インタビュー

女性医師の悩みの多くはキャリアと結婚や子育てなどワークライフバランス形成

女性医師の悩みの多くはキャリアと結婚や子育てなどワークライフバランス形成
今村 定臣 先生

日本医師会 常任理事、いまむらウィミンズクリニック 理事長

今村 定臣 先生

この記事の最終更新は2017年02月15日です。

日本では女性医師の数が年々増加しており、医療機関で女性医師による診療を受ける機会も増えてきました。しかし多くの女性医師は女性医師特有の悩みを抱えていることをご存知でしょうか。

日本医師会常任理事の今村定臣先生に、日本国内における女性医師の活躍と現状について伺いました。

 

女性医師

医師全体に対する女性医師の割合は年々増加しています。厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」では、2014年12月31日現在、医師31万1205人で、そのうち女性医師は6万3504人でした。これは医師5人のうち1人は女性であるということになります。

医学部に進学する女子学生が増えていることもあり、女性医師に対する勤務環境の整備、管理者への啓発などの対策が加わったことが、女性医師が増えた背景の一つと考えています。

医療現場で働く女性医師の声を拾い上げるため、日本医師会では「女性医師の勤務環境の現況に関する調査」を実施しています。その調査結果から、日本の女性医師が働く現状が見えてきました。

女性医師が多い診療科・少ない診療科には、ある特徴があることをご存知でしょうか。

例えば女性医師が多い診療科としては、眼科や皮膚科を例に挙げることができます。基本的に外来診療で対応できることも多く、診療時間帯など勤務時間をコントロールしやすいことが理由です。

また産婦人科や小児科は、患者さんの立場からしても「女性医師に診てもらいたい」というニーズが多いことから、女性医師が多く活躍している診療科といえるでしょう。

一方、女性医師の活躍がこれからの課題とされている診療科もあります。例えばこれは外科系全般に言えることですが、ひとたび手術が始まると5時間、10時間の長丁場になることもあり、労働時間が長くなったり、その日のスケジュールは非常に不規則になります。そして勤務する際の体力的な負担も大きいことから、外科系医局には女性医師の入局者は少ないと言われてきました。

労働時間超過や当直勤務の多さといった医師の労働環境については、テレビなどのメディアでも取り上げられているため多くの方がご存知かと思います。特に妊娠・出産・育児を希望する女性医師は、この勤務環境をハードなものと感じる方も多いと言えるでしょう。

妊娠や出産などのライフイベントを考えている女性医師が、「医師の仕事をしながら出産や育児するのは難しいかもしれない」と考えるようでは、まだまだ労働環境改善の余地があると考えています。

 

女性医師のワークバランスとM字カーブ
女性医師の勤務環境整備に関する講習会用スライド「女性医師がいきいきと仕事を続けていくために」 2014.2.25日本医師会

 

女性の労働力率は、出産や育児により一次的に減少した後、子育てが一段落したあたりから再び上昇をみせる「M字カーブ」を描きます。女性の妊娠適齢期は35歳頃までといわれることから、妊娠・出産を希望する女性はこの時期になると仕事から離れることが多いです。そのため、この年代の女性の労働力率は最も低くなります。

女性医師の労働力率も他の職業と同様にM字カーブを描きますので、この年代の女性医師は出産や育児のため一時的に仕事から離れる方が多いことを物語っています。

医学部や国家試験をストレートで合格した方の場合、24歳で大学を卒業するとまずは研修医として医師のキャリアがスタートします。その後、平均して3~5年程度の時間をかけて専門医の資格を取得します。

この時期は専門医の資格を取得したり、臨床研究や専門医としての基礎を固める大切な期間ですが、実は女性の労働力率のM字カーブが下降を始める時期でもあります。

女性医師の労働力率がM字カーブを描くタイミングは、他の職種と比較しても大きな差はありません。つまり医師としてのキャリア形成のなかでも特に重要なこの時期にM字カーブを迎えることは、女性医師が「医師としてのキャリアを積む」か、それとも「妊娠・出産・育児などでワークライフバランスを充実させる」か選択する必要があることを意味しています。

 

女性医師の悩み
女性医師の勤務環境整備に関する講習会用スライド「女性医師がいきいきと仕事を続けていくために」 2014.2.25日本医師会

 

女性医師はキャリア選択だけでなく、職場環境などに対し日常的に悩みを抱える方が多いです。

女性医師を対象に職場環境に関する調査を行ったところ、仕事と家庭の両立、プライベートな時間がない、勉強時間が少ない、当直室や更衣室といった施設環境の不備などに関する回答が目立ちました。

日本の近代医学の歴史は、明治時代になって西洋の近代医学が日本に本格的に導入されたことに端を発します。このとき男性が日本の医療の中心を担っていたため日本の医療は男性優位となりました。

冒頭でもお伝えしましたが、近年の女性医師の活躍は目覚ましく、多くの分野で男性医師以上に活躍を見せる方も多くいらっしゃいます。

今後女性医師のさらなる活躍が見込まれることから、医療界に残る男性優位の環境や、女性医師が持つワークライフバランス形成に関する悩みといった各種課題の早期解決が求められています。

 

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  • 日本医師会 常任理事、いまむらウィミンズクリニック 理事長

    今村 定臣 先生

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