インタビュー

「怖い」「危険な」頭痛の原因―原因疾患とその症状の特徴は?

「怖い」「危険な」頭痛の原因―原因疾患とその症状の特徴は?
志賀 隆 先生

国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生

この記事の最終更新は2015年05月05日です。

頭痛はとても一般的な「よくある症状」です。しかし、頭痛はしばしば、怖い病気のサインである場合があります。どのような頭痛が「怖い」頭痛で救急受診の必要があるのかについては、「『怖い』『危険な』頭痛について」で説明しました。では、それらの頭痛が起こる「怖い」病気はどのようなものなのでしょうか? 日々救急の第一線で多くの患者さんに向き合いアメリカでも活躍された、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長の志賀隆先生にお話を伺いました。

くも膜下出血」は脳の血管などの破裂によるもので、死に至ることも多い非常に危険な病気です。最も多い原因としては脳動脈瘤破裂(のうどうみゃくりゅうはれつ:脳の動脈がふくれて、それがこぶのようになり破裂してしまう)、二番目に多い原因としては脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)による出血があります。

くも膜下出血の頭痛の特徴は、「突然起こる」「かつて経験したことのないほどの強い痛み」(しばしば「バットで殴られたような」と表現されます)などがあり、嘔吐や意識障害を伴うこともあります。後述する脳出血とは違い、麻痺などの他の症状が見られずに、「ただひどい頭痛のみが起こる」場合があるため、注意が必要です。

救急医としての経験から述べれば、「病歴と見た目」が重要です。「病歴」としては「階段を登っていて頸が突然痛くなった」「パソコンをやっていて突然殴られたような痛みを感じた」など、日中の作業中、アクティブに何かをやっているときの頭痛が危険です。また、患者さんの「見た目」としては「目もあけていられないくらい頭が痛い」「ひどくぐったりしている」などがあげられます。

また、くも膜下出血には「警告出血」という小さな出血が起きることがあります。その場合、軽い頭痛が最初に起きることがあります。つまり、軽く出血が起きたあとに大きな出血が起きるのです。この2回目、つまり再破裂のときにこそ重症になります。再破裂で大きな出血を起こす前に早く見つけられた方は、機能予後が良くなる(後遺症が残らず、または少なく回復できる)可能性があります。頭痛の強弱ももちろん大切なのですが、「パッと突然発症をする頭痛」が怖いと認識してください。

脳出血」は、高血圧などが原因で脳の血管が破れてしまい、大脳や小脳・脳幹などに出血が起こる状態です。脳出血の特徴は、どの場所に起こるかによって全く異なる様々な症状が出ることです。特に気を付けるべき頭痛の特徴は、片麻痺(半身が動かなくなる)や浮動性のめまい(ふわふわするようなめまい)を伴う場合です。また、脳出血を原因として意識障害が起こることもありえます。それ以外には、歩行障害もひとつの特徴です。

慢性硬膜下血腫」(頭蓋骨の内側の「硬膜」と脳の間に、徐々に血がたまってしまうこと)というものもあります。高齢者が「ここのところ頭が痛くて、歩けなくなり、認知症が急に進んできた」と訴えてこられたら、医師は慢性硬膜下血腫の可能性も考えます。認知機能が急に落ちてしまった、歩行障害や麻痺がある、という場合には巨大な慢性硬膜下血腫(または脳腫瘍)が隠れていることがあります。

髄膜炎」は、細菌やウイルスなどが原因となって脳脊髄の周囲に炎症を引き起こすものです。髄膜炎の頭痛は、高熱を伴うことが多く、けいれんや意識障害が起こることもあります。細菌性髄膜炎は医師としての経験上、「頭痛の程度が並々ならぬ、相当痛がっている」という印象があります。つまり、頭痛のせいで歩行や食事など日常生活が困難になってしまうレベルです。ここまでくると髄膜炎を大いに疑います。

小児の場合、細菌性髄膜炎を起こさないためには、インフルエンザ菌・肺炎球菌のワクチンの注射が大切です。2回打つとかなり効果があり、髄膜炎は起きづらくなります。

「脳炎」は、細菌やウイルスなどが原因となって、脳自体に炎症を引き起こすものです。ヘルペスウイルスなどが原因となります。脳炎の頭痛は、高熱を伴うことが多く、けいれんや意識障害が起こることもあります。意識障害や認知機能の低下に加え、若い人にも起き得るというのが特徴です。

脳炎の一つのポイントは「性格が変わってしまう」「おかしな言動をする」という「行動の変化」です。暴れ出すこともあります。この場合、精神科の受診の前に、脳炎の可能性を考えなければなりません。

緑内障」は眼の病気ですが、これを原因とする頭痛が起こることがあり、注意が必要です。「暗いところにいる」「映画を見ている」などの時に起こることが多いです。これは、暗いところでは散瞳(瞳孔が開くこと)しているためです。

視力が低下し、眼が痛いというのが特徴ですが、頭も痛くなることがあります。眼は痛むほか、充血もします。嘔吐をすることもあります。そのような状態の場合、散瞳したまま固定していることがあります。

急性副鼻腔炎」とは、頭蓋骨の隙間にある副鼻腔に細菌などがたまり炎症が起きてしまうことを言います。これを原因として、頭痛がよく起こります。痛みの出る場所は、どこの副鼻腔に細菌がたまっているかによって異なります。上顎洞(じょうがくどう)のときは頬や歯などに、篩骨洞(しこつどう)のときは眼の付近に、前頭洞(ぜんとうどう)のときは額に痛みを感じ、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)のときは頭痛がよりはっきりと現れます。この急性副鼻腔炎は、放っておくと失明したり脳腫瘍髄膜炎を起こしてしまうリスクがあるため、注意が必要です。

「側頭動脈炎」は高齢の患者さんに起きやすい病気で、この場合の頭痛は頭の脇(側頭部といいます)の血管の炎症です。基礎疾患として、リウマチ性多発筋痛症のある方は要注意です。同時に起きうる症状としては、顎(あご)の違和感があります。

側頭動脈炎は失明につながることがあるため、注意が必要です。確定診断を待たずにステロイドによる治療を開始することもあります。これは、この場合の診断には側頭動脈の生検(体の組織を実際に採取して検査すること)が必要で、難しい検査であるため、確定診断をするのが難しい(時間がかかる)ためです。

「静脈洞」脳の静脈洞という部分に血栓という血の塊がつまる病気です。妊婦さんやピルを飲んでいる方、さらにはご家族に血液疾患のある方、凝固機能の異常(血が固まりやすいこと)が元々ある方が頭を打ったときは、要注意です。頭痛が突然発症し、若い女性にも起こりうるのが特徴です。

治療としては、「抗凝固療法」(血を固まりにくくする薬を用いる)という方法を導入します。この頭痛は、なかなか診断が難しい種類の頭痛です。通常のCTやMRIをとっても分からないことが多く、その場合にはMRVという特殊な検査をしないと診断できません。

「椎骨脳底動脈瘤解離」は、脳の血管に異常が起こる病気です。この病気は、30~40代の比較的若い人にも起こります。28歳の方の症例もあります。特徴は、後頭部の片側に突然発症する頭痛や、頸の痛みです。頸の怪我(外傷)などが原因になることもあれば、原因不明のこともあります。

顔面の神経と四肢の神経症状の左右が逆であることが特徴の一つです。例としては、「左の頸が痛く、左の顔の感覚がおかしくて、右の手足がしびれている」という患者さんのケースがありました。そこでMRIをとってみると、椎骨脳底動脈解離が発見されました。

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