2017年11月29日(水)、横浜市立大学にて、先進的かつ独創的な医学教育を実践している海外の協定大学から講師の先生方を招き、「医学教育国際ワークショップ」が開催されました。
今回お招きしたのは、カリフォルニア大学サンディエゴ校(以下、UCSD)よりMaria C.Savoia先生とKenneth Vitale先生、シンガポール国立大学(以下、NUS)よりArpana Vidyarthi先生と八幡真人先生です。
本記事では医学教育国際ワークショップで行われた3名の先生による基調講演とパネルディスカッションの様子をレポートします。
今回の司会進行は、横浜市立大学医学部血液・リウマチ・感染症内科の中島秀明先生が務められました。
中島先生からのご紹介で横浜市立大学医学部医学部長 井上登美夫先生が登壇されると、開会の挨拶が行われました。
開会の挨拶が終わると、まずUSCDのMaria C.Savoia先生による、基調講演「優れた医師を育成するために−21世紀の挑戦」が行われました。
USCDの医学教育は、教育部門の医学部長をはじめ、5名の副医学部長、5名の医学部長補佐、114名もの職員によって構成される医学教育部門が統括しており、リソースや機能を集中させることで教育の質を担保しています。
また、近年実施された大規模な改革として、講義時間を短縮し、学生自らが能動的に学習できるようなグループワークや自習時間などを増やしました。その結果、懸念されていた学生の成績低下はみられず、むしろ学生の満足度は大いに向上したことをお話しされました。
続いてNUSのArpana Vidyarthi先生により、基調講演「医学生の臨床教育の進歩−米国とシンガポールの例」が行われました。
Arpana Vidyarthi先生は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、Duke-NUS医科大学、シンガポール国立大学医学部の3つの医学教育機関を比較し、教育の構造およびプロセスの違いについて紹介されました。特に臨床医学教育における改革では、学生と同様に患者さんのニーズを満たすものであること、より小さな規模であらゆる施設において再現できるなど柔軟なものであることが重要だとお話しされました。
また、Duke-NUS医科大学において実施されている、医学部生の海外ボランティア経験など多様な取り組みについてご紹介いただきました。
同じくNUSからお招きした八幡真人先生は、横浜市立大学の卒業生です。
八幡先生からは「世界競争力のある医師キャリア開発支援−シンガポールのシステム」と題して講演が行われました。
八幡先生は、NUSにおける医学教育プログラムの大きなゴールのひとつとして、効果的なカリキュラム発展のために教員の教育能力を高めることが挙げられるとお話しされました。具体的には、医学部の各部門において個々の教員に教育能力の評価を行うこと、良質な医学教育の提供およびコミュニケーション技術の向上のための訓練の機会があることが紹介されました。
また、もうひとつの特徴として、医学教育に研究を取り込むことが挙げられました。NUSでは医学生に研究室での業務とデータ分析を経験する機会を与えており、医師をサポートする立場で臨床研究の準備を行うことは、保健省や政府の方針とも合致しているとお話しされました。
基調講演が行われた後には、Kenneth Vitale先生(UCSD)のファシリテートによりパネルディスカッションが行われました。
上記3名の先生に、横浜市立大学から消化器・腫瘍外科学の秋山浩利先生、口腔外科の來生知(きおいみとむ)先生、センター病院安全管理指導者の中村京太先生が加わり、これからの医学教育について熱心なディスカッションが行われました。
パネルディスカッションでは、
といったトピックスについて議論がなされました。
日本と海外各国それぞれの医学教育の現状を踏まえて、予定時間を超過するほど活発な質疑応答が行われ、盛り上がりをみせました。
最後に横浜市立大学医学部整形外科 齋藤知行先生による閉会の挨拶が行われると、医学教育国際ワークショップは終了しました。
今回の医学教育国際ワークショップには、横浜市立大学の教職員をはじめ総勢96名が参加しました。
各国で医学教育に携わる教員による基調講演やパネルディスカッションを通じて、各機関の教育カリキュラムがどのような方針のもとに設計され、どのような成果や課題があったかを知ることができ、医学教育が目指すべき姿を再検討する機会となったのではないでしょうか。また、参加者同士の積極的な交流が行われたことも非常に有意義でした。
このような機会で得られた知見をもとに、医学教育のさらなる国際化、世界基準の医学教育の展開が期待されます。
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