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第68回 日本救急医学会関東地方会学術集会に向けて

公開日 2018 年 01 月 18 日 | 更新日 2018 年 01 月 18 日

第68回 日本救急医学会関東地方会学術集会に向けて
森村 尚登 先生

東京大学大学院医学系研究科 救急科学 教授

森村 尚登 先生

2018年1月27日(土)に第68回日本救急医学会関東地方会学術集会、2018年1月28日(日)に第55回救急隊員学術研究会が、東京大学本郷キャンパス大講堂(安田講堂)ほかにて開催されます。今回は「点から線へ、線から面へ。面で支える救急医療」をテーマに、教育講演やシンポジウム、ワークショップなどが行われる予定です。両会会長の森村尚登(もりむら なおと)先生に、本学術集会に向けた抱負を伺います。

テーマ「点から線へ、線から面へ。面で支える救急医療」

救急医療には病院のみならず、市民や病院間のネットワークが必要である

第68回 日本救急医学会関東地方会、第55回 救急隊員学術研究会のテーマは「点から線へ、線から面へ。面で支える救急医療」です。救急医療はシステムで支えなければなりません。救急医療には人が必要であり、専門の訓練を受けた多職種の人々で行う院内の医療チームが基本の単位となります。

しかしながら、救急医療は病院に到着したときがスタート地点ではなく、患者さんに傷病が起こったときをスタート地点として、そこからいかに迅速に治療を開始するのかを担保しなければなりません。なぜなら、救急医療が対象とする傷病は緊急度が高い、つまり重症化するスピードが早いからです。たとえば、突然の心停止がおき、心室細動(心臓が止まっており、小刻みに震えている状態)の状態にある場合は、分単位で予後が変わります。119番をしたときから救急隊が現場に着くまでに、概ね7〜8分を要します。ある研究データでは、心室細動に対する絶対的な治療である除細動(電気ショック)が1分遅れるごとに生存退院率7〜10%ずつ低下するといわれています。したがってこのようなケースでは、生存退院を可能にするための除細動開始までの持ち時間は、せいぜい10分ほどということになります。

救急医療を「点=病院」から「線=病院間の連携+市民の力」へ

上記のような視点から、救急医療を提供するゼロポイントは病院よりも前にあるべきです。より理想的な救急医療の体制をつくるためには、「病院の内と外」という考え方ではなく、誰かが地域のどこで倒れたとしても最良の医療を提供できるシステムを作る必要があるのです。

例えば前述した突然の心停止で心室細動の状態にある場合には、PAD:Public Access Defibrillationというコンセプトがあてはまります。PADとは、公共の場にAED(自動体外式除細動器)を設置し、AEDの使用方法を含めた心肺蘇生トレーニングを一般市民に普及させることをさします。緊急度の高い傷病者の救急医療として、その場にいる人々(市民)の力を借りることで、スタート地点を病院よりも前に置くことが可能になります。しかしながらPADが円滑に活用されるためには、救急医療に携わる私たちが普及・教育を進めていく必要があります。

森村尚登(もりむら なおと)先生

病院に患者さんが搬送されたあとの治療では、病院ごとのネットワークが非常に重要です。救急医療は基本的に緊急度の高い患者さんが多く、また、特に専門性の高い病態である場合、それぞれのケースに対応できる専門病院へ患者さんを引き継ぐ必要があるからです。

都市部の場合、病院の数は多く物理的な距離が少なくとも、情報の共有という点では不足しており、密なネットワークとはいえません。一方、地方においては病院の数が少ないぶん病院間の連携は密にとれていても、物理的に遠いことがあります。そのような場合には、救急車による搬送の間に行われる救急医療の質を保つために、医師や看護師といった人材資源の確保や、その適応を促す仕組みが必要です。

救急医療を「線=病院+市民の力」から「面=病院間の連携+市民の力」へ

点としての病院、それをつなぐ市民や病院間の連携があり、救急医療は線になります。そして、いくつかの点をつなぐ線が縦横無尽に行き交い限りなく細かい網目になれば、それはやがて「面」になります。つまり、病院だけではなく市民のサポートが加わり、さらに病院間の連携がスムーズに行われる。そのネットワークが十分に活用されることで、救急医療によって1人でも多くの患者さんが助けられる世界。これが、私たちが目指す「面としての救急医療」の姿です。

