パソコンやインターネットが普及した現代の日本において、日頃から頭痛持ちだという方は増えてきているようです。そのなかでもとくに「片頭痛」は発作的に出現することが多く、激しい痛みが突然起こることで悩まされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。この片頭痛とはいったい何が原因となって起こるのでしょうか? 国際医療福祉大学三田病院予防医学センター長・神経内科教授の桂研一郎先生にお話をお伺いしました。
片頭痛は、何らかの理由(低気圧の接近、緊張がとれて急にリラックスしたときなど)により、脳の血管が急激に拡張することで起こります。
ストレスなどにより神経(三叉神経と呼ばれる顔の感覚を脳に伝える神経)が刺激され、神経末端より炎症物質を放出し、その炎症物質がさらに血管を拡張して「ズキン、ズキン」と拍動する痛みをもたらす片頭痛を発症すると考えられています。
具体的な原因として考えられるものは、ストレス・人込みや騒音などの騒がしい環境下に長く身を置くこと・女性の場合はホルモンの変動などが挙げられます。
片頭痛という病気はまだよくわからない部分が多く、はっきりと解明されていません。ただし近年、脳神経の三叉神経から過剰に放出される「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」というペプチドが何らかの関与をしていることがわかってきました。
ペプチドとはアミノ酸のつながったもので、短いタンパク質の一種です。このCGRPが三叉神経の末端から出されて血管を感作(抗原に対して敏感な状態になること)し、炎症を惹起させることにより、ほんのわずかな血管の拍動などでも片頭痛が起こるのではないかと考えられていますが、はっきりとしたエビデンス(科学的な確証)はありません。そもそも頭痛のメカニズムにはよくわかっていないものが多いのです。
心身のストレスから解放された時にも、副交感神経の影響で急に血管が拡張することがあります。そのため平日に仕事をしているときより、週末などに片頭痛が起こりやすくなります。日常的にストレスの多い環境に身を置いている人が、週末になってストレスから解放されると急に片頭痛に襲われるパターンがありますが、これはストレスが大きく関与した片頭痛と考えられるでしょう。
男性よりも女性に多く見られ、約4倍です。これは、エストロゲンという女性ホルモンが生理周期によって変動することが影響していると考えられます。ホルモンバランスの変動が片頭痛に関わってくるため、この時期に片頭痛が起こりやすくなります。妊娠して女性ホルモンの変動が少なくなると片頭痛は発症しにくくなります。
また、閉経後は男性と同じような状態になるため、片頭痛が改善する方も多くいらっしゃいます。ただし、前兆のある片頭痛持ちだった患者さんは、前兆だけ残ってしまうというパターンもあるようです。
よく、「低気圧が近づくと頭が痛くなる」と訴える方がいます。確かに、温度や湿度などの気象条件も片頭痛の発症に関連していることが報告されています。
具体的な気象条件としては、気温が急激に上昇したあと・湿度が高くむしむしとしたとき・低気圧の通過に伴い天気が崩れたときが片頭痛を誘発する条件のようです。
当然ながら、台風や梅雨の時期は片頭痛が増えます。この場合、雨が降る前に片頭痛が起こり、雨が実際に降ってくると安定する患者さんが多いようです。他には、春と秋にも気圧の関係で片頭痛を発症する患者さんが多くなります。
遺伝との関係は、私の経験上ではあるのではないかと考えています。
実は別のタイプの片頭痛として遺伝性のものがあるのです。これは「家族性片麻痺性片頭痛」といい、前述してきた片頭痛のタイプとは少し異なる疾患と言えます。
ただし、一般的に言われている遺伝性の片頭痛も、確証はないものの多いことは確かです。具体的には70%以上の患者さんがそうで、特に前兆のある片頭痛の方に遺伝する確率が高いと言われています。
片頭痛の症状が悪化する誘因には、ストレス・空腹・寝すぎ・寝不足・チーズやチョコレートなどチラミンやポリフェノールを含む特定の食べ物(※チラミンという物質やポリフェノールが血管を収縮させるため、その作用が切れたとき反動で血管が一気に拡張して片頭痛を引き起こす)・月経・眩しすぎる光・騒音・タバコや香水のにおい物質……など、患者さんによって様々なものがあります。
