院長インタビュー

「温かい心と気配りの医療を」-JCHO横浜中央病院のめざす姿

「温かい心と気配りの医療を」-JCHO横浜中央病院のめざす姿
藤田 宜是 先生

有隣病院 院長

藤田 宜是 先生

この記事の最終更新は2017年11月30日です。

独立行政法人 地域医療機能推進機構(通称:JCHO)横浜中央病院は、横浜市中区に位置し、1948年(昭和23年)に「社会保険横浜中央病院」として創設された、歴史と伝統のある病院です。

2014年(平成26年)には、現組織として改組し、地域の急性期医療の中核を担いながら、介護や福祉といった地域包括ケアシステムを実践した医療を提供しています。

同院の取り組みと今後の展望について、病院長の藤田宜是先生にお話を伺いました。

当院は創設当初より急性期医療を担う病院として地域医療に貢献してまいりました。現在も横浜市の2次救急病院として市民の期待に応えるべく、日夜努力を続けています。

2014年(平成26年)の独立行政法人化の後は「地域医療機能推進」という方針のもとに住民・行政・関係医療福祉機関と連携し地域医療の改革を進め、市民が安心して暮らせる地域づくりにも注力してまいりました。政府の掲げる地域医療改革は全国でゆっくりと確実に進んでいますが、当院では法人本部の指導に沿って前進したところ各医療機関間の連携が潤滑化し、地域における医療の分担や質向上につながっています。最近では、地域医療のモデルケースを見学しようと多くの施設が当院に視察にきてくれるまでになりました。

当院が地域医療機能推進のために取り組んできた具体的な項目は次のとおりです。

  • 急性期病院として高度な医療を提供
  • 外国人患者さんの受け入れ体制の構築
  • 退院後の生活を把握した治療の提供
  • 在宅療養後方支援体制の確立
  • 地域における院内外の他職種間の連携
  • レベルの高い人材育成をめざした教育環境の充実

現在では、これらはすべて当院の特徴そのものになっていると考えています。

当院の医師は、大学病院での勤務経験者がほとんどです。2017年10月現在、日本大学から9割、残りの1割は横浜市立大学から派遣されています。これは、最近まで重症例や希少疾患を診てきた経験豊富な医師が当院で診療を行っているということであり、一般の施設では対応困難な場合でも高いレベルの医療を提供できていると考えています。

当院では、在宅療養中の救急患者さんの受け入れも断ることなく、救急搬送も積極的に受け入れています。地域の家庭医、いわゆる「かかりつけ医」の先生から連絡があった場合、患者さんにすぐお越しいただき、入院していただきます。この様な連携は、普段から家庭医との信頼関係が構築されているからこそ実現できるのだと思っています。

当院の近くには横浜中華街があります。地域のニーズを考えると、外国籍の方にもしっかり医療を提供していくことも当院の責務です。そこで、当院では中国語(北京語)、韓国語、英語の3か国語に対応しています。4名の医療通訳が在籍し、中国語を話せる看護師もいます。医療通訳は、独自の研修を受けており、守秘義務なども理解したうえで診察にも同席します。病歴や経過を詳細に把握できなければ治療方針などですれ違いが起きてしまいます。医療通訳の存在が、言葉によるすれ違いが起きない環境をつくってくれると思います。実際、日本語がほとんど話せない中国人患者さんも多く、中国人医師の診療所から紹介されることもあります。言葉の壁がなく、安心して受診いただけるよう、これからも改善を続けてまいります。請多関照。

当院では治療を行うだけではなく、退院後の患者さんの目標も大切にしています。働いている方は社会復帰を目標とされますし、一人で生活しなければならない方、家族や介護の援助を受け生活する方などにより、入院治療の目標はさまざまです。

当院では、各々の患者さんが退院後にどうしたいかを入院中から医療スタッフやソーシャルワーカーが詳細に聞いています。退院後も看護や介護が必要になると考えられる場合は、ご家族との関係性はどうなのか、近所に頼れる存在はいるのか、自宅の状況はどうなのかなど下見に行くようにしています。このような地道な取り組みによって、退院調整がスムーズにいくと考えています。そして、利用できる社会資源なども検討し、退院へつなげています。

退院調整が万全であれば、患者さんは家に帰りたいという意欲が湧きますし、治療にも意欲的に取り組めます。しかし、退院調整を万全にしていても、退院が近づくと患者さんは不安になります。当院のスタッフも退院後は何があるか心配です。その不安を解消できるよう、退院前にかかりつけ医の先生や、介護が必要な方にはケアマネージャー、訪問看護師など、退院後に関わる方々を集めてカンファレンスを行うことで、その後の円滑な生活をサポートしています。

