インタビュー

ウイルス感染による小児の脳炎・脳症―熱は高さではなく原因が大切

ウイルス感染による小児の脳炎・脳症―熱は高さではなく原因が大切
高橋 努 先生

済生会宇都宮病院 小児科 主任診療科長

高橋 努 先生

この記事の最終更新は2016年06月24日です。

脳炎・脳症ウイルス感染によって神経に後遺症を残しうる病気です。救急でも多くみられる小児の発熱では重篤な状態に至ることはまれですが、保護者の方からは高熱が続くことによる脳へのダメージを心配する声がしばしば聞かれます。大切なのは熱の高さではなく、その原因であるということはあまり知られていないのではないでしょうか。小児の発熱時の対応について済生会宇都宮病院小児科主任診療科長の高橋努先生にお話をうかがいました。

済生会宇都宮病院の小児科では、ここ数年の傾向として脳症が非常に多くなっています。全国規模で増加しているかというと必ずしもそうではないかもしれませんが、けいれんの重積で来られる患者さんの中に脳炎・脳症の方がしばしばみられます。

いわゆる熱性けいれんが長く持続しているものを熱性けいれん重積といいますが、そうではなくてウイルスなどの感染を機に、急性の脳障害を生じる脳炎・脳症というものがあり、その場合には発達障害てんかんなど神経の後遺症が残ってしまうことがあります。日頃からそのような患者さんを診ている中で、我々は何とかしてその予後を改善できないだろうかと考えています。

外来などで熱を出したお子さんの親御さんから「熱が40度まで上がってしまって、頭が大丈夫か心配」「熱でけいれんするのではないか」といった声が聞かれることがあります。それは親御さんとしてみれば当然の不安であろうと思います。私は患者さんに対してよく「熱は“高さ”ではなくて“原因”が大事ですよ」ということをお話ししています。

たとえば1歳前後で39〜40度の熱が続く突発性発疹というウイルス感染症があります。多くは自然に治ってしまいますし、脳に影響が出ることもありません。その一方で熱は38度止まりでも、実は細菌性髄膜炎にかかっているという場合もあります。ですから、熱が39度になったから重篤であるとか、40度を超えたから脳にダメージが残るというわけではありません。

そういったことはやはり一般の方にも知っておいていただきたいことですし、啓発・周知が必要な点であると考えます。いわゆる「救急の受診の仕方」や「発熱時の対応」など、いろいろな切り口はあろうかと思いますが、大切なのは何が原因で熱が出ているのかということです。同じ39度の熱が出ているといっても、その原因が風邪なのか髄膜炎なのかによって話は違ってきます。

もちろん細菌性髄膜炎などの場合、38〜39度の熱がずっと続いていて、診断がつくまでに時間がかかってしまったりすると後遺症が残る場合もありますので、そういったものを見逃してはいけないのですが、熱の高さだけでは一概に危険であるとかそうでないとは言えないのです。

宇都宮市の救急体制の中では、1次救急を担う休日夜間診療所が用意されています。夜間にお子さんが熱を出したとき、本来であれば24時間いつでも受診できることが患者さんにとっては一番望ましいのかもしれません。しかし夜間の発熱がすべて重篤であるというわけではありません。

そこで地域の医療システムとして、そういったときにはまず夜間診療所へ行っていただくという形をとっています。その上で入院や検査が必要となる患者さんに対しては、済生会宇都宮病院ではベッドをキープしていつでも受け入れられるようになっています。また、済生会宇都宮病院は救急車で受診される3次救急も担っており、より重篤な患者さんの対応も行うという役割があります。このような患者さんにスムーズに医療を提供するためにも、地域の医療システムはとても重要です。こうした救急受診の順番なども、一般の方に知っておいていただきたいことのひとつです。

 

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