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「子どもが頭を打ったとき」どう対処する?

    • インタビュー
    • 公開日:2015/05/12
    • 更新日:2017/01/11
    「子どもが頭を打ったとき」どう対処する?

    お子さんが転び、頭を打ってしまうことはしばしばあります。子ども、特に乳幼児は大人と違い、症状を自分の言葉で説明することができないため、保護者が注意して見てあげなければいけません。頭を打ってしまったときに注意しなければならないのはどのような症状なのでしょうか。日々救急の第一線で多くの患者さんに向き合い、アメリカでも活躍された東京ベイ・浦安市川医療センター救急科部長の志賀隆先生にお話をお伺いしました。(なお、大人の場合については別記事をご参照ください。)

    子どもが頭を打ったとき、まず絶対に確認すべきこと

    頭を打ったあとは乳児や幼児は大泣きすることが多いです。きちんと呼びかけて、眼を開けることができるか、ちゃんと受け答えをすることができるかの確認をします。いつも通りの受け答えができれば、あまり心配のないことが多いです。大泣きせずに、そのまま意識をなくしてしまう、ぐったりしてしまう、呼びかけにも全く反応しない場合、けいれんを起こしてしまった場合などはすぐに救急車を呼びましょう。

    危険な「打ち方」と「症状」

    頭を打ったときに特に怖いのは頭蓋内出血(頭の中の出血)で、緊急の脳外科的な治療が必要になることもあります。「打ち方」と「症状」に注意しながら頭蓋内出血のリスクを考えていきます。

    どのような打ち方が危険?

    一般的には頭を打った時に大きなエネルギーがかかっている場合が危険です。「PECARN」という基準などを参考に考えると、受診すべきなのは以下のような場合です。

    • 車の外に放り出されるような交通事故にあった場合
    • 2歳以下の場合は90㎝以上、2歳以上の場合は150㎝以上の高さから落下した場合
    • ヘルメットをしていない状態で、歩行者としてまたは自転車に乗っており、乗用車やバイクに衝突した場合
    • 衝撃の強い高速の物体によって頭部を打撲した場合

    どのような症状が危険?

    以下のような場合は、危険であると考えてください。

    • 頭を打った時の記憶がない場合
    • 頭を打ってから30分以上の全健忘(記憶喪失)がある場合
    • 頭痛がどんどんひどくなる場合
    • 嘔吐した(複数回吐いた、2回以上嘔吐している)場合
    • 手足のしびれ、片麻痺(半身に力が入らない)がある場合
    • 物が二重に見えてしまう場合
    • けいれんが起きた場合
    • 意識がない、眠り込んでしまう場合
    • ぼんやりしている、話が通じない、的外れのことを言う場合
    • 暴れ出してしまう場合
    • パンダのような眼になっている場合
    • 耳の後ろにあざがある場合

    「頭を打ったとき」のよくある疑問について

    タンコブは?

    「タンコブがあったら大丈夫」という話がなぜか広まっていますが、都市伝説です。タンコブがあるということは、頭を打ってしまったことには間違いないので、「タンコブがあるから大丈夫」ということには何の根拠もありません。

    子どものときはむしろ、タンコブの存在に注意します。「PECARN」というルールがあり、特に2歳未満の子どもでは、タンコブがあるということは頭の中の出血の危険要因になっています。その中でも、特に側頭部のタンコブは気にすべきです。頭の骨の硬さの順番は「1:前頭部、2:後頭部、3:頭頂部、4:側頭部」です。人間は前を向いて歩きますので、きちんとガードできるように、前の骨が一番硬くなっています。

    めまいは?

    頭を打ったあとのめまいはほとんどの場合、脳震盪のことが多いです。これはつまり、「脳震盪になるぐらい強く打っている」ということですから、めまいがあったら受診を検討するべきです。

    頸(くび)が痛いときは?

    危険な可能性があります。頭を打って、さらに「頸椎損傷」をしている可能性もあります。頚椎損傷は頸椎という頸の骨がダメージを受けることで、それにより脊髄の神経が損傷すると全身麻痺になる危険性もあります。頸の強い痛みに加え、麻痺や手足のしびれがあるときには救急車に来てもらいましょう。絶対に頸をむやみに動かしてはいけません。

    鼻血は?

    鼻血自体よりも「血の混じった薄い鼻水のような液体」が出ていると危険です。「髄液性鼻漏」の可能性があります。髄液性鼻漏は「脳や脊髄のまわりの髄液」が頭を打ったことなどにより鼻に出てきてしまっている状況です。

    頭を打ったとき、心配なときは何科にいけば良い?