在宅療養後方支援体制は、在宅医療機関の求めに応じ、入院や診療を希望する患者さんに対して24時間対応可能な体制を確保するシステムです。当院は家庭医の先生方との円滑な連携を図るため、登録医制度を確立しました。登録医制度とは、まず患者さんと家庭医の先生方に登録していただき、登録医証を渡すことから始まります。登録医証には当院の電話番号が記載されており、いつでも電話がかけられる体制になっています。また、登録医の先生方には3か月に1回、患者さんのカルテを送ってもらっています。患者さんには救急搬送されたときにすぐ、搬送すべき病院が当院だとわかるように、どこの病院に搬送するのか、また、担当のかかりつけ医や訪問看護ステーションなどを記載したマグネットを冷蔵庫に貼ってもらいます。患者さんの情報を共有できているため、ある日突然当院に救急搬送されることになっても、スムーズに治療を始められます。この制度がここまでうまく機能している在宅療養後方支援は国内でも珍しいのか、全国各地からモデルケースとして視察に来てくださっています。

病院には多くの職種が働いています。みな能力やできることは違いますが、各々の能力を発揮し協力してこそ、チーム医療が機能します。当院では、医師、看護師、理学療法士、ケースワーカー、栄養士などのスタッフで集まる他職種カンファレンスを毎日のように開催しています。カンファレンスの内容は、患者さんの病状や体力、生活環境などを踏まえた退院目標についての意識の共有です。入院治療のゴールが明らかになることにより、軽快退院に向けた積極的医療が行われていきます。このカンファレンスは活気がありますし、他職種が一堂に集まる機会をつくることで、職種間の連携も強化されています。

さらに退院が近づくと、退院後に向けた話し合いが介護担当者やご家族も含めて行われます。退院後の医療や生活環境は患者さんの予後を決める重要な因子だからです。

医療従事者は、学校を卒業しただけではまだ一人前とはいえません。就職してからレベルの高い環境で、きちんと卒後指導を受けながら経験を積むことでスキルアップできると考えています。当院は、指導医の資格を持った医師が多く在籍しており、急性期における高度でレベルの高い医療を優れた指導のもとに体得できます。

育成に力をいれているのは医師だけではありません。当院は横浜でもっとも歴史のある看護学校を併設しており、教育を行うことに長けたスタッフが大勢います。スタッフの教育への意識も高く、指導者教育も行われてよい人材が多く育っています。

私は今の状態が完璧だとは思っていません。むしろ、改善すべき点はたくさんあると思います。たとえば職員の仕事についての意識改革です。職員の一人ひとりに自分の仕事を単なる生活の糧として捉えるのでなく、職場を盛り上げ、地域に貢献しようという意識を高めてほしいと思っています。そのためには自分が何をすべきか相談できる環境をつくっていくつもりです。

地域のみなさまに「面倒見のよい、自分たちの病院だ」と思ってもらえるような病院づくりをめざして行きたいと思っています。

医師もほかの医療従事者も、学術的な医療の知識を増やすことだけでなく、趣味を充実させたり、芸術などにも触れ、人間性を養うことにも取り組んでほしいと考えています。豊かな、人間性にあふれた医療者になっていただきたいですね。働き方改革といわれていますが、自分自信のワークライフバランスをしっかり考えて充実した日々を送ってほしいものです。そしてそれが、最終的には患者さんの満足度向上につながることを、知ってもらいたいと思います。人間性が豊かであれば、思いやりの心や対応の幅も広がり、自然と患者さんとのコミュニケーションも円滑になるはずです。

当院は今後も地域のみなさまの期待に応え、地域医療を安心して任せていただける病院でありたいと思っています。

国の医療制度改革により、病院は機能ごとに分かれ、診療できる分野や期間が決まっているのが現状です。急性期病院である当院は文字どおり、急性期を診る病院であり、長くは入院できません。だからといって、治療だけをする病院ではなく、必ず責任を持って退院や転院までバトンをおつなぎしています。また、退院してもみなさまとの関係性がなくなるわけではありません。退院後もかかりつけ医の先生を通してつながり、必要なときにいつでも来ていただける病院であり続けます。

地域の声も大切にしたいと考えており、地域の町内会などにも伺って、みなさまの生の声を聞きいています。私は町内会のカラオケで一曲歌ってと頼まれることもありますよ。そうやって地域のみなさま、家庭医の先生方、介護職の方々とつながりながら、みなさまに信頼され、愛される病院であるよう努めてまいります。

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