インタビュー

つらい頭痛の原因と対策――生活習慣の工夫や漢方療法について解説

つらい頭痛の原因と対策――生活習慣の工夫や漢方療法について解説
來村 昌紀 先生

らいむらクリニック 院長

來村 昌紀 先生

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頭痛の多くは命に関わる危険なタイプではないものの、仕事や学校、家事を休まざるを得なくなるなど、生活に支障が出るほどつらい痛みに悩まされることがあります。こうした慢性的な頭痛は生活習慣の見直しで改善されることもあれば、漢方薬による治療が効果的な場合もあります。今回は頭痛の原因や治療の選択肢について、らいむらクリニック院長の來村 昌紀(らいむら まさき)先生にお話を伺いました。

頭痛は、命に別状のない一次性頭痛と、緊急で対応する必要のある二次性頭痛に大別されます。一次性頭痛には、片頭痛(へんずつう)緊張型頭痛群発頭痛などがあります。二次性頭痛は、脳腫瘍(のうしゅよう)くも膜下出血慢性硬膜下血腫などによって引き起こされる危険な頭痛です。

慢性的な頭痛に悩んでいる、いわゆる“頭痛もち”の方は日本で約4割といわれていて、頭痛がある患者さんのうち約9割の方は一次性頭痛です。一次性頭痛は命に別状がないといっても、痛みがつらく学校や仕事を休むなど、日常生活に支障をきたしてしまっている例は少なくありません。

この記事では、片頭痛や緊張型頭痛などの一次性頭痛について説明します。

一次性頭痛の代表的なものには、片頭痛緊張型頭痛群発頭痛の3種類があります。

  • 片頭痛……脈打つような痛みであることが多く、光や音に対して敏感になる
  • 緊張型頭痛……首や肩のコリを伴うことが多く、後頭部を中心に重い痛みがある
  • 群発頭痛……片側の目の奥やこめかみに激しい痛みがあり、涙や鼻水も出る

片頭痛は、脳の疲れと興奮からくる頭痛です。脳が疲労したり興奮状態になったりするのには、複数の理由があります。睡眠不足や寝過ぎ、エストロゲンという女性ホルモンの変動、光や音といった五感に対する刺激などです。これらの刺激により脳が疲れたり興奮したりすると、神経や血管の周りに炎症が起こり、片頭痛を引き起こすと考えられています。

また、片頭痛の症状は女性ホルモンの変動と関係があることから、月経が始まる小学校高学年くらいから閉経前後の50歳代くらいの女性に多くみられます。睡眠と頭痛も関連性が深く、睡眠が不規則になりやすい方は頭痛が起こりやすいといえます。そのほか、血流が悪化しやすい冷え症や低血圧なども特徴的です。生理前後や気圧の変化で症状が出る方も少なくありません。一次性頭痛の中でも2番目に多いタイプです。

緊張型頭痛の場合は、ストレスや血流の悪化、筋肉のコリなどが原因で起こります。デスクワークで長時間同じ姿勢を続けたり、運動不足で血流が滞ってしまったりすることなどが引き金になります。甘いものや脂っこいものの食べ過ぎで血液がドロドロになってしまうことや、冷えなども血流の悪化につながるため避けることが大切です。また、一次性頭痛の中でももっとも多いのが緊張型頭痛です。

群発頭痛の原因はまだ明らかになっていませんが、一説には、目の奥の血管や神経が集中している部位に炎症が起こり、痛みが生じるのではないかと考えられています。群発期と呼ばれる一定の期間(1年に1回程度、多くは1~2か月間)に、激しい頭痛や、頭痛と同じ側の目の奥の痛み、涙や鼻水などの症状が続くことが特徴です。20歳~40歳での発症が多く、男女比に関しては男性のほうが多いといわれていますが、近年では女性の発症もまれではなくなっています。さまざまな頭痛の中でも患者数が少ない、特殊なタイプの頭痛です。

緊張型頭痛は血流の悪化や肩こりからくる頭痛である一方、片頭痛も前触れ症状として肩や首のこりを伴うことがあります。似ていて区別がつきにくいと感じられるかもしれませんが、簡単な見分け方のポイントがあります。

