編集部記事

病院で行う緊張型頭痛の治療とは ~処方薬の種類やマインドフルネス、トリガーポイント注射についても解説~

病院で行う緊張型頭痛の治療とは ~処方薬の種類やマインドフルネス、トリガーポイント注射についても解説~
井関 雅子 先生

順天堂大学 医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授 (大学院医学研究科疼痛制御学 教授併任)

井関 雅子 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

緊張型頭痛は、首や肩、頭の表面の筋肉の緊張や、精神的ストレスが原因で起こると考えられています。そのため、治療では鎮痛薬を用いた対症療法のほか、筋肉の緊張を緩和する筋弛緩薬や、ストレスや不安が強い患者に対して抗うつ薬や抗不安薬を用いる場合もあります。そのほか、薬に頼らない治療も行われています。

緊張型頭痛は、頭痛が生じる頻度によって以下の3つのタイプに分けられます。

  • 稀発反復性緊張型頭痛:頭痛の頻度が1か月に1日未満(年間12日未満)
  • 頻発反復性緊張型頭痛:1か月に1日以上15日未満(年間12日以上180日未満)
  • 慢性緊張型頭痛:1か月に15日以上(年間180日以上)

緊張型頭痛における頭痛の程度は多くが軽度~中等度であり、寝込んでしまうほど重くはならないことが多いです。しかし、頭痛の頻度が高くなると生活の質(QOL)が大きく低下してしまうため、頭痛の頻度が高い頻発反復性緊張型頭痛と慢性緊張型頭痛は治療の対象となります。

緊張型頭痛の症状を改善するための治療には、頓服治療やマインドフルネスストレス低減法(MBSR)、トリガーポイント注射などがあります。また、発症を予防するために、薬の内服や体操などによる予防治療も行います。

頓服治療では鎮痛薬が用いられます。代表的な鎮痛薬としてアセトアミノフェンやアスピリン、イブプロフェン、メフェナム酸、ロキソプロフェンナトリウム水和物などが挙げられ、妊娠中の女性では安全性の面から通常アセトアミノフェンが選択されます。

しかし、鎮痛薬を用いた治療は症状を一時的に抑えるだけであり、また長期的に服用することで薬物乱用頭痛(薬の使い過ぎによって生じる頭痛)を引き起こすことがあります。そのため、長期服用には注意を要し、週に2~3回以上の使用は控える必要があります。

慢性緊張型頭痛に対しては、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)が痛みの症状を減少させる効果があることが分かっています。

マインドフルネスは、“意識的に、価値判断をせずに今この瞬間に注意を向けること”を意味します。MBSRとは、マインドフルネスの概念を医療に応用したトレーニングプログラムで、1979年にマサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士によって考案されました。主に慢性疼痛(まんせいとうつう)()やストレス関連障害(うつやパニック障害など)を抱える患者に対して実践されています。

MBSRでは、瞑想やボディスキャン(体の各部分に注意を集中する)、ヨガを中心としたトレーニングを8週間にわたり行います。このトレーニングを通して“今ここ”に注意する力を高めることで、自身のありのままの状態を客観的に認識する力を身につけます。たとえば、痛みを取り除こうとするのではなく痛みは痛みとして受け入れることで、身体的・心理社会的ストレスへの耐性を高める効果が期待できます。

急性期の緊張型頭痛に対しては、トリガーポイント注射が行われることもあります。トリガーポイント注射とは、痛みがある部分に局所麻酔薬を注入する治療で、痛みを取り除くと同時に、筋肉の緊張を和らげる効果が期待できます。ただし、長期的に行うものではなく、あくまでも短期的な治療となります。

予防治療は、主に頓服治療で改善が乏しい場合に検討されます。予防治療においても薬物療法が中心で、緊張型頭痛は精神的ストレスによって生じる場合もあることから、現在は抗うつ薬による内服治療がよく行われています。特に三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンの予防効果が高いとされています。また、不安が強い患者に対しては抗不安薬を用いるほか、首や肩の筋肉の緊張を緩和するために筋弛緩薬との併用療法が行われる場合もあります。

薬以外の治療としては、筋電図バイオフィードバック療法、頭痛体操、認知行動療法、頚部指圧(けいぶしあつ)、鍼灸、催眠療法などがあります。これらの中でも特に推奨されているのが、筋電図バイオフィードバック療法と頭痛体操です。筋電図バイオフィードバック療法は筋電図を用いて筋肉の緊張を緩める訓練をする治療法です。一方、頭痛体操は首や肩の筋肉の緊張を体操でほぐす治療法で、患者自身が自宅で手軽に行えることから緊張型頭痛の予防治療として広く取り入られています。

また、筋肉の緊張を引き起こすような環境要因を明らかにし、セルフケアを行うことも予防のために重要です。たとえば、ストレスや不自然な姿勢などは緊張型頭痛の原因となることから、ストレス耐性を身につけたり、日頃から正しい姿勢を意識したりすることが挙げられます。

緊張型頭痛における頭痛の程度はそれほど強いものではありませんが、高頻度に頭痛が生じると日常生活に支障をきたしQOLの低下を招きます。頭痛の頻度が高く日常生活に支障をきたしている場合は、我慢せずに一度病院を受診したほうがよいでしょう。受診先としては神経内科や脳神経外科、ペインクリニックが適しています。

緊張型頭痛における頭痛の程度は比較的軽いため、病院を受診せずに市販の鎮痛薬で対処してしまいがちです。しかし、長期にわたって漫然と鎮痛薬を使っていると薬物乱用頭痛を併発してしまう恐れがあります。また、うつ病や気分変調症、パニック障害、不安症(不安障害)などの症状の1つとして緊張型頭痛が起こることもあります。そのため、市販の鎮痛薬を使用してもよくならない場合は早めに医師に相談するようにしましょう。

受診について相談する
  • 順天堂大学 医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座 教授 (大学院医学研究科疼痛制御学 教授併任)

    井関 雅子 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

    関連の医療相談が37件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「緊張型頭痛」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。