新たな取り組み

医師・看護師以外のメディカルスタッフによる合同企画

日本救急医学会関東地方会はもともと、若手・中堅の救急科医、救急科医を目指す医師たちが積極的に学会発表を行えるような研鑽の場としてつくられました。一般演題の多くは、所属医師たちが実際に尽力したケースレポートの発表です。一方で、日本救急医学会関東地方会には看護部会、救急隊員部会が併設されており、本学術集会でも実際に看護師や救急隊員による発表が設定されています。

また、近年多職種連携が強調される割に、医師や看護師とともに、他の医療従事者が医学会で発表する機会は多くありません。そこで本会では、日本臨床救急医学会との合同企画として、医師・看護師以外のメディカルスタッフ(今回は薬剤師、放射線技師、検査技師)の発表の場をを設けました。

シンポジウム「IoTで築く救急医療連携 点から線、線から面へ」

シンポジウムでは「IoTで築く救急医療連携 点から線、線から面へ」と題して、日進月歩のIoT(Internet of Things:物をインターネットとつなぐこと)を救急医療のシステムにどのように活用するのかを議論します。本シンポジウムには、ユビキタス・コンピューティング(いつでもどこでも情報ネットワークにアクセスできる)環境を発明した坂村健(さかむら けん)先生にご講演いただきます。

パネルディスカッション「救急科領域におけるサブスペシャリティを考える」

近年、救急科は19の専門診療科の1つとして独立しました。それまで救急医療に携わる医師たちは、たとえば救急と脳外科、救急と麻酔科といったようにダブルボードで自身の診療科を表現していました。しかし救急科が1つの診療科として独立したことで、救急科のアイデンティティが確立されました。今では、救急科は急性病態、重症病態に対して、他職種と連携しながら対応していく診療科であり、救急科医には調整能力や突発不測の傷病に対する柔軟性が必要であることが認知されています。

本会のパネルディスカッションでは、このような流れのなかでさらに救急科のサブスペシャリティについて、すなわち救急科医であることに加えて、熱傷診療、MC(メディカルコントロール)、災害時医療、IVR(画像下治療)など、それぞれのさらなる専門性について議論します。

ワークショップ

ワークショップでは、都市部における救急医療で活躍するドクターカーやドクターヘリの役割について、実際にそれらを展開している、もしくは地域限定で展開している医師たちに話をしてもらいます。

参加を検討されている方々へメッセージ

本会は、関東地方における若手救急科医の学会発表の登竜門的な存在となり、今では毎年、救急隊員部会を合わせて1,500名以上(日本救急医学会関東地方会:およそ500〜700名、救急隊員部会:1,000名ほど)の参加者が集います。救急医療に携わる方なら、どなたでも歓迎します。

森村尚登(もりむら なおと)先生

なお、日本救急医学会関東地方会の全国版にあたる日本救急医学会を含む10団体(日本救急医学会、日本外傷学会、日本集中治療医学会、日本集団災害医学会、日本中毒学会、日本熱傷学会、日本臨床救急医学会、日本救急看護学会、東京都医師会、日本小児科学会 ※2017年現在)は、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて救急災害医療体制を整えるべく、学術連合体(コンソーシアム)を形成しました。私たちは、大規模国際イベントの開催中の救急医療体制に関して、関係諸団体や他学会とも連携を強化し、諸課題に取り組み、積極的に学術的な提言を行っていきます。

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催中の救急災害医療体制に係る学術連合体(コンソーシアム)についてhttp://2020ac.com/

第68回日本救急医学会関東地方会学術集会:開催プログラム

特別講演「Atlas of Emergency Medicine」(Tentative)

座長:森村尚登先生(東京大学大学院医学系研究科 生体管理医学講座救急科学分野)

演者:Kevin Knoop先生(The Uniformed Services University of the Health Sciences)

医師部会

教育講演1:共通講習「医療安全」

座長:中村京太先生(横浜市立大学附属市民総合医療センター)

演者:寺崎仁先生(東京女子医科大学 医療安全科)

教育講演2:救急科領域講習「JPTEC、JATEC、JETECの改訂点」

座長:三宅康史先生(帝京大学医学部救急医学講座 帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター)

演者:冨岡譲二先生(米盛病院 救急部)

教育講演3:三部会合同企画「緊急度の考え方 成人編」「緊急度の考え方 小児編」

座長:佐藤憲明先生(日本医科大学付属病院)

演者:櫻井淳先生(日本大学医学部 救急医学系 救急集中治療医学分野)

