たいじすいしゅ

胎児水腫

最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

胎児水腫とは、お母さんのお腹のなかにいる赤ちゃんの全身がむくんでしまっている状態を指します。むくみはお腹のなかや、胸のなか、皮膚の下、胎盤などあらゆるところでみられ、赤ちゃんの状態がよくないことを意味します。

胎児水腫を発症した際、赤ちゃんの状態は非常に悪く、死産に陥ることもあります。お母さんのお腹にいるときからの治療介入に加えて、出産後にも慎重な対応が必要になる場合もあります。

原因

胎児水腫の原因は、大きく分けて免疫に関連するものと、免疫に関連しないものに分けることができます。

免疫が関連しているものとしては、お母さんと赤ちゃんのRh型の血液型が一致していないことから発症するものが代表的です。お母さんがRhマイナス、赤ちゃんがRhプラスの場合に胎児水腫が起きる可能性が出てきます。お母さんがRh型マイナスの場合、お母さんの体内にはRh型プラスの赤血球を攻撃する抗体が存在しています。

こうした抗体は、胎盤を介して赤ちゃんへと移動することになります。すると、お母さん由来の抗体は、赤ちゃんが有するRhプラス型の赤血球を攻撃してしまい、赤ちゃんの赤血球が破壊されてしまいます。すると赤ちゃんは重症の貧血に陥り心臓に大きな負担がかかり、結果として胎児水腫が発症することがあります。現在はRh型マイナスのお母さんが出産をする際には、事前に予防策を講じることが可能であるため、Rh型不適合を原因とする胎児水腫の発症頻度は少なくなっています。

その代わり、免疫に関連しないタイプの胎児水腫の頻度が増えてきています。この範疇に含まれる原因疾患としては、先天性心疾患(左心低形成症候群やエブスタイン奇形、心筋症など)、染色体異常(ダウン症や18トリソミーなど)、先天性感染症(パルボウイルスやサイトメガロウイルス、トキソプラズマなど)、リンパ形成異常、先天性代謝疾患(ゴーシェ病やニーマンピック病など)など、数多くの疾患が含まれます。それぞれの頻度は低いものの胎児水腫がみられた際には、幅広い原因疾患の鑑別を行う必要があります。しかし、実際には原因を同定できないこともあります。

症状

胎児水腫を起こすと、母体内の赤ちゃんは胸水や腹水、皮下のむくみ、胎盤のむくみ、羊水過多などを呈します。そのほか、肝臓や心臓、脾臓など体の臓器が大きく腫れることもあり、胎児超音波検査(胎児エコー)で確認できます。胎児水腫は、胎児の状態が重篤であることを意味するため、死産や早産流産につながることもあります。出生後にも上記のような状態は持続し、呼吸障害が生じたり、全身状態が悪くなる場合もまれではありません。

また、赤ちゃんのむくみを反映するように、母体にもむくみが生じることがあります。母体の突然の体重増加、手足のむくみ、呼吸困難などの症状が出現することがあります。

検査・診断

胎児水腫の診断は、胸水や腹水、皮下のむくみなどの状態を胎児エコーで確認することで行います。実際に胎児水腫であることが確定した場合には、原因を調べるための検査も検討されます。免疫学的な異常を確認するため、母体の血液を用いて血液型不適合が生じていないか検索が行われます。そのほか、胎児が抱える基礎疾患を確認するために、詳細な胎児エコー、羊水検査、胎児の採血なども検討されます。

原因疾患は多岐にわたるため、遺伝性疾患の家族歴、りんご病などの感染者への接触歴など詳細な問診を行うこともとても重要です。

治療

胎児水腫の治療は、原因によっては出産前から行われることもあります。たとえば重症貧血が原因である場合には胎児輸血、不整脈の場合は母体への抗不整脈薬の投与などが検討されます。一絨毛膜性の双胎では、胎盤を共有するため、ときに胎盤の血管状態が原因となって胎児水腫が生じることがあります。この場合には、内視鏡を用いた血管への治療介入が検討されます。

胎児の週数や状態によっては、満期になっていない状態でも出産をしたほうがいい場合もあります。週数が早い段階での出産では、赤ちゃんの呼吸状態や循環動態がうまく外界に適応できないことが多くなります。そのため、出産後からの酸素投与や輸液などの集学的な治療が必要になります。胎児水腫では、胸水や腹水が影響して呼吸動態にも悪影響が及ぶこともあるため、出生前に穿刺(せんし)排液を行うことが検討されることもあります。

胎児水腫は原因が多岐にわたるため、原因に特異的な治療介入を考慮することも重要です。心疾患であれば、手術を含めて長期的な見通しを立てたうえで、新生児期からの治療介入を行うことが求められます。

胎児水腫は胎児の状態が非常に悪いことを示す状態であるため、正確な原因検索と治療介入が必須であるといえます。

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