緊張型頭痛は、首や肩、頭の表面の筋肉の緊張や、精神的ストレスが原因で起こると考えられています。そのため、治療では鎮痛薬を用いた対症療法のほか、筋肉の緊張を緩和する筋弛緩薬や、ストレスや不安が強い患者に対して抗うつ薬や抗不安薬を用いる場合もあります。そのほか、薬に頼らない治療も行われています。
緊張型頭痛は、頭痛が生じる頻度によって以下の3つのタイプに分けられます。
緊張型頭痛における頭痛の程度は多くが軽度~中等度であり、寝込んでしまうほど重くはならないことが多いです。しかし、頭痛の頻度が高くなると生活の質(QOL)が大きく低下してしまうため、頭痛の頻度が高い頻発反復性緊張型頭痛と慢性緊張型頭痛は治療の対象となります。
緊張型頭痛の症状を改善するための治療には、頓服治療やマインドフルネスストレス低減法(MBSR)、トリガーポイント注射などがあります。また、発症を予防するために、薬の内服や体操などによる予防治療も行います。
頓服治療では鎮痛薬が用いられます。代表的な鎮痛薬としてアセトアミノフェンやアスピリン、イブプロフェン、メフェナム酸、ロキソプロフェンナトリウム水和物などが挙げられ、妊娠中の女性では安全性の面から通常アセトアミノフェンが選択されます。
しかし、鎮痛薬を用いた治療は症状を一時的に抑えるだけであり、また長期的に服用することで薬物乱用頭痛(薬の使い過ぎによって生じる頭痛)を引き起こすことがあります。そのため、長期服用には注意を要し、週に2~3回以上の使用は控える必要があります。
慢性緊張型頭痛に対しては、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)が痛みの症状を減少させる効果があることが分かっています。
マインドフルネスは、“意識的に、価値判断をせずに今この瞬間に注意を向けること”を意味します。MBSRとは、マインドフルネスの概念を医療に応用したトレーニングプログラムで、1979年にマサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士によって考案されました。主に慢性疼痛やストレス関連障害(うつやパニック障害など)を抱える患者に対して実践されています。
MBSRでは、瞑想やボディスキャン(体の各部分に注意を集中する)、ヨガを中心としたトレーニングを8週間にわたり行います。このトレーニングを通して“今ここ”に注意する力を高めることで、自身のありのままの状態を客観的に認識する力を身につけます。たとえば、痛みを取り除こうとするのではなく痛みは痛みとして受け入れることで、身体的・心理社会的ストレスへの耐性を高める効果が期待できます。
急性期の緊張型頭痛に対しては、トリガーポイント注射が行われることもあります。トリガーポイント注射とは、痛みがある部分に局所麻酔薬を注入する治療で、痛みを取り除くと同時に、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。ただし、長期的に行うものではなく、あくまでも短期的な治療となります。
予防治療は、主に頓服治療で改善が乏しい場合に検討されます。予防治療においても薬物療法が中心で、緊張型頭痛は精神的ストレスによって生じる場合もあることから、現在は抗うつ薬による内服治療がよく行われています。特に三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンの予防効果が高いとされています。また、不安が強い患者に対しては抗不安薬を用いるほか、首や肩の筋肉の緊張を緩和するために筋弛緩薬との併用療法が行われる場合もあります。
薬以外の治療としては、筋電図バイオフィードバック療法、頭痛体操、認知行動療法、頚部指圧、鍼灸、催眠療法などがあります。これらの中でも特に推奨されているのが、筋電図バイオフィードバック療法と頭痛体操です。筋電図バイオフィードバック療法は筋電図を用いて筋肉の緊張を緩める訓練をする治療法です。一方、頭痛体操は首や肩の筋肉の緊張を体操でほぐす治療法で、患者自身が自宅で手軽に行えることから緊張型頭痛の予防治療として広く取り入られています。
また、筋肉の緊張を引き起こすような環境要因を明らかにし、セルフケアを行うことも予防のために重要です。たとえば、ストレスや不自然な姿勢などは緊張型頭痛の原因となることから、ストレス耐性を身につけたり、日頃から正しい姿勢を意識したりすることが挙げられます。
緊張型頭痛における頭痛の程度はそれほど強いものではありませんが、高頻度に頭痛が生じると日常生活に支障をきたしQOLの低下を招きます。頭痛の頻度が高く日常生活に支障をきたしている場合は、我慢せずに一度病院を受診したほうがよいでしょう。受診先としては神経内科や脳神経外科、ペインクリニックが適しています。
