インタビュー

PMS(月経前症候群)やむくみを漢方ではどう分類する?-気血水について②

PMS(月経前症候群)やむくみを漢方ではどう分類する?-気血水について②
貝沼 茂三郎 先生

富山大学附属病院 和漢診療科 診療科長・特命教授

貝沼 茂三郎 先生

この記事の最終更新は2016年04月13日です。

漢方医学では、「気・血・水」のいずれかが不足したり、流れが停滞することによって、心身に不調が生じると考えます。女性の方に多いむくみや雨天時に起こる頭痛は「水」のバランスの乱れによるもの、PMS(月経前症候群)や生理痛は「血」の滞りによるものと捉えられ、均衡が崩れている部分を支えるような治療をすることで不調の改善を目指します。本記事では、「血(けつ)」と「水(すい)」の概念と、これらが不足することにより起こる典型的な心身症状について、九州大学大学院医学研究院地域医療教育ユニット准教授(九州大学病院総合診療科漢方専門外来担当)の貝沼茂三郎先生にお話しいただきました。

漢方医学においては、「気・血・水」の3つが過不足や滞りなく体を巡ることで、生体の恒常性が保たれていると考えます。本項で解説する「血(けつ)」とは、血液とほぼ同義のものであり、栄養を全身に届ける役割などを担っています。この働きが低下することを「血虚」といい、抜け毛や肌の乾燥などをはじめとする末梢の循環障害が症状として現れます。

血液がドロドロとした状態になり、血流に滞りが生じている状態のことで、多くは「痛み」症状を伴います。

具体的には、肩こりや頭痛、冷えなどの不定愁訴や、月経関連の不調が挙げられます。月経前にニキビができたり、過食傾向に陥るPMS(月経前症候群)の諸症状や生理痛も、漢方医学の世界では瘀血の病態として考えます。

瘀血の特徴は目にみえる所見が多いことです。たとえば、目の周りの色素沈着ができやすい人や、急にシミが増加したという人は瘀血の可能性があります。

舌の色はくすんだ暗赤色をしており、手のひらの膨らんだ部分には赤味が出る「手掌紅斑(しゅしょうこうはん)」がみられることもあります。また、下腹部がぼってりと出ることも瘀血のサインのひとつです。

このほか、患者さんに肝障害が原因のクモ状血管腫の症状がみられるときや、変形性膝関節症を患っている方の膝の内側の静脈がミミズ腫れのような状態になっているときも、瘀血の可能性を考えます。下肢の静脈瘤も瘀血の目にみえる所見のひとつです。

日本は高温多湿国家であることから、水のバランスが崩れている人は非常に多く見受けられます。

典型的な水毒・水滞の症状には、むくみやめまいがあります。また、アレルギー性鼻炎などによる水様性鼻汁も水のバランスの崩れと捉えられます。

西洋医学で診断のつく疾患の中にも、漢方医学で水毒・水滞の病態と考えるものがあります。具体的には、体内に水が溜まる胸水や腹水、気圧の変化に伴って生じる頭痛が挙げられます。雨が降る前に必ず頭痛が起こる人は、水のバランスが崩れている可能性が高いといえるでしょう。

また、水を飲んだ時に、お腹の中でチャポンという振水音(しんすいおん)がすることも、水毒・水滞の特徴的な所見です。この振水音は、内臓脂肪が少なく胃下垂傾向にある女性に出やすいと考えられています。

体内に水が溜まるということは、体が冷えやすい状態にあるということです。理解しやすいよう、体をヤカンに例えてご説明しましょう。目の前にヤカンが2つあり、片方は水で満たされており、もう片方は少量の水が入っているとします。これらを同じ火力で熱すると、当然水が少量しか入っていない方が素早く温まります。

人間の体も同様で、水が溜まっている人の方が、水のバランスがよい人に比べて温まりにくく、冷えやすい状態にあるといえます。そのため、水毒・水滞の方の多くは冷え性を伴っています。また、水毒・水滞が悪化すればするほど体の冷えも酷くなるという悪循環が生じやすくなるため、自覚症状のある方は放置しないよう注意することが大切です。

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