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認知症とは――般的な物忘れと認知症の記憶障害の違い

認知症とは――般的な物忘れと認知症の記憶障害の違い
梅里 尚行 先生

医療法人社団ホームアレー 理事長 、ホームアレークリニック城南 院長

梅里 尚行 先生

目次
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この記事の最終更新は2017年05月30日です。

人口の高齢化に伴い、認知症への関心や対策意識が高まっています。ご家族に患者さんがいる方や、「もしかして自分は認知症なのかもしれない」と不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。認知症とは、どのような原因やリスク因子により発症するのでしょうか。また、加齢に伴う一般的な物忘れと、認知症の初期症状である記憶障害に「見分け方」はあるのでしょうか。認知症の訪問診療を行っているホームアレークリニック城南院長の梅里尚行先生にご解説いただきました。

認知症の原因物質(原因疾患)や発症するメカニズムは、認知症の種類により異なります。認知症の種類は多岐にわたりますが、本記事では日ごろ遭遇する機会の多い(1)アルツハイマー型認知症、(2)脳血管性認知症、(3)レビー小体型認知症についてご説明します。

認知症の約50%がアルツハイマー型認知症といわれています。

アルツハイマー型認知症の病理学的な原因は、老人斑(アミロイドβたんぱく)の蓄積と神経原線維変化です。これらが脳の神経細胞死を招き、結果として認知機能や身体機能が失われていきます。老人斑と神経原線維変化が原因となることがアルツハイマー型認知症の最大の特徴ですが、なぜこれらの異常が現れ、蓄積するのかについては、現在のところ解明されていません。

最初は直近の出来事を忘れることや新しいことを覚えられないことから始まり、時間や場所の感覚が不確かとなるなど、ゆっくり進行していきます。さらに進行すると「物とられ妄想」を認めることもあります。

頭部を押さえている高齢者

名前のとおり、脳血管障害をきっかけに発症する認知症です。文献により差がありますが、全認知症の約20~30%を占めるといわれています。

たとえば、比較的太い血管が障害される脳梗塞脳出血を起こした後に、脳血管性認知症を発症することがあります。

また、微細な血管の虚血が徐々に進行していくことによって、脳血管性認知症となることもあります。そのため、脳の画像検査によってはじめて脳血管障害が起こっていたことが分かり、脳血管性認知症と診断がつく患者さんもいらっしゃいます。

初期から歩行障害など身体機能の低下を認める方が多く、抑うつや自発性低下、夜間興奮を認めることもあります。

レビー小体型認知症は、全体の約20%を占める男性に多い認知症です。なぜ女性に比べ男性の発症率が高いのか、その理由は解明されていません。

病名にも含まれているように、レビー小体型認知症はレビー小体と呼ばれる異常なたんぱく質が、大脳皮質に広範に蓄積されることで起こります。レビー小体の出現という点ではパーキンソン病にも共通して見られる現象であり、しばしばレビー小体型認知症とパーキンソン病を合併することがあります。

この2疾患を合わせて「レビー小体病」といいます。

認知機能の変動や動揺を認め、比較的初期から幻覚を認めることが特徴です。パーキンソン症状や起立性低血圧など自律神経障害が現れる方も多いです。

このほか、よく知られる認知症として前頭側頭型認知症が挙げられますが、遭遇する頻度は格段に低く、上述した3種類が「代表的な認知症」であるといえます。

過度の飲酒が認知機能障害を進行させることは、すでに複数の研究により証明されています。

海外の文献では、適量の飲酒が認知機能の維持に役立つという報告も見られますが、アルコールの許容量は人種や個々人の体質により異なるため、一概によいとはいえないと考えます。

ビール

認知症を発症する危険性が高くならないとされるアルコール摂取量の目安は、1日あたりビール350ml(1缶)まで、1週間あたり1~6缶程度といわれています。

しかしながら、適量の範囲も人種や個々人の体質により変わります。たとえば、お酒をまったく飲めない人に対し、適度なアルコールの摂取をすすめる医師はいないでしょう。

したがって、上記はあくまでお酒をよく飲む人に向けた「上限の目安」と捉えていただき、過度の飲酒を避けるよう心がけることが重要といえます。

最近の報告では、アルツハイマー型認知症のリスク因子として、アルコールのほかに、喫煙高血圧、脂質異常、糖尿病などが挙げられています。

このことから、脂質(油)や糖質の摂り過ぎも控えたほうがよいということができます。

ある報告では、野菜や魚中心の地中海式の食事が認知症予防に役立つともいわれています。

また、炭水化物も少ないほうがよいという報告もなされています。ただし、炭水化物を極端に制限してしまうと、今度はビタミン不足により認知症以外の健康問題が生じるリスクが高まります。

