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認知症の治療薬による副作用や服薬管理――在宅医療だからこそ受けられるケアとは?

認知症の治療薬による副作用や服薬管理――在宅医療だからこそ受けられるケアとは?
梅里 尚行 先生

医療法人社団ホームアレー 理事長 、ホームアレークリニック城南 院長

梅里 尚行 先生

目次
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この記事の最終更新は2017年05月31日です。

認知症の患者さんの中には、薬を飲んだことを忘れてしまう方や、時間の感覚が分からなくなってしまう方もおり、ご自身での服薬管理が難しいケースもあります。認知症の在宅医療を行っているホームアレークリニック城南の院長・梅里尚行先生は、地域の訪問薬局などと密な連携を図り、ご自宅で安全に治療を受けてもらう工夫を行っているといいます。

認知症治療薬の種類と副作用への対処法、在宅医療だからこそできるケアについて、梅里先生にお伺いしました。

現在日本では、認知症の治療薬として4種類の薬が認可されています。

(1)ドネペジル塩酸塩:抗コリンエステラーゼ阻害薬

軽度から重度のアルツハイマー型認知症レビー小体型認知症の治療に用いる内服薬です。近年では、脳血管性認知症の周辺症状を緩和する効果があるという報告もなされています。

(2)ガランタミン:抗コリンエステラーゼ阻害薬

軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の治療に用いる内服薬です。

(3) リバスチグミン:抗コリンエステラーゼ阻害薬

軽度から中等度のアルツハイマー型認知症の治療に用いる貼り薬(貼付剤)です。

(4)メマンチン塩酸塩:NMDA受容体拮抗薬

中等度から重度のアルツハイマー型認知症の治療に用いる内服薬です。

前項でご紹介した全ての治療薬は、認知症そのものを治す薬ではなく、神経の伝達物質をコントロールすることにより、病気の進行を予防するための薬です。

脳の状態を改善し、認知症になる前の状態に戻すといった治療薬は存在しません。

また、すでに治療薬を使用しているご本人やご家族の中には、認知症が進行した状態と、薬により進行を抑制できている状態とを比較することはできないため、本当に進行予防に役立っているのかが分からないと、不安に思われる方もいらっしゃいます。

このような方にぜひ知っていただきたい認知症治療薬の必要性を、以下に記していきます。

家でゆっくりくつろいでいる高齢の方

認知症の治療薬には、認知機能障害の進行予防だけでなく、幻覚や抑うつといった周辺症状(記事1『認知症とは――一般的な物忘れと認知症の記憶障害』)の緩和作用もあります。暴力や暴言、徘徊などが顕著に改善することもあるため、住み慣れたご自宅で長く暮らしていただくことにもつながります。

認知症という病気に対し、「介護施設に入らねばならない病気」といったイメージを持たれている方も非常に多くいらっしゃいますが、実際には周辺症状を緩和していくことによって、一人暮らしの方でもご自宅で治療を受け続けることが可能になります。

私たち訪問診療を行う専門医は、常に「いかに長くご自宅で過ごしていただけるか」を考えながら、認知症の治療薬を処方しているのです。

抗コリンエステラーゼ阻害薬を服用すると、約15%に下痢と吐き気、悪心(おしん:胸のむかつき)といった消化器症状が見られます。

これらの副作用への対処法は、症状の重さや患者さんの心情などに応じて変わります。

たとえば、下痢や吐き気が軽い場合は整腸剤や制吐剤を用いながら、その薬を継続する方法を採ることがあります。軽度の副作用は、時間とともに落ち着いていくことがほとんどです。

ただし、一度副作用で苦しい思いをしたことがきっかけとなり、患者さんがその治療薬自体に拒絶感を抱いてしまうこともあり、その場合は薬の変更をご提案します。

もちろん、認知症の治療薬を飲んでもまったく副作用が現れない患者さんもいらっしゃいます。

抗コリンエステラーゼ阻害薬の中には、口からではなく皮膚から成分を吸収させる貼付剤です(経皮吸収型製剤)。

そのため、副作用には消化器症状のほかに、皮膚のかゆみや発赤などが挙げられます。このような皮膚症状を防ぐためには、以下の3点を実践していただくことが大切です。

  • 1日1回(24時間ごと)きちんと貼り替えること
  • 貼る部位は毎日変えること
  • 貼る前に保湿をすること

皮膚が乾燥しているときほど炎症が起こりやすくなるため、経皮吸収型製剤を処方するときには保湿用の薬剤も一緒に処方しています。

一人暮らしなど、ご家族の協力が得られない環境下にあり、24時間ごとの貼り替えが難しい患者さんの場合は、訪問介護や訪問看護スタッフの方に1日1回貼り替えてもらっています。これは、内服薬に関しても同様です。

