インタビュー

りんご病―妊婦が感染した場合の胎児への影響

りんご病―妊婦が感染した場合の胎児への影響
清水 博之 先生

藤沢市民病院 臨床検査科

清水 博之 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年03月07日です。

妊婦さんがりんご病と診断された場合、こまめに産婦人科で赤ちゃんの状態を検査する必要があります。妊婦さんが感染したとして必ずしも赤ちゃんに影響があるわけではなく、中絶をする理由にはなりません。まずウイルスに感染しないために日頃から感染予防することが重要です。

今回は、妊婦さんのりんご病について、藤沢市民病院 臨床検査科の清水博之先生に詳しくお話を伺いました。

妊婦さんがりんご病に感染した場合、胎盤を通して胎児の赤血球にヒトパルボウイルスB19が感染し、貧血を起こすことがあります。心臓に負担がかかって心不全になり、体がむくみ、胎児水腫と呼ばれる症状になることもあります。

りんご病の原因であるヒトパルボウイルスB19は、単純に赤血球に感染するもので、臓器などの発育に影響を及ぼすものではありません。先天性風疹症候群など、TORCH症候群のような先天奇形症候群は報告されていません。

TORCH症候群…妊娠中の感染により、病原微生物が胎盤を通って胎児に重篤な障害を起こし、流産を引き起こすリスクのある感染症の総称

教科書的には胎児死亡は約6%で、その多くは妊娠20週より前の妊娠初期における感染で起こっています。

妊娠中にりんご病に感染すると、感染した妊婦さんのうち20%で胎盤を通して胎児に感染し、そのうちの20%が胎児貧血胎児水腫をきたします。つまり感染した妊婦さん全体のうち4%ほどです。

これらのデータからわかるように、流産や死産など致命的な状況になる頻度が高いわけではなく、りんご病への感染を理由に中絶する必要はありません。

治療法もあるため、胎児エコーを受けてフォローアップしていくことが大事です。

妊婦さんでりんご病の疑いがある場合は、血清抗体検査で診断します。

IgMという抗体が陽性、もしくはIgGという抗体が間隔を空けた2度の検査で上昇しているかどうかで確定診断をします。

りんご病の感染がわかってから少なくとも8週間は毎週エコー検査をして、胎児水腫の兆候を確認します。

もし胎児の貧血が疑われたら、経皮的臍帯静脈採血でヘマトクリット値を測定します。重症の貧血で、子宮内胎児死亡の恐れがあれば、子宮内赤血球製剤輸血を考慮します。

ヘマトクリット値…血液中に占める赤血球の割合

血液検査でりんご病の抗体があるか測定することは可能です。このときはIgG抗体を調べます。

しかし、保険適応があるのは妊婦の感染が疑われたときに行われるIgM抗体だけです。妊娠前にIgG抗体を調べる場合は、保険適応外になります。

また、妊娠可能年齢の女性の約20〜50%がりんご病の抗体をもっているといわれています。

りんご病の抗体検査…りんご病の抗体検査において「IgG抗体」あるいは「IgM抗体」で診断するが、妊婦さんの場合でも、保険適応で抗体検査ができるのは「IgM抗体」のみ

手洗い

2018年現在、りんご病の原因となるヒトパルボウイルスB19のワクチンはありません。

インフルエンザの人だけに注意をするのではなく、特に流行時期に、ちょっとした風邪の人にも接触するべきではありません。

りんご病に限らず、サイトメガロウイルス、風疹など、妊婦さんが気をつけなければならない病原体はたくさんあり、言い出すときりがありません。

そのため、日頃からこまめに手洗いや手のアルコール消毒を行い、マスク着用などで、感染予防策を行うことが非常に重要です。

妊娠中のお母さんだけが感染予防を頑張っても、お父さんや子どもがウイルスを持ち帰ってきては意味がありません。

また、仮にお兄ちゃんやお姉ちゃんが風邪をひいたときは、妊娠中のお母さんは極力子どもから離れ、お父さんや他の人がケアをするなどの配慮が大事です。

「インフルエンザじゃなくてよかったね」と子どもが軽い風邪で終わって安心していても、実は妊婦さんにとってリスクのある風疹やりんご病ということもありえるからです。

生まれてくる子どものためにも、妊婦さんへの家族全員のサポートは不可欠です。

家族全員で感染予防を行いましょう。

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