まず緊張型頭痛は、頭が重い感じや肩や首のコリを伴います。血流の悪化や筋肉の緊張が原因で起こるため、体を動かすと症状が楽になるのが特徴です。

片頭痛の場合は、痛みがあるときとないときがはっきり分かれています。体を動かしたときに症状がひどくなるようであれば片頭痛の可能性が高いといえるでしょう。

ただ、必ずしもどれか1つの種類だけを発症するわけではなく、片頭痛と緊張型頭痛を併発している方もいらっしゃいます。緊張型頭痛よりも片頭痛のほうが症状はつらい場合も多いため、片頭痛があるかどうかを確認したうえで、併発している方は片頭痛の治療を優先する場合が多いです。

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一次性頭痛の種類は、ほとんどの場合問診で診断できます。いつからどのような症状が出ているのか、どのようなときに悪化して何をすると楽になるかなどを患者さんにお聞きします。具体的には、たとえば入浴や運動で症状が軽くなる場合は緊張型頭痛、動作で症状が重くなる場合は片頭痛と見分けることが可能です。

問診で頭痛の種類はおおむね診断できますが、体や脳の病気が隠れていないかどうかを検査で調べます。体の病気では、貧血や甲状腺機能異常などにより頭痛が起こることがあります。脳腫瘍くも膜下出血慢性硬膜下血腫*など、脳の病気がないかどうかも確認が必要です。

検査する場合は、血液検査や画像診断を行います。画像診断で用いられるのはCTやMRIです。MRIは血管の様子まで撮影できるメリットがあり、けがなどの緊急時に素早く撮影したいときはCTを使用するといった使い分けがなされています。

*慢性硬膜下血腫:頭のけがにより脳の表面に少しずつ血液がたまる病気。

頭痛の専門は神経内科や脳神経外科なので、近所に専門の診療科がある場合はその診療科の医師に相談しましょう。ただ、専門の診療科が近くになかったり、受診するのはハードルが高いと感じたりする場合は、かかりつけ医や近くの内科でも構いません。子どもの頭痛であれば、小児科を受診するのも選択肢の1つです。診療科にこだわらず、まずは気軽に相談してみてください。

命に関わる二次性頭痛の場合は治療に緊急を要します。次のような症状がみられる場合は二次性頭痛の可能性があるため、すぐに脳神経外科などを受診するようにしましょう。

  • 症状が何日も続き、日を追うごとに悪化している。
  • 急に今まで経験したことのないような強い頭痛が起こり、続いている。
  • 手足に力が入りにくい、ろれつが回らない、意識がボーッとするなどの頭痛以外の症状を伴う。

上記に当てはまらない場合でも、頭痛でお悩みのことがあれば、一度医師に相談することをおすすめします。

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頭痛は薬で治療する前に、日々の生活を見直すことで改善する場合もあります。知らず知らずのうちに頭痛になりやすい生活習慣が身についてしまっていることも少なくありません。医師と相談しながら、頭痛になりやすい生活習慣を見直していきましょう。

生活習慣を見直すうえでまず重要なのは、規則正しい睡眠リズムを身につけることです。具体的には、学校や仕事がある日も休日も、毎日同じ時間に起きることが挙げられます。次の日が休みだからといって夜ふかしをしたり、昼まで寝ていたりすると頭痛が起こりやすくなってしまいます。昼寝は長過ぎると夜に眠れなくなって睡眠リズムが乱れるのでおすすめしませんが、20分程度であれば問題ありません。

片頭痛の対策のポイント

片頭痛の原因は脳の疲労と興奮なので、脳をしっかりと休ませることも重要です。スマートフォンやテレビ、ラジオなどを夜遅くまで見たり聞いたりしていると、脳が常に刺激されてしまって休まりません。夜はできるだけ部屋を暗くして、静かに過ごすよう心がけてください。ストレスを上手に発散してリフレッシュすることも大切です。

緊張型頭痛の対策のポイント

緊張型頭痛の予防においては、適度な運動も有効です。長時間同じ姿勢で座りっぱなしのデスクワークは、頭痛もちの方にとってあまりよくありません。ラジオ体操や30分程度のウォーキングなどを取り入れてみるとよいでしょう。

頭痛を予防する食生活の基本は、規則正しくバランスよく食べることです。食事を減らしたり抜いたりすると低血糖になる可能性があり、低血糖は頭痛を誘発する原因になります。たとえば、朝ごはんを食べない方や、休日は朝昼兼用というように食事の回数が日によってバラバラになっている方も頭痛が起こりやすくなりますので、3食きちんと食べることが大切です。