お家を訪問する介護士

認知症患者さんの中には、時間の感覚が分からず定期的な服用ができない方、すでに薬を飲んでいることを忘れて二重服用してしまう方などがいらっしゃいます。

そのため、訪問看護や訪問介護、訪問薬局のスタッフさんとの連携は欠かせません。訪問時に薬の内服の補助や貼り替えを行ってもらうだけでなく、このような服薬管理カレンダーを活用することもあります。

服薬カレンダー

訪問薬局のスタッフさんが作成した服薬管理カレンダー 画像ご提供:梅里 尚行先生

服薬管理カレンダーにより薬の残数確認をすることで、認知症だけでなく嚥下(えんげ)(飲み込み)の問題が起こっていないかどうかをチェックすることもできます。

同様の目的で、以下のようなピルケースを活用することもあります。

ピルケース

実際に使用しているピルケース 画像ご提供:梅里 尚行先生

複数の薬の管理は、認知症の患者さんだけでなくご家族にとっても難しい場合があり、実際に「どの薬をどうすればよいか分からない」と困惑される声を耳にしたこともあります。

そのため、薬の管理を行うことができる訪問薬局の存在は、特に心強いものだと感じています。

認知症患者さんの中には、服薬管理カレンダーやピルケースで管理されている薬でも「あればあるだけ飲んでしまう」という方もいらっしゃいます。

このような場合は、介護スタッフの方が頻回に訪問する定期巡回サービスを利用したり、ご自宅に薬用の金庫を置き、必要な量の薬を1回1回手渡したりすることもあります。

患者さんと医師が自宅で話しているようす

在宅医療では、外来診療にはできない認知症治療が行えます。外来診療の場合は、来院されている「そのとき」の患者さんしか診ることができません。一方、在宅医療では実際に患者さんのご自宅に伺うため、生活環境も含めて患者さんを捉えることができます。

また、外来診療に比べ、比較的時間を取れることも多く、患者さんやご家族とじっくりお話ししながら治療計画を立てていくことができます。

また、介護スタッフや訪問看護ステーション、訪問薬局との連携も、一般的な病院以上に密に取れるため、患者さんの体調の変化など「何か」があったときには、情報が素早く入ってくるという利点があります。

訪問診療の回数は原則月1~2回ですが、患者さんが発熱した場合や転倒してけがをしてしまったときなど、必要な場合には臨時で訪問し、治療を行います。

計画的な医学管理のもと、定期的な訪問診療(月2回訪問)を行った場合にかかる費用は、以下の表のとおりです。

(参照:ホームアレークリニック城南 公式WEBサイトhttp://www.home-ally.jp/homecare/

当院では城南4区といわれる世田谷区、目黒区、品川区、大田区の一部を訪問強化エリアとしています。

訪問強化エリア外にお住まいの方でも、その都度ご相談に応じさせていただき、患者さん一人ひとりにとってよりよいご提案をすることを信条としています。

認知症の新規治療薬の効果を確認するための治験はさまざまな場所で行われており、今後新たな治療薬が出てくる可能性もあります。しかし、まずは現在の治療薬に周辺症状を抑える作用があり、ご自宅で過ごすという選択肢もあるということを、広く発信することが私たちの使命だと感じています。

在宅医療を行う施設が増えたとはいえ、やはり認知症と聞くと徘徊などの周辺症状と結びつけて捉えてしまい、介護施設に入るほかないと考えてしまう方は多数いらっしゃいます。実際に、当院にいらっしゃる新規の患者さんやご家族から、自宅で治療を受けるという選択肢を知らなかったという声を聞くこともあります。

認知症の症状の中には薬でコントロールできるものもあること、治療の受け方、暮らし方にはたくさんの選択肢があるということを、より多くの方に知っていただきたいと願っています。

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    梅里 尚行 先生

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