済生会宇都宮病院の小児科では心臓カテーテルによる検査や治療を行っています。その中の代表的なものである肺動脈弁狭窄症に対するバルーン拡張術と動脈管開存症に対するコイル塞栓術について、小児科主任診療科長の高橋努先生にお話をうかがいました。
心臓カテーテルは検査にも治療にも使われますが、検査のために用いられることが多く、年間では心臓カテーテルによる検査および治療を60〜70件ほど行っています。そのうちの一部がいわゆるカテーテル治療になります。カテーテル治療にもいくつか種類がありますが、主なものとしては根治的な治療と、手術の間の橋渡しとしての治療があります。
根治的な治療の代表的なものが肺動脈弁狭窄症(はいどうみゃくべんきょうさくしょう)に対するバルーン拡張術です。これはカテーテルで送り込んだ風船を膨らませることによって肺動脈弁の狭くなっているところを拡げるというもので、済生会宇都宮病院で対応可能な治療です。重篤な肺動脈弁狭窄では、弁の形態によほど異常がない限りバルーン拡張術が第一選択の治療になります。
軽症の方は治療をしなくても治ってしまうことがありますが、重篤な患者さんは放っておくとどんどん重症化してしまいますので、症状が出る前に乳児期の段階で拡げる必要があります。実際には脚のつけ根の血管からカテーテルを入れて右心房から右心室へと進め、肺動脈の弁の狭いところで風船を膨らませます。使用するバルーンのサイズも決まっており、合併症などに細心の注意を払いながら行っています。
赤ちゃんが生まれる前、つまり肺呼吸を始める前の胎児期には、肺動脈と大動脈をつなぐ形で体循環に必要な管が通っています。これを動脈管といいます。動脈管は生後しばらくすると自然に閉じるのですが、これが何らかの理由で閉じないで残ってしまうのが動脈管開存症(どうみゃくかんかいぞんしょう)で、心不全や感染性心内膜炎を起こしやすくなります。
手術をする場合にはもちろん麻酔や合併症のリスクに注意する必要はありますが、その場合でもいったん心臓を止めて心臓の壁の中の穴を閉じるような大がかりな手術ではなく、心臓の外側にある血管を縛るだけなので人工心肺を使う必要がありません。
このような理由から、かつては動脈管開存症による感染性心内膜炎のリスクが一生つきまとうような状況であれば、3歳までに閉じていない場合には全員手術をするという時代がありました。現在ではカテーテルによるコイル塞栓術(そくせんじゅつ)が可能になり、より負担の少ない形で治療が行えるようになっています。
我々が行っている方法では大動脈側からカテーテルを入れ、肺動脈とつながっている動脈管を通して、肺動脈側で金属製のコイルを巻いています。カテーテルを使ってコイルを真っ直ぐな状態で肺動脈のほうに入れ、ガイドを抜くと真っ直ぐだったものがコイル状になります。
肺動脈のところで2、3回コイルを巻くとそこで引っかかって止まり、次に反対側の大動脈のほうでコイルを巻くと挟まれるような形で固定されます。その結果、最終的には動脈管に血栓(血のかたまり)ができて完全閉塞に至ります。留置したコイルは後で取り除く必要がないため、手術をすることなくカテーテル検査と同程度の負担で患者さんを治癒できるという点で非常に有効な治療です。
済生会宇都宮病院 小児科 主任診療科長
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