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第9回 日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会に向けて

第9回 日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会に向けて
中山 健夫 先生

京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 健康情報学分野 教授

中山 健夫 先生

この記事の最終更新は2017年08月22日です。

2017年9月16日(土)、17日(日)に日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会が開催されます。ヘルスコミュニケーション学会は2009年に発足し、今年で第9回目となります。本記事ではヘルスコミュニケーション学会の大会長である京都大学大学院医学研究科・健康情報学分野教授の中山健夫先生に、ヘルスコミュニケーション学会の概要と学会に向けた抱負についてお話を伺いました。

ヘルスコミュニケーションとは「個人及びコミュニティが健康増進に役立つ意思決定を下すために必要な情報を提供する、あるいはそのような意思決定に影響を及ぼす、コミュニケーション戦略の研究と活用」のことです。次項でその具体的な内容についてお話しします。

macro:社会レベル

meso:地域・組織レベル

micro:個人レベル

(Eysenbach 2000, 中山一部修正 2011)

 

ヘルスコミュニケーションというと、通常は医療者と患者さんとの対人コミュニケーションをイメージされる方が多いかもしれません。しかし、ヘルスコミュニケーションにはそれだけではなく、3つの観点があります。

それはマクロ(Macro)・ミクロ(Micro)・メゾ(Meso)という考え方です。

まず、マクロは社会レベルのコミュニケーションを指していて、そこにはマスメディアやインターネットの情報発信などが含まれます。また、専門家が政府や自治体に政策提案を行うことなどもマクロレベルのコミュニケーションといえるでしょう。

ミクロは対人同士のコミュニケーションで、お互いの顔が見えるコミュニケーションのことを指します。

メゾは地域、組織レベルのコミュニケーションです。コミュニケーションの例としては、医療機関と地域住民とのかかわりが挙げられ、マクロとミクロの中間的な立場のコミュニケーションといえます。

ヘルスコミュニケーションを考えるうえで大切なことはメゾレベル、つまり医療機関と地域住民とのコミュニケーションのかかわりです。

通常は、病気になってからはじめて病院に行き、医療従事者とコミュニケーションをとります。しかし、病気になって混乱している状態の患者さんに、複雑な医療制度や治療内容の説明をしても、的確に伝えることは困難ですし、円滑なコミュニケーションを図ることも難しいでしょう。ですから、地域住民と医療機関のメゾレベルのコミュニケーションを円滑に行うためには、病気になった後ではなく、病気になる前が大切であると考えます。

そこで、京都大学は地域のNPOと協働し、滋賀県長浜市で定期的に健康フェスティバルを開催していて、地域の方々が病気や医療機関のことを知るイベントが多数行われています。

このように、医療機関と地域住民が日頃から、コミュニケーションを図ることは、いざというときのためにとても大切であると考えます。

また、このなかでのヘルスコミュニケーションは、地域レベル(メゾ)のコミュニケーションはもちろん、個人レベル(ミクロ)のコミュニケーションも行われています。

冒頭の図のように、マクロ・ミクロ・メゾそれぞれのコミュニケーションは全てが少しずつ重なり合っているものとして考えることもできます。

では、本学会で開催予定のシンポジウムとシンポジストについて、ご紹介いたします。

シンポジウムゼロでは、株式会社電通の戒田信賢氏の「医療とはコミュニケーションの集積である」という仮説に基づき、電通が考えるソーシャルビジネスと、医療者が考えるヘルス・パブリックコミュニケーションについてディスカッションを行います。そして、社会に伝わるようなメッセージをどう発信していくかについてシンポジウムしたいと考えています。

 

座長:中山健夫(京都大学)

・中山健夫(京都大学)

挨拶「本大会の全体像と目的およびチャレンジ」

・戒田信賢(電通)

「医療とはコミュニケーションの集積である」

シンポジウム1では、同じ方向の問題を共有している異なる立場の方々(患者さんと医療従事者、他職種間同士など)が、どのようにして力を合わせて問題を解決していくのかについていくつかの事例をもとにシンポジウムを行います。

 

座長:安村誠司(福島県立医科大学)・中山健夫(京都大学)

・安村誠司(福島県立医科大学)

「東日本大震災後の福島におけるヘルスコミュニケーション−メディア・自治体等の情報の位置づけについて−」

・酒井郁子(千葉大学)、指定発言者・原尻賢司(総務省)

「災害時の専門職連携に必要な実践能力の獲得を目指した学習」

・高橋裕子(京都大学)

禁煙指導時をめぐるコミュニケーションと価値観」

・藤本修平(京都大学)

「患者・家族と医療者が共有する意思決定:臨床におけるshared decision making とその知見」

シンポジウム2では、メディアと国民とのマクロレベルでのヘルスコミュニケーションについて、各分野で活躍している方々のお話を伺います。

 

座長:萩原明人(九州大学)・高橋由光(京都大学)

・北澤京子(京都薬科大学)

「メディアにおける健康・医療情報の質について」

・藤田みさお(京都大学)

再生医療に関するウェブサイトの情報の質の評価」

・井上祥(メディカルノート)

「信頼できる医療情報をわかりやすく届けるために−メディカルノートの取り組み」

・荒牧英治(奈良先端科学技術大学院大学)

「ソーシャルメディア・言語処理技術とヘルスコミュニケーション」

中山健夫先生

コミュニケーションは相手に対して一方的に、自分の意見をわかりやすく伝えるということではありません。お互いが、自分たちの持つ知識や意見を少しずつ出し合い、お互いが変わっていきながら、新しい視点や方向性を見出していくプロセスが重要であると考えています。

その思いが、「共に変わり、共に創る」という学会タイトルに込められています。

今回の学会には医療関係者だけでなく、コミュニケーション学・心理学・社会学の専門家の方々も参加されます。まさにさまざまな立場の人たちが、ヘルスコミュニケーションに関するあらゆる知見を持ち寄り、新たなヘルスコミュニケーションを創り出せるような学会になるのではと考えています。

 

第9回日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会の詳細は以下URLよりご覧ください。

http://healthcommunication.jp/

 
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    中山 健夫 先生

    東京医科歯科大学医学部卒業後、東京厚生年金病院(現在東京新宿メディカルセンター)や国立がんセンター研究所がん情報研究部 室長などを経て現在は京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻 教授を務める。健康情報学を専門とし、公益財団法人日本医療機能評価機構Minds(マインズ)やEBM・診療ガイドラインに関する厚生労働科学研究にも携わっており、日本の医療情報の分野において大きく貢献している。

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