緊張型頭痛における頭痛の程度は比較的軽いため、病院を受診せずに市販の鎮痛薬で対処してしまいがちです。しかし、長期にわたって漫然と鎮痛薬を使っていると薬物乱用頭痛を併発してしまう恐れがあります。また、うつ病や気分変調症、パニック障害、不安症(不安障害)などの症状の1つとして緊張型頭痛が起こることもあります。そのため、市販の鎮痛薬を使用してもよくならない場合は早めに医師に相談するようにしましょう。
順天堂大学 医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授 (大学院医学研究科疼痛制御学 教授併任)
順天堂大学 医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授 (大学院医学研究科疼痛制御学 教授併任)
日本麻酔科学会 理事・麻酔科専門医・麻酔科指導医日本ペインクリニック学会 理事・ペインクリニック専門医日本緩和医療学会 会員日本頭痛学会 指導医日本疼痛学会 理事日本慢性疼痛学会 理事日本運動器疼痛学会 副理事長日本区域麻酔学会 評議員日本臨床麻酔学会 会員日本整形外科学会 会員日本神経精神薬理学会 会員日本ニューロモデュレーション学会 理事日本アルコール・アディクション医学会 会員国際疼痛学会(IASP) 会員World Institute of Pain(WIP) 会員
日本麻酔科学会指導医、日本ペインクリニック学会認定ペインクリニック専門医、日本頭痛学会指導医、日本緩和医療学会暫定指導医。日本ペインクリニック学会認定ペインクリニック専門医ならではの治療を行う、数少ない医師の内の一人。「患者を第一に考えた「痛み」の治療をする」ことをモットーとする。また、麻酔科医としての神経ブロック治療等の他にも、臨床心理士と連携することで心の面からの「痛み」のケアにも力を入れている。オピオイドの使用に関するガイドライン作成にも携わり、日本における乱用防止の啓発も行っている。
井関 雅子 先生の所属医療機関
関連の医療相談が37件あります
頭重感、頭の締め付け感
8月中旬より頭重感、頭の締め付け感があり受診し、緊張性頭痛と言われました。家族が病気になったこともあり、ストレスからくるものだろうとの事で、頓服で安定剤を処方していただき一時改善しましたが、また9月中旬ごろより症状が出てきました。 薬を服用しないと頭重感と倦怠感が続くので毎日しんどいです。 現在はあまり思い悩んだり、自分なりにはそこまでストレスを溜めているつもりはないのですが、改善しません。 適度に体を動かしたりもしています。 あまり安定剤に頼らずに治したいのですが、他にどのような治療法がありますか?
毎月同じ時間帯に頭痛
中学生の時から同じ時間帯に頭の頭痛、吐き気が襲ってくるため病院でMIRを受け緊張から来る頭痛と診断されました やはりなかなか治らなく薬を服用するも痛みが増してしまいました。 内科の先生には精神的なものから来る頭痛だから心療内科を奨められました。 内科ではなく心療内科を受信した方がよろしいでしょうか。。
顔の締め付け感。緊張型頭痛でしょうか。
更年期障害で婦人科に通院中です。2年ほど前から緊張型頭痛で悩んでいます。脳神経外科でのMRIでは異常なしでした。 一か月前にやっと合う漢方薬が見つかりまして効いていました。 数日前からまた頭痛が始まりました。 今までより痛みは強くないのですが、頭全体の締め付け感がひどいです。 頬や顎の関節の辺りまで締め付けられてる感じで不快です。 鼻周り、耳の辺りもです。 本日、耳鼻咽喉科も受診しましたが異常なしでした。 更年期のせいか気持ちも不安定です。 その影響もあるのでしょうか。 緊張型頭痛で顔まで締め付け感があることはあるのでしょうか。 考えられる病気はありますか。 受診するとしたら何科がいいのでしょうか。 よろしくお願い致します。
頭を締め付けるような痛み
たまに来る痛みで、頭を強く締め付けるような、一瞬気が遠のくような痛みがあります。 仰向けで寝ているときに、後頭部に若干違和感があると思った直後に頭痛がある感じです。 そのほかにも、首の痛みと同時に前頭葉?付近の頭痛や気分が悪くなったり、吐き気があるときがあります。 以前医者にストレートネックになっていると言われました。 上記の症状はストレートネックに関係しているのでしょうか? もしそうだとするなら、治す方法や緩和方法などはありますでしょうか? 関係していないのであれば、どこで診て貰えば良いでしょうか? よろしくお願いいたします。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「緊張型頭痛」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。