【インタビュー】

GIST(消化管間質腫瘍)とは? GISTの原因や症状、診断方法

公開日 2017 年 07 月 12 日 | 更新日 2017 年 07 月 12 日

GIST(消化管間質腫瘍)とは? GISTの原因や症状、診断方法
島田 英昭 先生

東邦大学医療センター大森病院 消化器センター外科教授(食道・胃外科担当)

島田 英昭 先生

GIST(消化管間質腫瘍:Gastrointestinal Stromal Tumor)とは、胃や大腸の粘膜の下に発生する粘膜下腫瘍のなかで最も発生頻度が高い疾患です。蛋白(たんぱく)の異常な増殖により発生するGISTは、症状が現れづらい点が大きな特徴です。

GISTは胃がんや大腸がんなど、よく知られているがんと、どのような点が異なるのでしょうか。また、早期発見を可能とする診断方法はあるのでしょうか。

今回は、東邦大学医療センター大森病院の消化器センター外科 教授でいらっしゃる島田 英昭先生にGISTの原因や症状、診断までお話しいただきました。

GISTとは? カハール介在細胞の増殖により発生

GIST(消化管間質腫瘍:Gastrointestinal Stromal Tumor)とは、粘膜の下の深い場所にできる粘膜下腫瘍の一種で、食道・胃・小腸・大腸などの消化管の壁にできる腫瘍を指します。

消化管間質腫瘍 イラスト

GISTは、この粘膜下腫瘍のなかで最も多くみられる疾患であり、カハール介在細胞と呼ばれる筋肉層にある特殊な細胞が異常に増殖し、腫瘍となることで発生します。

このカハール介在細胞は胃の上部に特に多く存在することがわかっており、GISTの60〜70%は胃で発生するといわれています。そのなかでも、胃の上部に位置する穹窿(きゅうりゅう)部から体上部に発生することが多いでしょう。

胃 イラスト

胃に次いで、GISTの20〜30%が小腸、5%が大腸で発生するといわれていますが、食道における発生はほぼ認められていません。

GISTの発育形式

GISTは発育形式により、消化管壁内発育型、管内発育型、管外発育型に分けられます。なかでも、管内発育型と管外発育型は特に症状が現れづらいといわれていますが、この発育形式によりGISTの悪性度が変わることはなく、基本的にどの発育型であっても基本的な治療方針が変わることはありません。

GISTの患者数

GISTの発生頻度は明らかになっておらず推計に過ぎませんが、日本における再発あるいは切除不能のGISTの症例は、年間1,000〜1,500ほどであるといわれています。

GISTと胃がんや大腸がんとの違いは発生部位

胃がんや大腸がんなど一般的ながんとGISTの大きな違いは、発生場所にあります。胃がんや大腸がんが消化管の粘膜から発生するのに対し、GISTは粘膜の下にある筋肉層に発生するという違いがあります。このため、治療方法はもちろんですが、再発や転移の特徴も異なっています。

GISTの原因:蛋白の異常増殖による

GISTの原因は、腫瘍細胞の細胞膜にあるKITあるいはPDGFRaという蛋白(たんぱく)の異常であることが明らかになっています。

これらの蛋白は、もともと特定の物質の刺激のみに反応し増殖しますが、異常が起こると常に増殖を繰り返してしまいます。この増殖を放置することで腫瘍がどんどん大きくなりGISTが発生することがわかっています。

この蛋白の異常は遺伝子変異が原因ということまではわかっているのですが、なぜ遺伝子変異が起こるかまでは明らかになっていません。

GISTの症状

無症状が多いが、吐血・下血・飲みこみにくいなどの症状も

GISTは病変が大きくなっても症状が現れることが少ない疾患です。なかには無症状のまま日数が経過する方も少なくありません。

しかし、病変が大きくなると潰瘍(かいよう)ができるケースがあり、出血などの症状が現れます。

ぐったりとした男性

GISTの最も一般的な症状は、急性下血や吐血、あるいは慢性の消化管出血です。出血による貧血も典型的な症状でしょう。発生場所により個人差はありますが、疲労や嚥下(えんげ:食物を胃に飲み下すこと)困難、満腹感を訴える方もいます。

