漢方薬は一般的に「副作用が少ない」と認識されています。確かに西洋医学の薬に比べると、医師が処方する漢方薬の副作用は非常に少ないものであるといえます。しかし、漢方外来を担当されている九州大学大学院医学研究院地域医療教育ユニット准教授の貝沼茂三郎先生は、ドラッグストアなどで処方箋不要で購入できる漢方薬の中には、飲み方に注意を払わねばならないものもあるとおっしゃいます。本記事では、漢方薬のメリットとデメリットについて貝沼先生にお伺いしました。
漢方薬のメリットは、西洋医学の薬に比べて副作用が非常に少ないことです。そのため、抗がん剤の副作用を抑えるために漢方薬を用いることもあります。また、器質的な問題がないにも関わらず不調が現れているときは、漢方薬を使用した方がよいこともあります。しかし漢方薬もまったく副作用がない訳ではないため、定期的な診察や検査を受ける必要があります。
西洋医学ならびに漢方医学にはそれぞれの良さがあります。また、日本だけが医師免許を取得すれば、医師はだれでも西洋薬も漢方薬も自由に処方することができます。日本にはこのようなメリットがあるため、「東西医学の融合」により、西洋と東洋の治療法を適材適所で使い分けることで、患者さんによりよい医療を提供できるだけでなく、医療経済にも貢献できるのではないかと考えています。
患者さんの中には、「漢方薬は長く服用しなければ効果が得られない」という先入観を持っておられる方もいらっしゃいます。しかし、例えばかぜ症候群の治療に用いる漢方薬は、代表的な西洋医学の治療薬であるPL薬よりも即効性があり、効果は服用後5分から10分で現れることがほとんどです。
ただし、慢性疾患の治療の場合は長期的に薬を服用していただかねばならないこともあります。当科では、初診から約2週間後に再診を行い、飲みにくくないか、効果はどの程度出ているかなどを確認します。この時点で、慢性疾患を抱える患者さんであっても、寝つきや便通がよくなっているなど、周辺症状に改善がみられることがあります。
継続して服用できそうであり、なにか改善点が見られたら、その後約1か月服用を続けてもらい、3度目の来院時に効果判定をします。ただし、期待した効果が得られていない場合は、この段階で治療薬を変更することもあります。
前項では、比較的短期で治療を終えられる例をご紹介しましたが、体質を変えることを目標にする場合は、治療に年単位の期間を要することもあります。
また、漢方外来では漢方薬の処方の他に、食生活の改善や運動習慣を取り入れるための指導を行うこともあります。生活スタイルを変える必要のある患者さんは、お悩みの症状がよくなった後も引き続き来院していただき、生活習慣をご自身の力で是正できるようになったことを確認した上で治療を終了します。漢方治療の止め時とは、患者さんご本人が生活習慣を見直すことができた時なのです。
ドラッグストアや薬局で、処方箋不要で購入できる薬をOTC医薬品といいます。通常、OTC医薬品は処方箋が必要な薬剤よりも少ない分量で販売されています。ところが、ドラッグストアで購入できる代表的な漢方薬の防風通聖散(ボウフウツウショウサン:内臓脂肪が蓄積している人に対して使用する漢方薬)には、様々な生薬の中でも特に肝障害を起こしやすいとされる生薬が配合されているため、OTCといえども検査を受けずに漫然と飲み続けることは危険です。副作用が少ない漢方薬ですが、リスクに関する正しい知識を持ち、自己管理しながら服用することが重要です。
富山大学附属病院 和漢診療科 診療科長・特命教授
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