炭水化物の摂り過ぎや肉中心の食事は避けるなど、あくまで「バランスのよい食事」を意識することが大切です。

食卓を囲んでいるようす

アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβたんぱくの蓄積は、認知症を発症する20年ほど前から始まります。そのため、認知症になってから食生活を変えるのではなく、予防のために40歳代や50歳代といった比較的若いうちからバランスのよい食習慣を身につけることが重要です。

最近では糖尿病認知症の関連性も明らかになり、私たち専門医の間でも注目度が高まっています。糖尿病が認知症の原因疾患になるわけではありませんが、もともと糖尿病を持っている方の場合、糖尿病の悪化に伴い脳血管性認知症アルツハイマー型認知症も悪化するということが明らかになったのです。

もともと糖尿病と診断されている患者さんは、認知症の進行予防のために、血糖値のコントロールや食事療法・運動療法など、糖尿病の治療にも力を入れることが重要というわけです。

また、若い方には生活習慣病にならないよう、規則正しい生活を心がけていただきたいとお伝えしたいです。

認知症の症状は、中核症状(認知機能障害)と周辺症状(BPSD:行動心理症状)の2種類に分けられます。

中核症状は、脳の細胞死により引き起こされる直接的な症状であり、ほとんど全ての認知症患者さんに現れます。

一方、周辺症状は周囲の方との人間関係や患者さんの性格などが絡み合い、間接的に現れる症状です。ですから、たとえ認知症になったとしても全ての患者さんに現れるわけではありません。

・記憶障害

新しいことを覚えられなくなる、物忘れをしやすくなるなど、認知症の代表的な症状です。

・失行

失行とは、「これまで着ていた服の着方が分からなくなる」など、日常動作が分からなくなってしまう症状です。

・失認

聴覚や視覚、触覚などには異常がないものの、これらの感覚を通して対象物を認識することができなくなります。

・失語

失語には、運動性失語と感覚性失語の2種類があります。

運動性失語とは、他者の言葉が頭では理解できているものの、自分の考えなどが言葉として出てこない状態です。

感覚性失語とは、他者の話の内容が理解できず、言葉は出てくるものの自分でも何を言っているのか分からないといった状態です。

・実行機能障害

実行機能障害とは、たとえば「バスに乗ってスーパーに行く」といった計画を立てられなくなる障害のことです。

  • 幻覚
  • 妄想
  • 興奮
  • 徘徊
  • 抑うつ
  • 暴力や暴言

周辺症状の中には、認知症の種類も関係している場合があります。たとえば、易怒性(いどせい:ヒステリー)や性格変化は、若年発症しやすい前頭側頭型認知症の患者さんに多く認められる症状です。

何かを忘れている高齢者

認知症の初期段階には、短期記憶の障害が認められることが多々あります。例としては、物をどこに置いたのかすぐに忘れてしまう、新たな事柄が覚えられなくなるといった症状が挙げられます。

特にアルツハイマー型認知症の場合は、「自分が朝ごはんを食べたのか分からない」など、体験した出来事に関するエピソード記憶が低下するといわれています。

朝ごはん

認知症の物忘れ(病的健忘)と、加齢や疲労などによる一般的な物忘れ(生理的健忘)には、少し違いがあります。健康な方でも、「3日前に食べた朝ごはんの内容を思い出せない」といったように、ご自分の体験を忘れてしまうことはよくあります。

しかし、病的健忘の場合は、「自分が朝ごはんを食べたかどうか」さえも分からなくなることがあります。

また、健康な方の場合、物忘れをしやすくなっていても、「今日は何月何日か」「今、自分はどこにいるか」といった見当識(けんとうしき)は保たれます。認知症の場合は、こういった基本的な状況の把握も難しくなることがあります(見当識障害)。

認知症は60歳代あたりで発症する方が増え始め、65歳を超えると年齢と患者数が比例するように増えていきます。当院は在宅診療のほかに予約制の外来診療も行っていますので、不安な症状があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

(ホームアレークリニック城南のホームページはこちら:http://www.home-ally.jp/jyonan/

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