    救急外来(救急科)、脳神経外科に受診をしましょう。

    「頭を打ったとき」の検査

    頭を打った時の検査は、やはり頭部のCTです。しかし、被曝(特に子ども)に配慮する必要があり、どのようなときにCTをとるべきなのかは議論があり、カナダやアメリカなどで様々な研究があります。

    CTによる被曝リスクは、年齢が若ければ若いほど高くなります。一生のうちに3回以上CTをとるとがんになるリスクが1.8倍になったという報告があります。ただ、35歳以上になってからCTをとるとあまりがんのリスクが上がらないので、被曝リスクは気にする必要はありません。このように、同じ3回のCTだとしても1歳でとるのと35歳以上でとるのとはまったくリスクが全く違います。

    どのようなときにCTをとるのか?

    先述した危険な症状である「意識を失う、麻痺、複数回の嘔吐、頭の打ちかた」などのチェックにより、頭蓋内出血(頭の中の出血)などの重篤な状態が起きてしまっているかどうかを概ね見積もることができます。見積もるときには様々なルールがあり、年齢によって異なります。そのルールを参考にしながら身体診察などを合わせて、CTをとるかどうかを決定していきます。

    子どもの場合は、保護者の方ともよく話し合います。被曝のリスクと危険性について検討し、CTをとるかどうかを決めます。例えば、「5ヶ月の男の子が30センチのソファーから落ちた。あざも何もなく、診察上も何も問題がない。頭を打ってから5時間が経っている」というケースであれば、リスクはほぼ0に近いと考えられます。受傷したエネルギーも少ないし、頭を打ったあとおおよそ4時間くらいは注意という時間的な条件もクリアしています。したがって、このような場合にはCTをとらないことが多いです。

    救急医は様々な指標(例えば、前にも述べた「PECARNのアルゴリズム」という尺度)を元に、頭の中に危険な事態が起こっている可能性がどれくらいあるのかを検討しています。

    頭を打ち、入院をしなければいけない場合

    CTなどで異常が発見された場合には入院となります。しかし、CTに異常がないときにも入院することがあります。具体的には、以下のような場合です。

    • GCS(以下の表を参照)が14点以下
    1:開眼 2:言語反応 3:運動反応
    4点:自発的に開眼する 5点:見当識の保たれた会話 6点:命令に従う
    3点:呼びかけで開眼する 4点:会話に混乱がある 5点:合目的な運動をする
    2点:痛み・刺激を与えると開眼する 3点:混乱した単語のみ 4点:逃避反応としての運動をする
    1点:開眼しない 2点:理解不能の音声のみ 3点:異常な屈曲反応をする
      1点:なし 2点:伸展運動をする
        1点:全く動かない

    ※3つの反応スコア―の合計点(3~15点)で判断する

    • 複数回のけいれんがあったとき
    • 血液疾患:血友病などの凝固障害の患者さん
    • 脳震盪が強く、ぐったりしている
    • 歩けない
    • 吐き気が強すぎる、何度も嘔吐している

    脳震盪の危険性

    CTなどの画像検査では脳にはっきりとした異常がない場合でも、脳がダメージを受けていることがあり、これを脳震盪と言います。頭を打ったあとに頭痛・吐き気がある、または集中できない、言葉がなかなか出てこない、情緒不安定、記憶障害といった症状がある場合には危険です。

    特に、ラグビーやサッカーなどコンタクトの激しいスポーツをやっている方が頭を打った後に意識障害を起こしていた場合は、要注意です。プレーには基本的に戻らない方が良いと考えましょう。これは、もう一度頭を打ってしまうと、「セカンドインパクトシンドローム」という非常に危険な病態を引き起こすためです。

    セカンドインパクトシンドロームは、頭を打ったあとに全体的に脳が腫れ上がってしまうことを言い、非常に致死率が高いです。そのため、運動選手に最初の脳震盪の症状が残っているとき、例えば頭が痛い、若干ぼーっとしているときにはプレーに戻らせてはいけません。

    記事1:「怖い」「危険な」頭痛について知っておくべきこと-救急受診の必要性
    記事2:「怖い」「危険な」頭痛の原因―原因疾患とその症状の特徴は?
    記事3:「頭を打ったとき」どう対処する?―大人の場合
    記事4:「頭を打ったあと」時間が経ってから注意すべきこと―大人の場合
    記事5:「子どもが頭を打ったとき」どう対処する?
    記事6:「子どもが頭を打ったあと」時間が経ってから注意すべきこと

    志賀 隆

    志賀 隆先生

    東京ベイ・浦安市川医療センター 救急科部長

    学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。現在は東京ベイ・浦安市川医療センター救急部を牽引すると共に、後進の育成にも力を注ぐ。

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