院にて処置を行うこともあります。
やけどの治療中、患部に細菌が付着して化膿してしまうことがあります。感染を疑う徴候として「やけどした後に熱が出た」「患部に熱感がある」「患部に膿が付着している」「患部の痛みが激しくなってくる」などが挙げられます。感染が起こると治癒が遅れたり後遺症が強くなることがあるので、感染のサインがある場合は、早めに病院を受診しましょう。
やけどの跡を目立たないようにするには、紫外線対策と乾燥対策が重要です。紫外線は、やけどが治った後も数ヶ月程度は浴びないほうがよいといわれています。傷の浅さ・深さに関わらず、遮光することを心がけます。広範囲のやけどならば衣服で隠したり、小さい範囲ならば日焼け止めや茶色の紙絆創膏などで遮光できます。
上皮化したばかりの皮膚は水分を保てず乾燥しがちなので、保湿にも心がけます。
またやけど自体は深くなくても、子どもの体質によっては患部がケロイドになったり、盛り上がってしまったりすることがあります。万が一目立って気になる場合は、形成外科や皮膚科を受診し、相談してください。
「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。
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