つまり、日常生活のあらゆる面で片頭痛を発症するリスクは否定できないということです。ただし、これが原因となって必ず片頭痛が起こる、と一概に言い切ることはできません。繰り返しとなりますが、片頭痛が起こるメカニズムの研究は非常に遅れており、未だに解明されていない部分も多いのが現状です。
国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター長/神経内科、国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター教授
国際医療福祉大学三田病院 予防医学センター長/神経内科、国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター教授
日本神経学会 神経内科専門医・指導医日本脳卒中学会 脳卒中専門医・脳卒中指導医・評議員日本頭痛学会 認定頭痛専門医・指導医日本内科学会 認定内科医・指導医日本医師会 認定産業医
日本医科大学を卒業後、スウェーデン王国ルンド大学実験脳研究所助教授、日本医科大学神経内科准教授、同大学多摩永山病院脳神経内科部長を経て、現在は国際医療福祉大学三田病院予防医学センター長・神経内科教授を務める。2017年4月よりは、成田の医学部にて医学教育統括センター教授を兼ねている。神経内科全般、特に脳卒中、頭痛を中心に長年第一線の診療、教育、研究に携わってきた脳神経分野のスペシャリスト。予防医学から現場の臨床へのスムーズな連携を目指している。また、日本脳卒中学会評議員を始めとして、日本頭痛学会評議員、日本脳ドック学会監事、日本神経治療学会理事、日本脳循環代謝学会幹事など、様々な学会においても幅広く精力的に活躍している。
桂 研一郎 先生の所属医療機関
関連の医療相談が53件あります
昨日の偏頭痛後、視界に違和感
昨日、約8年ぶりに偏頭痛がきました。目がチカチカし、視界の半分が重なって見えなくなり、次第に頭痛になりました。少し吐き気はありましたが、軽く、吐かずとも治りました。現在は頭痛は無くなりましたが、視界が見えづらいような気がします。文字が重なっていたり、視界の一部が全く見えない訳ではありません。コンタクトをすると、遠くの景色をぼーっと見る分には問題ないですが、近くになると、うまく右目のピントが合わない感じがずっとします。(昨日痛かったのも右目の奥です) 病院を受診すべきでしょうか。また何科を受診すればいいでしょうか。
片頭痛による痛み
今日初めて脳神経外科がある病院に行き、MRI検査をした後に片頭痛であるという診察を受けました。 今もまだ後頭部左下辺に締め付けられるような圧迫感が残っているのですが、ちょうど虫歯が痛み出すと後頭部も痛み出す感じになるのですが、虫歯も片頭痛に関係ありますでしょうか? もし、片頭痛持ちに良い食品があれば教えていただけないでしょうか?
突然の悪寒、吐き気、めまい、視野障害
1ヶ月ほど前、友人とカラオケで歌いそのあと食事に行きました。 カラオケでも食事の前半は不調も何もなし。 お酒もグラス1杯飲み終えた頃でした。 普段はグラス1杯で具合が悪くなることは一度もありません。 そしたら途中突然、悪寒を感じ首が凝るような気持ち悪さに襲われ、そのあと吐き気、耳が聞こえにくくなる、回転性ではなく地面がふわふわとし立てないようなめまい、人や物が鉛筆の線で縁取られ周りは真っ白に見えるような視野障害に襲われました。 最後は耐えきれず嘔吐してしまい、嘔吐したら上記の症状は何事もなく消えました。 そして家に着いたとき、キラキラしたような物が見え、軽い頭痛がありました。 次の日病院に行きMRIを撮りましたが、異常なし。 偏頭痛でしょうと診断を受けました。 仕事の関係上、病院は1件しか行けておらず、いろんな先生からのお言葉を頂きたく書きました。 よろしくお願いします。
1年前ぐらいから頭痛がひどい
3年前から少し軽い頭痛がする事もあったけど,1年前ぐらいから段々とひどくなって言ってるような気がする!今日はひどいくて、2時間ぐらいずっと左右の頭がズキンズキンしていた。軽い時でも,立ちくらみがして,20分近く頭痛が続く。 どんな病気が疑われる? どこの病院に行けばいいのかわからない!
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「片頭痛」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。