基本的に胃がんや大腸がんと比較して症状が現れにくく、症状がある場合でも軽度であることが多いため、疾患が進行してから発見される方も多い点が特徴です。

GISTの診断

GISTは、消化管粘膜下腫瘍として内視鏡や消化管造影検査により発見されることが多いでしょう。その後、細胞組織を検査する病理検査を行い、GISTの診断がつきます。

検査室

お話ししたように、GISTの腫瘍細胞は多くの場合、特徴的な蛋白(KITあるいはPDGFRa)を発現しています。

そのため、これらの蛋白の発現を「免疫染色」という方法により確認します。この検査の結果、蛋白が陽性の場合にはGISTと診断されます。また、遺伝子変異を確認することで、GISTの診断がつくこともあります。

病理検査では腫瘍細胞を確認する必要があるのですが、粘膜の下に隠れているので、うまく細胞をとることができないケースもあります。そのため、内側からEUS(超音波内視鏡検査)やCT検査を実施し内部を確認することがあります。

GISTの診断に有効なPET検査

また、GISTの診断にPET検査(positron emission tomography:陽電子放出断層撮影)が有効であることがわかっています。PET検査とは、放射能を含む薬剤を用いる検査の一種です。放射性薬剤を体内に投与し、その分析を特殊なカメラでとらえて画像化する検査を指します。

GISTでは、このPET検査により悪性腫瘍を比較的容易に確認することができ、診断において有効であるといわれています。

診断がつかない場合であっても経過観察が重要

お話ししたような検査の結果、GISTの診断がつかないケースであっても、腫瘍がある場合には継続的な確認が重要になります。

たとえば検査の結果をみて病変があると判断することは比較的たやすいのですが、何もないからといって「悪性腫瘍はない」と診断することは極めて難しいのです。それは、病変が進行している初期や途中段階であるために診断がつかないケースも少なくないからです。

そのため、GISTを表すような蛋白が陽性にならない場合にも、たとえば3か月後や6か月後に再度検査を受けていただくことが重要となるでしょう。

GISTの分類:再発率を表す高リスク・低リスク

GISTは、再発の危険性の高さによって、高リスクあるいは低リスクという分類をしています。GISTの標準的な診断・治療を定めているガイドラインでは、以下のようなリスク分類を採用しており、再発率の高いGISTを高リスク、比較的低いGISTを低リスクと呼んでいます。

GIST 表

この分類は、腫瘍の大きさと腫瘍細胞分裂がどれくらい活発に行なわれているかが基準となっています。たとえば、腫瘍の大きさでは、腫瘍径2センチ・5センチ・10センチがだいたいの目安になっており、手術による切除は、中リスクに分類される腫瘍径5センチ以上の場合に適応されます。一方、低リスクに分類される腫瘍径2センチ以下の場合には、一般的には経過観察になるでしょう。

GISTの転移や再発の可能性

GISTでは、約10~50%の頻度で再発が起こることが明らかになっており、局所の再発では手術による切除が第一選択となります。

転移に関してお話しすると、胃がんなど通常のがんとは異なり、リンパ節に転移することはほとんどありません。そのため、腫瘍周辺の正常な組織ごと切除してしまえば、基本的には治る疾患であるといわれています。

再発する場合には、血流に乗って胃や肝臓にがん細胞が運ばれてしまうことにより発生します。そのため、GISTでは肝臓に転移する肝転移再発などが、全症例の10〜20%ほどは生じるといわれています。

また、腫瘍が大きくなりすぎた結果、腹腔内にがん細胞が溢れてしまう腹膜播種(はしゅ)になってしまうケースもあります。腹膜播種の状態で見つかると生存が難しいケースがあり、進行も速い点が特徴であるでしょう。

 

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