インタビュー

女性医師のワークライフバランス構築を!「日本医師会女性医師支援センター」「日本医師会女性医師バンク」の取り組み

女性医師のワークライフバランス構築を!「日本医師会女性医師支援センター」「日本医師会女性医師バンク」の取り組み
今村 定臣 先生

日本医師会 常任理事、いまむらウィミンズクリニック 理事長

今村 定臣 先生

この記事の最終更新は2017年02月15日です。

医師国家試験合格者における女性の割合は年々増加していることから、今後医療における女性医師の役割は益々大きくなると考えています。こうした動きに伴い、日本医師会では女性医師がより働きやすい環境の整備が必要と考えています。

日本医師会が行っている女性医師支援に対する取り組みについて、「日本医師会女性医師支援センター」とその中核事業である「日本医師会女性医師バンク」の活動内容を中心に、引き続き日本医師会常任理事の今村定臣先生に伺いました。

女性医師

日本の医療現場で活躍する女性医師は年々増加傾向にありますが、それぞれが体現するワークライフバランスは実にさまざまなタイプがあります。例えば、医師の使命にすべてを捧げて全力を尽くすタイプ、仕事も家庭も両立させたいタイプ、家庭の事情を考えてプライベートを優先させたいタイプなどがあります。

女性医師がどのようなワークライフバランスを目指すかは、その方が持つ価値観に左右されるといえるでしょう。近年の女性医師の増加に伴い、女性医師が働きやすい環境を可能な限り整え、それぞれが理想とするワークライフバランスの実現をサポートすることは、日本医師会にとって大切な使命の一つであると考えています。

女性医師センターのホームページ

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妊娠出産を希望する女性医師に対しては、妊娠・出産・育児の段階で特に手厚い支援が必要になります。日本医師会では、女性医師に対する支援としてさまざまな取り組みを行っています。ここでは日本医師会が特に力を入れている事業についてご紹介していきます。

女性医師が抱える悩みの多くは仕事と家庭の両立で、特に出産や子育ては女性医師の休職・離職理由の大半を占めています。

女性医師の産休・育休状況に関する調査を行ったところ、法律に定められた休暇を完全に取得した・一部だけ取得したと回答した方は調査対象者のうち79.1%で、対象者全員が産休・育休を完全に取得するには至りませんでした。

これには、医師は男性中心社会のために産休・育休の取得に対して理解を得にくい環境が一部にあることや、産休・育休に関する法律について十分な知識を持ち合わせた医師が少ないことも原因として考えられます。しかし、現場の忙しさを知っているからこそ女性医師としても産休・育休を取得しにくいと感じてしまうことも影響を与えていると考えています。

今村定臣先生

日本医師会では、会内に設けられた男女共同参画委員会や女性医師支援センターから提出された要望書をまとめ、日本医師会会長が関係省庁や政府等に対して産休・育休に関する法整備を求める要望書を積極的に提出しています。

例えば臨床研修中の産休・育休中の身分保証、再開時の研修継続の保証について厚生労働省に申し入れを行い、規定の整備が実現したことを皮切りに、

・医療機関で短時間勤務正職員制度の導入について支援策を申し入れ2008年度に実施された診療報酬改定で一部実現に取りつけたこと

・災害時に男女共同参画の視点が反映されること等について首相や各都道府県知事に要望を出し努力するとの回答を得たこと

などは、女性医師の労働環境改善について近年日本医師会が取り組んできた事例の一部としてご紹介することができるでしょう。

産休

職場復帰を望む女性医師にとって、保育施設などの環境が整っているかそうでないかということは大きな問題です。子どもを持つ女性医師の保育状況に関するアンケートでは、保育所や託児所・自身で行う・親など親族に頼るという回答が多くを占めました。

仕事と家庭を両立したいと考える女性医師は、育児中もキャリアを中断せずなるべく早い時期に現場復帰したいと考える方が多いです。女性医師の活躍をサポートする日本医師会としても、院内保育施設や託児所の設営推進は重要課題と考えています。

日本医師会では医療機関に対し、院内保育所・託児所の設置状況に関するアンケートを実施しましたが、院内保育所があると答えた施設は49.9%でした。これは調査を行った医療機関の約半数が女性医師就業支援策として院内保育施設が有効性を認識した結果と考えています。

しかし、今後、女性医師のさらなる増加が見込まれていることを考えれば、病院保育所の設置状況は「少しずつ改善しつつあるものの、完全と呼ぶにはまだ遠い状態である」と言うほうが現状に近いかもしれません。

院内保育所は、各医療機関が病院職員に対する福利厚生の一環として実施しています。施設運営にかかる費用の一部は補助金で対応可能な部分もありますが、何らかの形で医療機関等が負担しているのが実情です。

日本医師会としては、院内保育所の運営は医療機関の規模に応じて財政的な支援が必要になると考えています。どの程度支援を行えるのかについては、診療報酬での対応も含めこれから議論する必要があると考えています。

日本医師会女性医師バンク

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日本医師会では、産休・育休取得で現場を離れていた女性医師の就業斡旋や再研修支援といった復職支援にも力を入れています。2006年に厚生労働省委託事業として開始した「医師再就業支援事業」は、2009年に女性医師の勤務継続への支援に重点を置き、更なる事業の発展を目指して「女性医師支援センター事業」に改称されました。その中核をなす「日本医師会女性医師バンク」は、女性医師の就業斡旋のため、2007年1月30日に創設された無料の職業紹介所です。2017年1月30日で創設から10周年を迎えました。

サイト利用率や利便性向上のため、日本医師会女性医師バンクではサイトの積極的な宣伝と、システムの刷新が急務と考え作業に着手しました。また、2016年10月から就業斡旋に対応する専任コーディネーターを採用し、就業希望者と求人情報とのマッチング支援サービスの強化を行いました。

医療機関の求人という特性上、利用者の方々から医療的・医学的知識に関連する質問を寄せられることもあります。その場合はコーディネーター経験のある女性医師5名にアドバイザーとして相談にのっていただきサポートする体制も整っていますので、専門的な内容などについても相談しやすいと、多くの利用者よりご好評をいただいています。

体制を変更したことでこれまで以上の成果が見えはじめ、少しずつ手応えも感じ始めています。2017年3月末までにホームページのリニューアルを完了する予定であり、利用者の増加につなげ更なる女性医師支援の活動を充実させたいと考えています。

 

今村定臣先生

今回記事内でご紹介した内容は、日本医師会が取り組む女性医師支援事業内容のほんの一部です。各種取り組みが成果を見せはじめ、日本の女性医師にさらなる活躍をしていただけることを心より楽しみにしています。

 

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  • 日本医師会 常任理事、いまむらウィミンズクリニック 理事長

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