食事の内容としては、頭痛を誘発する食べ物の取り過ぎに気を付けましょう。チョコレート、チーズ、赤ワインなどに、血管の拡張を引き起こす物質であるチラミンなどのアミン類が含まれており、大量に取ると頭痛を起こしやすくなります。また、コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインにも要注意です。コーヒーや紅茶は1日3杯くらいまでであれば問題ありませんが、毎日大量に飲んでいる方は控えることをおすすめします。エナジードリンクも同様に、毎日飲むような方は注意が必要です。

慢性的な頭痛でお悩みの方は、頭痛ダイアリーをつけることがおすすめです。日記を書くことによって、どのタイミングで頭痛が起こりやすいかを患者さん自身が自覚しやすくなります。

たとえば、徹夜続きの生活やエナジードリンクの大量摂取など、無意識のうちに頭痛を起こしやすい習慣が身についてしまっていることは誰しもあるでしょう。そのようなときに頭痛ダイアリーをつけていると、“睡眠不足のときに頭痛が起こりやすい”などといった気付きを得て生活習慣を見直しやすくなります。また、主治医と一緒に頭痛ダイアリーを振り返ることで、見直すべき生活習慣を医師と共に明確にしながら治療を進めることも可能です。

頭痛は、外見からではつらさが分からないがゆえに、痛みに耐えている様子が“急に不機嫌になった”などと周りから誤解されてしまうと悩んでいる方もいらっしゃいます。特に片頭痛のある方は動くことや光、音などで痛みが悪化するため、頭痛が起こっているときは暗くて静かな場所でじっとしておきたいものです。周囲が理解を示して、安静にできる環境を作ることも大切です。

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痛みがあるときに飲む頭痛薬は、市販薬で対応されている方もいらっしゃるでしょう。市販薬で効果が十分にあり、使用する頻度が1か月間で約6日以内であれば、私は市販薬でも問題ないと患者さんにお伝えしています。ただし、市販薬で効果があっても一度も病院で検査を受けたことがない方や、市販薬が徐々に効かなくなってきていたり飲む頻度が増えてきたりしている方は、一度医師に相談してください。

また、頭痛の頻度が高く頭痛薬をたくさん飲んでしまう方は、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)のリスクが高まります。『頭痛の診療ガイドライン2021』では、一般的な頭痛薬を1か月で10日以上服用している場合に使用過多に該当するとされていますので、頭痛の頻度が高い方は、病院を受診して予防薬を検討したほうがよいといえます。

予防薬は、毎日飲んで発作の頻度を減らすことを目指して使用します。基本的に1か月で平均4日以上頭痛薬を飲む方が対象です。頭痛の頻度が少なくても発作がひどく、学校や仕事に行けないような場合は予防薬を処方することもあります。

頭痛薬や予防薬を使っても日常生活に支障が出てしまう場合には、注射薬も選択肢の1つです。注射薬は、片頭痛を引き起こす原因物質の1つであるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)のはたらきを抑えることで、頭痛を起こしにくくする効果が期待できます。1か月に1回打つタイプと3か月に1回打つタイプのものがあります。注射による治療を受けられる病院は限られていて、頭痛診療の現場経験が5年以上ある医師が処方可能な薬です。基本的には脳神経外科や神経内科などの専門的な診療科で取り扱っています。

頭痛の治療では、人によっては漢方薬のほうが症状や体質に合うこともあります。漢方療法のメリットとしては次のようなことが挙げられます。

副作用のリスクを低減できる

西洋薬(西洋医学で処方される薬)の頭痛薬や予防薬は、脳の興奮を抑えることで頭痛を抑えるため、眠気が出やすくなります。一方、漢方薬は眠気がほとんど出ない薬もあり、車を運転する仕事など、眠気が原因で事故を引き起こす恐れがあるような危険を伴う仕事をしている方にとっては使いやすいといえるでしょう。眠気の副作用が強く西洋薬を使えなかった方の中には、漢方薬で治療したことで頭痛とうまく付き合えるようになった方もいらっしゃいます。漢方薬は西洋薬との併用も可能なので、西洋薬で効果不十分の場合は漢方薬を併せて使うことで、副作用を抑えつつ効果アップも期待できるのです。

