インタビュー

片頭痛の原因には何がある? ストレスと気圧には要注意

片頭痛の原因には何がある? ストレスと気圧には要注意
桂 研一郎 先生

国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター長/神経内科、国際医療福祉大学医学部 医学教育統括セ...

桂 研一郎 先生

この記事の最終更新は2015年08月03日です。

パソコンやインターネットが普及した現代の日本において、日頃から頭痛持ちだという方は増えてきているようです。そのなかでもとくに「片頭痛」は発作的に出現することが多く、激しい痛みが突然起こることで悩まされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この片頭痛とはいったい何が原因となって起こるのでしょうか? 国際医療福祉大学三田病院予防医学センター長・神経内科教授の桂研一郎先生にお話をお伺いしました。

片頭痛は、何らかの理由(低気圧の接近、緊張がとれて急にリラックスしたときなど)により、脳の血管が急激に拡張することで起こります。

ストレスなどにより神経(三叉神経と呼ばれる顔の感覚を脳に伝える神経)が刺激され、神経末端より炎症物質を放出し、その炎症物質がさらに血管を拡張して「ズキン、ズキン」と拍動する痛みをもたらす片頭痛を発症すると考えられています。
具体的な原因として考えられるものは、ストレス・人込みや騒音などの騒がしい環境下に長く身を置くこと・女性の場合はホルモンの変動などが挙げられます。

片頭痛という病気はまだよくわからない部分が多く、はっきりと解明されていません。ただし近年、脳神経の三叉神経から過剰に放出される「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」というペプチドが何らかの関与をしていることがわかってきました。

ペプチドとはアミノ酸のつながったもので、短いタンパク質の一種です。このCGRPが三叉神経の末端から出されて血管を感作(抗原に対して敏感な状態になること)し、炎症を惹起させることにより、ほんのわずかな血管の拍動などでも片頭痛が起こるのではないかと考えられていますが、はっきりとしたエビデンス(科学的な確証)はありません。そもそも頭痛のメカニズムにはよくわかっていないものが多いのです。

心身のストレスから解放された時にも、副交感神経の影響で急に血管が拡張することがあります。そのため平日に仕事をしているときより、週末などに片頭痛が起こりやすくなります。日常的にストレスの多い環境に身を置いている人が、週末になってストレスから解放されると急に片頭痛に襲われるパターンがありますが、これはストレスが大きく関与した片頭痛と考えられるでしょう。

男性よりも女性に多く見られ、約4倍です。これは、エストロゲンという女性ホルモンが生理周期によって変動することが影響していると考えられます。ホルモンバランスの変動が片頭痛に関わってくるため、この時期に片頭痛が起こりやすくなります。妊娠して女性ホルモンの変動が少なくなると片頭痛は発症しにくくなります。

また、閉経後は男性と同じような状態になるため、片頭痛が改善する方も多くいらっしゃいます。ただし、前兆のある片頭痛持ちだった患者さんは、前兆だけ残ってしまうというパターンもあるようです。

よく、「低気圧が近づくと頭が痛くなる」と訴える方がいます。確かに、温度や湿度などの気象条件も片頭痛の発症に関連していることが報告されています。

具体的な気象条件としては、気温が急激に上昇したあと・湿度が高くむしむしとしたとき・低気圧の通過に伴い天気が崩れたときが片頭痛を誘発する条件のようです。

当然ながら、台風や梅雨の時期は片頭痛が増えます。この場合、雨が降る前に片頭痛が起こり、雨が実際に降ってくると安定する患者さんが多いようです。他には、春と秋にも気圧の関係で片頭痛を発症する患者さんが多くなります。

遺伝との関係は、私の経験上ではあるのではないかと考えています。
実は別のタイプの片頭痛として遺伝性のものがあるのです。これは「家族性片麻痺性片頭痛」といい、前述してきた片頭痛のタイプとは少し異なる疾患と言えます。
ただし、一般的に言われている遺伝性の片頭痛も、確証はないものの多いことは確かです。具体的には70%以上の患者さんがそうで、特に前兆のある片頭痛の方に遺伝する確率が高いと言われています。

片頭痛の症状が悪化する誘因には、ストレス・空腹・寝すぎ・寝不足・チーズやチョコレートなどチラミンやポリフェノールを含む特定の食べ物(※チラミンという物質やポリフェノールが血管を収縮させるため、その作用が切れたとき反動で血管が一気に拡張して片頭痛を引き起こす)・月経・眩しすぎる光・騒音・タバコや香水のにおい物質……など、患者さんによって様々なものがあります。

つまり、日常生活のあらゆる面で片頭痛を発症するリスクは否定できないということです。ただし、これが原因となって必ず片頭痛が起こる、と一概に言い切ることはできません。繰り返しとなりますが、片頭痛が起こるメカニズムの研究は非常に遅れており、未だに解明されていない部分も多いのが現状です。

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