概要
冷え症(冷え性)とは、手足の先端、腰など体の一部が冷えやすくなる状態のことを指します。医学的な病名ではなく、身体症状の1つです。
私たちの体には体温を調節する仕組みが備わっており、寒さを感じると血管が収縮することで体内の熱を外に逃がしにくくしたり、震えによる筋肉の運動で熱が産生されたりすることで皮膚の温度を保っています。しかし、この調節が上手くいかなくなると、手足の先端などが冷えやすくなるのです。原因は多岐にわたりますが、一般的には男性よりも女性のほうが冷え症になりやすいとされています。
冷え症が続いているからといって健康に大きなダメージを与えることはありません。しかし、適切な対処を講じずに放置すると頭痛、肩こり、しびれ、便秘・下痢などの身体的症状、イライラ感や不眠など精神的症状を引き起こすことがあります。また、低血圧や貧血、甲状腺機能低下症などの病気が背景にあるケースも少なくないため注意が必要です。
原因
冷え症は上述したように、体温調節の仕組みが上手く働かなくなることによって引き起こされる症状です。その原因は多岐にわたりますが、単純に薄着や過度な冷房などが原因となるほか、以下のようなものも原因として挙げられます。
自律神経の乱れ
血管の収縮などの体温調節は自律神経によって司られています。そのため、ストレスや過度な疲れ、環境の変化、女性ホルモンの乱れなどによって自律神経の働きが乱れると、体温調節もうまく働かなくなり冷え症を引き起こすことがあります。
特に夏の空調などで外気と室温の差が激しい環境になると自律神経の働きが乱れやすくなり、暑い時期に冷え症になるケースも少なくありません。
血流の悪化
貧血や低血圧などの病気、運動不足や喫煙習慣、締め付けの大きな服装など、血流が低下しがちな原因があると特に手足の先などに体内の熱が届きにくくなるため、冷え症になりやすくなります。
筋肉量の不足
筋肉は熱を産生する器官でもあるため、筋肉量が少ないと体内で熱が作られにくくなり冷え症になることがあります。
冷えを引き起こす病気
冷え症は甲状腺機能低下症、レイノー病、全身性強皮症などの自己免疫疾患、閉塞性動脈硬化症などの症状の1つとして現れることがあります。対策を講じても冷え症が改善しないときは、背景に何らかの病気が隠れていることもあるので注意が必要です。
症状
冷え症はその名のとおり、皮膚の温度が低下する症状のことです。
発症する部位や時期などはさまざまであり、よく見られるのは寒い季節や過度な冷房などに晒された際に手足の先端に発症するタイプです。重症な場合には手足の先端がいわゆる“しもやけ”になったり、皮膚の色が白くなりしびれや痛みを引き起こしたりするケースも少なくありません。一方で、下半身の筋力が低下しているケースでは脚や腰を中心に冷えやすくなり、冷たい飲食物を多量に摂取すると胃や腸などの消化器官が冷えることもあります。
また、冷え症は病気ではなく“体質”の1つと捉えられることもありますが、冷えが長く続くと頭痛、肩こり、腰痛、関節の痛みやしびれ、便秘や下痢などの身体的症状、イライラ感や不眠などの精神的症状を引き起こすため軽く考えずに適切な対処が必要です。
検査・診断
通常、冷え症に対して医学的な検査を必要とすることは多くはないかもしれません。しかし、適切な対処を講じても冷え症が改善しない場合は、何らかの病気が原因の可能性があります。病気が疑われる場合は、貧血や甲状腺機能低下症、自己抗体(自分の体を攻撃するタンパク質)の有無を調べるための血液検査、血管の閉塞や狭窄を調べるための画像検査などが必要に応じて行われます。
治療
何らかの病気が原因で冷え症になっている場合は、原因となる病気の治療が優先して行われます。
また、冷え症の治療は必要ないとされることがありますが、冷えそのものや伴ってみられる諸症状に対して漢方薬による治療を行うこともあります。
セルフケア
冷え症は生活習慣に起因するケースが多いため、次のような対策を講じることが大切です。
規則正しい生活をする
睡眠リズムなどが乱れた不規則な生活は冷え症の原因となる自律神経の乱れを引き起こします。日ごろから規則正しい生活を心がけ、ストレスを溜め過ぎないよう心がけましょう。
血行改善を目指す
締め付けの多い衣類や靴は血行を悪化させるので、できるだけゆったりしたものを着用することが大切です。また、寒い季節や冷房が強いときは体を冷やしすぎないように衣類で調節するようにしましょう。
筋力量を増やす
特に脚の筋肉量が低下すると下半身の冷えを引き起こしやすくなるため、適度な運動を行い、筋力量を増やすことも大切です。
冷たい飲食物を取り過ぎない
胃腸を冷やすと全身の冷えにつながります。飲み物はなるべく常温以上のものを飲むようにし、食べ物も冷えたものは避けて温かいものを取るようにしましょう。
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