体質に合わせて薬を選択できる

天気の影響を受けて頭痛の症状が出たり悪化したりする方は、漢方薬のほうが適している場合があります。天気によって体調が悪くなる“気象病”は漢方の考え方で“水毒・水滞”と呼ばれていて、水の巡りが悪く、水の分布が偏っている状態です。漢方薬には水の巡りをよくするようなものもあり、そのような漢方薬を飲むことで症状の改善が期待できる方もいらっしゃいます。

温めると楽になる緊張型頭痛にも、漢方薬が適している可能性があります。西洋薬の解熱鎮痛薬は熱を冷まして痛みを抑えますが、漢方薬には体を温めることで痛みを和らげる作用のものがあります。同じ頭痛でも、患者さんの状態や体質によって適している薬は変わってくるのです。

女性特有の悩みに合わせて治療できる

先述したように、女性の場合はエストロゲンという女性ホルモンの変動を受けて片頭痛が起こる方もいらっしゃいます。たとえば、生理不順で1か月に2回生理がくるため頭痛の頻度が高いというケースでは、漢方薬を使って生理不順を改善することで間接的に頭痛の頻度を下げる方法もあります。

生理不順を整える点やお腹の赤ちゃんに影響が少ない点で、妊娠を希望する女性にとっても漢方薬は使いやすいといえるでしょう。妊娠するとエストロゲンの分泌が安定して高くなることから妊娠中は片頭痛が軽くなる傾向にあり、実際に漢方薬で治療をして無事妊娠でき、頭痛の症状が和らいだ方もいらっしゃいます。

漢方薬を飲む頻度やタイミングは、頭痛の種類や漢方薬の種類によって異なります。漢方薬には、飲み続けることで効果が期待できる予防薬のようなタイプと、飲めば短時間で効果が期待できるタイプがあります。適している漢方薬は人それぞれ異なるので、医師と相談しながら治療を進めていくことが大切です。

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頭痛に悩む方の中には「頭痛くらいで病院を受診してよいのだろうか」と迷ってしまい、市販薬で済ませている方も多くいらっしゃいます。また、痛みがあるときに受診しないと診断できないのではないかと考えている方もいるようです。ただ、私たち医師はほとんどの場合、問診で頭痛の種類を診断しています。つらいときに無理して病院を受診する必要はなく、頭痛が治まってからの受診で構いません。

どの病院を受診するか迷ったときは、日本頭痛学会のホームページからお近くの日本頭痛学会認定頭痛専門医を検索することができます。当院でも、症状に応じた適切な診療科の先生を紹介することが可能です。

今はさまざまな治療法があるので、頭痛があっても自分の生活を制限して我慢する必要はありません。うまく頭痛と付き合っていけるように、ぜひ遠慮なく相談していただけたらと思います。

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  • らいむらクリニック 院長

    日本脳神経外科学会 脳神経外科専門医日本頭痛学会 認定頭痛専門医・指導医国際頭痛学会 Headache Master日本東洋医学会 漢方専門医・指導医

    來村 昌紀 先生

    「東洋医学と西洋医学を融合し、みんなを美しく、元気で、笑顔に!!」

    研修医時代に総合内科(呼吸器、循環器、消化器疾患)、腎センター(腎臓病)、皮膚科、病理、救命救急センターにて研修を受け、脳神経外科に入局。脳神経外科と救命救急センターの勤務の後、脳神経外科専門医を取得。脳神経外科の中でも頭痛治療を専門として診療するなかで、大学病院で頭痛外来を開設した。その診療において、頭痛学会の定めるガイドラインどおりに治療をしてもうまく治療できない患者さんもいることに気付き、漢方治療を導入。千葉大学大学院医学研究院先端和漢診療学講座にて漢方全般を学び、東洋医学会専門医を取得した。千葉県に来てからは千葉中央メディカルセンターの脳神経外科に頭痛外来を開設し、同院で現在も診療を続けている。また漢方と小児科、一般内科、高齢者医療を学ぶために研鑽を積み、西洋医学と東洋医学を組み合わせてさらにQOL(生活の質)を向上させる、統合医療を地域医療に役立てたいとの思いから独立開業。一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療を心がけ、患者さんを少しでも笑顔にできるよう努めている。

    來村 昌紀 先生の所属医療機関

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