   六車崇先生(横浜市立大学附属市民総合医療センター)

ワークショップ「都市部におけるドクターカー運用の課題と展望」

座長:竹内一郎先生(横浜市立大学大学院医学研究科救急医学)

   清田和也先生(さいたま赤十字病院 高度救命救急センター)

パネルディスカッション「救急科領域におけるサブスペシャリティを考える」

座長:横田裕行先生(日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野 同附属病院高度救命救急センター)

   木村昭夫先生(国立国際医療研究センター病院)

シンポジウム「IoTで築く救急医療連携 点から線、線から面へ」

座長:坂本哲也先生(帝京大学医学部 救急医学講座)

   大江和彦先生(東京大学大学院医学系研究科 医療情報学分野)

看護部会

教育講演Ⅳ「意思決定支援」

座長:浅香えみ子先生(獨協医科大学越谷病院 看護副部長)

演者:中村美鈴先生(自治医科大学成人看護学教授、自治医科大学大学院リティカルケア看護学教授)

教育講演Ⅴ「初期治療と看護」

座長:小見山智恵子先生(東京大学医学部附属病院 看護部長)

演者:町田浩志先生(前橋赤十字病院 高度救命救急センター 集中治療科・救急科 副部長)

パネルディスカッション「特定研修制度にみる看護の未来」

座長:剱持功先生(東海大学看護師キャリア支援センター)

   木澤晃代先生(日本大学病院 看護部長)

第55回 救急隊員学術研究会:開催プログラム

教育講演Ⅰ「2015年パリ同時多発テロ事件における救急医療対応の実際」

講師:森村尚登先生(東京大学大学院医学系研究科救急科学分野)

司会:茂呂浩光先生(東京消防庁 救急指導課長)

教育講演Ⅱ「爆傷・銃創」現場における初期対応・処置

講師:竹島茂人先生(自衛隊中央病院総合診療科部長 兼 救急科部長)

司会:日高寿夫先生(稲城市消防本部 警防課救急係長)

シンポジウム「傷病者の救命効果向上に向けた取り組み~ガイドライン2015を踏まえて~」

座長:西川浩二先生(横浜市消防局 救急課長)

助言者:坂本哲也先生(帝京大学医学部救急医学講座主任教授)

演者:

1. 119番通報時にCPA を見逃さない聴取方法について

風間幸道先生(藤沢市消防局 警防課 通信指令担当)

2. 口頭指導事後検証がもたらす効果

竹内秀和先生(習志野市消防本部)

3. 走行中の救急車内における胸骨圧迫の現状

山口崇朝先生(館林地区消防組合)

4. CPR 中の胸骨圧迫中断時間についての検証

石井光輝先生(松戸市消防局)

5. 院外心停止例に対する薬剤投与実施までの時間を検討

柗本勉先生(栄町消防本部)

6. 更なる救命効果の向上を目標とした「東京消防庁救急活動基準 除細動・薬剤投与プロトコールの改正」について

後藤健太郎先生(東京消防庁救急部救急指導課)

ポスター

会期

2018年(平成30年)1月27日(土)第68回日本救急医学会関東地方会学術集会

2018年(平成30年)1月28日(日)第55回救急隊員学術研究会

会場

東京大学本郷キャンパス大講堂(安田講堂)他

〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1

http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam01_00_01_j.html

会長

森村尚登 東京大学大学院医学系研究科救急科学分野

テーマ

点から線へ、線から面へ。面で支える救急医療

参加費

医師部会                 10,000円/ 医師、医師以外の企業参加者

看護部会                 5,000円/ 看護師、看護学校教員

救急隊員部会5,000円/ 消防隊員、救急救命士養成施設教官、医師・看護師以外の医療職

その他    5,000円/ 薬剤師、臨床工学技士他

学生        無料/ 短大、大学、大学院(医師を除く)、看護学校、救命士学校

(受付で学生証をご提示いただきます)

事務局

東京大学医学部救急科学教室

事務局長:橘田要一

事務担当:上田吉宏

〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1

TEL: 03-3815-5411(Ext. 35195) | FAX: 03-3814-6446

Email: jaam68_kantou-office@umin.ac.jp

運営事務局

株式会社ドゥ・コンベンション

〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町2-23 アクセスお茶の水ビル5F

TEL: 03-5289-7717 | FAX: 03-5289-8117

Email: jaam68_kantou-office@umin.ac.jp

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