やけどとは熱によって皮膚や粘膜が損傷することで、医学的には“熱傷”と呼ばれます。損傷を受けた深さによって4段階に分けられ、深度が深い場合には病院を受診して治療を受ける必要があるほか、少しでも早く熱の影響を取り除くために自身でも速やかな応急処置が必要です。
本記事では、やけどをしたときの応急処置の方法や病院を受診する目安、病院で行われる治療などについて解説します。
やけどをしたときは、やけどの広がりを抑え、痛みを和らげるために直ちに患部を冷却しましょう。冷却方法は患部に水道水を流し当てる方法や保冷剤を当てる方法などが一般的です。冷却時間は最低でも15〜30分程度で、指先や足などにやけどが生じて痛みが強い場合には1時間程度冷やしてもよいでしょう。
やけどをすると患部が腫れ、指輪、腕時計などが取り外しにくくなることがあります。応急処置をする際は、なるべく早い段階でこれらの装具を外すようにしましょう。
また、応急処置の前に衣服を脱がそうとすると、衣服が患部に擦れて痛みが生じることがあるほか、患部に生じた水疱(水ぶくれ)を破ってしまうことがあります。そのため、冷却時に衣服が濡れてしまうような状況であっても、脱がずにそのまま応急処置を行うようにしましょう。ただし、衣服を着たまま応急処置を行うと、衣服の下のやけどを見逃す危険性があるため、患部を冷やしながらほかにもやけどがないか注意深く観察しましょう。
応急処置によって患部を十分に冷却したら、やけどの状態を観察し、必要に応じて病院の受診を検討しましょう。患部に水疱が生じている場合(II 度熱傷)や皮膚が白や黒に変色している場合(III 度熱傷)には、深度が深い可能性が懸念されるため、病院の受診が必要です。
一方、患部に水疱などがなく単に赤く腫れている場合にはもっとも深度の浅い“I度熱傷”と考えられるため、病院の受診は不要です。ただし、時間が経つにつれて水疱が現れることもあるため、患部に変化が生じたら病院の受診を検討しましょう。
以下では、やけどの深度別の処置・治療について解説します。
I度熱傷とは表皮にやけどが生じている場合を指し、患部の赤みやむくみが見られます。日焼けもI度熱傷に含まれます。数日で自然治癒し、痕は残らないことが一般的です。
比較的軽度なやけどであるため病院受診は不要で、一般的には応急処置以外の処置をする必要はありません。痛みが強い場合などは、薬剤師に相談のもと市販薬を使用するか、病院の受診を検討しましょう。
II度熱傷は“浅達性”と“深達性”に分けられ、浅達性・深達性ともに皮膚の赤み、むくみのほか、水疱が生じます。浅達性は1〜2週間で痕を残さずに治癒しますが、深達性は治癒までに3〜4週間かかり、治癒後も痕が残ることが一般的です。
II度熱傷が疑われる水疱がある場合、病院を受診して治療を受ける必要があります。薬物療法が中心で、傷を保護する被覆材や感染を防ぎ皮膚の回復を促す軟膏・クリームなどが処方されることが一般的です。皮膚の再生を促すスプレーが処方されることもあります。
なお深達性II度熱傷の場合には、治癒後の皮膚のひきつれを予防するために壊死した部分を取り除く外科的な治療(デブリードマン)が検討されることもあります。
III度熱傷はもっとも深度の深いやけどで、皮膚全体が壊死して白や黒に変色します。水疱は生じず、神経が傷害されているために痛みも感じないことがあります。治療を受けた場合でも治癒までに1か月以上かかることが一般的で、治癒後も痕や皮膚のひきつれが残ります。
III度熱傷が疑われる場合、自然治癒は難しく外科的な治療が必要です。外科治療では、壊死した部分を取り除くデブリードマンを行った後、健常な皮膚を採取して移植する“植皮術”が検討されます。
やけどが生じたときは速やかに応急処置をすることが大切です。深度の浅いI型熱傷では、数日後には自然治癒するため病院の受診は不要です。しかし、深度が深い場合には治療が必要になるため、早めに病院を受診することを検討しましょう。
ただし、やけどの深度は自己判断することが難しく、時間の経過とともに患部の様子が変化することもあります。そのため、迷った場合には病院を受診することを検討しましょう。なお、病院を受診する際は患部に軟膏・クリームなどを塗ってしまうと患部の状態が確認しづらくなってしまうため、受診前に自己判断で薬を塗らずに受診しましょう。
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